共同魔法 Ⅲ
パン――
勢い良く、エレクとセージゲイズは片手ずつを打ち合わせた。
その瞬間、二人の魔力が混ざり合い、大きな渦と化した。
エレクの髪が紫電に染まり、瞳は仄かな光を帯びた。
セージゲイズの目には魔力が集い、彼女の眼力は跳ね上がった。
「――――?!」
ガルライディアは初見の現象に理解が追いついていない。
その時、彼女の耳が舌打ちの音を捉えた。
グラジオラスだ。
「ガルライディア! 『貫通』合わせて!!」
「――ッはい!」
ガルライディア・グラジオラスは瞬間的に操れる限りの魔力を魔法具に込める。
「『皚皚睡蓮』!」
「『貫通』!」
グラジオラスが『唐菖蒲』を障壁で覆い、巨大な一刀として、薙ぎ払う。
ガルライディアも魔弾を放つ。
容易に魔力の渦を破り得る威力。
だが、一歩遅かった。
「「『共同魔法』『雷火絢爛』!」」
雷撃がガルライディアらの周囲から一斉に放たれた。
__________
「…………ひどい目に合った」
「ちょっと私達含めて本気になりすぎた節はあるわね…………」
雷撃で少なくないダメージを負ったガルライディア・グラジオラスは魔法で治療しながら、ぼやく。
グラジオラスの発言に、他魔法少女達は揃ってバツの悪そうな顔をする。
誰が見ても訓練のレベルを超えていた。
勿論魔法の威力自体は抑えていた(致死は避けた)が、それでも消耗具合的にも規模的にも、やりすぎた。
「「………………」」
特にエレク、セージゲイズ両名の最後の一撃が。
二人共全く同じ動作速度で動いた。視線を彼方に。
グラジオラスの半眼が更に薄くなった。
「――あ、あのっ、最後の魔法はなんですかっ?」
雰囲気を変えようと、ガルライディアは話を振る。
彼女には見たことの無い魔法だった。
外側から見た感じでは、エレクトセージゲイズの魔力が混ざりあった状態での魔法であったように、彼女には感じられた。
以前、ガルライディア本人が体験したように、別の人物の魔力同士は程度の差はあれど弾き合う性質を持っている。
だと言うのに、今回の魔法は破綻していなかった。
本来複数人の魔力を混ぜた魔法など成立するわけが無いというのに。
「共同魔法、『共同魔法』よ。本来複数人の魔力を同時に使うと魔法は成立しない所を、魔法に於ける必要要素を分担することで半ば強引に発動できるようにしたものよ」
曰く、魔法の威力面と制御面の分担などだ。
担当部位毎に魔力が異なってもギリギリ成立させられる。
なお、相応な魔力制御が求められる。
「へぇ……、あのそれ、結構な切り札では……?」
「強力だけど、時間掛かるのよね。今回もガルライディアが知ってたら、多分間に合わなかったわね」
ちなみに、グラジオラスは『共同魔法』を習得していない。
正直な話、覚えるメリットが少ないのだから、当然ではあるが。
それから、流石に今日の訓練は中止になり(やりすぎたため)、各々帰路に着いた。
そんな中、鳴音はある事が引っかかっていた。
(……前よりも少ない魔力で、髪と目の色が変わるようになった…………? なんで? 最近変な夢も見るし………………)
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