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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
黒か花か

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共同魔法 Ⅱ

今年も宜しくお願いします。

 バチリ、と音を立てて、紫電が空に消える。

 それは、ガルライディア・グラジオラス両名を牽制するようの威力の低く出が早い雷撃。


 速度も中々ではあるが、ガルライディアはそれよりも速いものをずっと対処してきた、今更遅い一撃を見過ごす訳がない。

 すぐさま魔弾でエレクの逃げ道を塞ぎながら、近接戦に持ち込む。


「すみません! 通しちゃって!」

「問題ないわっ」


 一言で伝達を終えて、互いに敵に詰め寄る。


 迫る雷撃を紙一重で躱して、収束した魔力による魔力放出で一気に加速する。

 エレクが一瞬、ガルライディアとは別のところに視線を向けた時に、一気に踏み込んだ。

 そこに合わせて振るわれる長杖。

 突き気味の軌道を描くそれを、二丁を交差させて抑え込む。


「ハアッ……!」


 杖を逸しながら膝蹴りを腹部に叩き込む。

 ふっ飛ばされながらも、エレクは雷撃を周囲一帯に放つ。


 ガルライディアはバックジャンプで回避するが、それこそがエレクの狙い。


「……ぐぅっ……」


 ガルライディアの真後ろ、距離にして30cm程の空中から、雷魔法の遠隔発動。

 それによって、無防備の背中から攻撃を食らってしまう。


 魔力を感知しようにも、エレクの雷撃に含まれる魔力によって、こうも至近距離だと鈍る。

 魔法の遠隔魔法は魔力感知ですぐに見破ることは出来るが、それをさせないエレクの工夫が功を奏した。


「纏い疾走(はし)れ、迅雷よ」


 エレクはその隙きに魔法を自身の身体に使う。

 効果としては、加速と接触時の電撃だ。


 エレクがガルライディアの近接に辛うじて食いつくようになったために、ガルライディアの敗北は時間の問題になってしまった。

 彼女もそれが分かっているからこそ、なるべく時間を稼ぐべく速攻から持久戦へと切り替えた。



 __________



 振るわれる二振りの白刃、その腹を狙って本が思い切り叩きつけられ、互いの魔力と衝撃が散る。


「……グラジオラス、良い魔法じゃない」

「それはどうも。自信作です。そちらも近接戦の腕を上げましたね」


 お互いの力を存分にぶつけ合いながら、彼女らは冷静に、けれど凄絶に笑い合う。


 グラジオラスの魔法『白装束』。

 その効果は言ってしまえば、『断崖絶壁毀す(ディバイン・プ)白亜の城(ロテクション)』の下位互換。肉体強度を跳ね上げるのではなく、障壁を絶えず修復しながら纏い続ける魔法。


 防御性能は劣るが、その強みは『断崖絶壁毀す(ディバイン・プ)白亜の城(ロテクション)』を圧倒的に上回る燃費の良さ。数値的には10倍を優に超える。

 防御に劣るとは言え、それでもセージゲイズの火炎魔法程度なら問題にならないのだが。

 セージゲイズの攻撃魔法の威力不足を考慮に入れても、性能の良い魔法と言えるだろう。


 セージゲイズも大きな変化では無いが、少しずつ腕を上げていた。

 それは一見地味だが、ちゃくじつに己の弱点を潰している証拠でもある。


「ゼェアアァッッ!!」

「――くっ…………」


 一方の小太刀を本で迎撃して、魔力弾がグラジオラスにヒットする寸前で、残りの小太刀が峰打ちとは言え、思い切り振るわれた。

 迎撃も回避も出来ずに、直撃してしまう。

 体制を崩すセージゲイズ。


 すかさず連撃を開始しようと、グラジオラスが一歩踏み込む。

 その寸前で、セージゲイズは魔力弾を射出し、及び魔力放出で強引に回避する。


「――チッ……!」

「…………」


 思わずと言った様子で、舌打ちをするグラジオラス。

 客観的にもここで仕留めきれなかったのは痛い。

 対するセージゲイズは何も発しない。


 一度、視線をエレクとガルライディアの方へと向ける。

 それを終えると、彼女は魔力を一気に吹かしだした。


 その様子に、グラジオラスも二人の様子を一瞥する。

 そこでは、ガルライディアがエレクを押していた。


 一度劣勢になったガルライディアだが、段々とエレクに食らいつき始めていた。

 エレクの近接戦闘の引き出しの少なさから来るパターンじみた攻撃を、分析・予測によって対処する。


 そもそもエレクは遠距離攻撃主体で、近接戦闘は緊急用である。

 加えて、訓練で殺しかねない火力は出せないために、エレクの高火力が活かせていない。


 その結果により、ガルライディアが有利に鳴りつつあるだけで、実際の戦闘能力はまだエレクが上で、ガルライディアのそれが急上昇した訳ではない。


 兎も角、魔力を纏うセージゲイズ相手に、グラジオラスも魔力を思い切り放出しだす。

 相手がより積極的に近接戦闘をする気なら、グラジオラスとしても好都合なのだから。


「…………っ!」


 最速で踏み込んで、峰打ちとは言え本気で砕きに掛かる。

 それに対して、セージゲイズは魔法具での防御を選択。

 一撃に押される形で後退する。


 否、グラジオラスはセージゲイズの真意をそこで悟った。

 手応えが軽すぎるし、セージゲイズの後退距離も長い。


 彼女は自らグラジオラスから距離を取ったのだ。


 同時刻、エレクはガルライディアの『フライクーゲル』での殴打に対して回避を選択した。

 ついでに魔力放出と雷の放出を以て、移動と攻撃を両立させた。


 一瞬の内に、エレク・セージゲイズは並び立つ。


お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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