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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
黒か花か

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紫紺と非常識

 雷鳴轟く荒野にて、女性らしき二人が向かい合っていた。

 各々の引き出し得る限界の殺意を放ちながら。


「母さん、もう止めにしよう。あの人達は、私達と変わらないじゃないか」

「そうだな。()()と私達魔族に身体構造的差異は、少ない」


 もう一方の女性を母と呼ぶのは、紫紺の髪と眼の者。

 彼女の提案、元い強迫じみた発言に対して、落ち着いて返答するのは薄汚れた金髪の者。


「――だったら、どうして彼等を実験台にした……?!」

「単純だ。奴等は、私達と似たカタチをしただけの下等生物でしか無い。ならば、モルモットとして有効活用すべきだとは、思わんか?」


 まるで、聞き分けの無い子供に言い聞かせるように言う。

 その口調が、行動が、その他全てが、紫紺の者の怒りを加速させる。


「巫山戯るな! 彼らは私達と同じヒトだ。何が、下等生物だ! 何がモルモットだ! 彼らを下等生物と言う母さんの方がっ、よっぽど下等じゃあないか!!」


 その怒りに呼応してか、天の霹靂も激しさを増す。


「………………そうか。残念だよ」


 ぼそりと呟き、金髪の女は()()を解放した。



 __________




「――おっ邪魔しまーす」


 休日、眺野(ちょうの)家に美勇が訪れた。

 朝八時に。


「……連絡ぐらい寄越しなさいよ…………」


 出迎えるのは、明。

 時間を考えろと言わんばかりのジト目。


 この幼馴染みの予定時間などよりも矢鱈早い習性は、何年経っても直るものではなかったらしい。

 下手したら、悪化している。


「ちなみに格好から何となく分かるけど、明姉出かける予定だった?」


 美勇の言及にあった通り、家にいる時は常にジャージ生活という中々な格好の明は、朝から外出用の服を着ている。

 それは、彼女にこれから予定があるということで――


「連絡寄越せってそういうことかぁ……」

「時間的にも、せめて一度アポ取りなさいって言ってるのよ」


 呆れを含んだツッコミが空しく空気に溶ける。


 実際に、彼女達は幼い頃から、両親らが必要な時に、朝早くから預けて預けられての関係であったために、いざ会うとなったらかなり早かった。

 だが、今は決してそうではない。


 明が言いたかったのは、こういう事だが、美勇には伝わらなかったようだ。

 伝わっていて、惚けた可能性も決して確率的には少なくないが。


「……はぁ、お茶は出すけど、私はすぐに行くわよ?」

「元々、用事があるのは鳴音にだし、大丈夫だよ」


 仕方が無いとでも言うかの様な態度ではあるが、明は美勇をリビングに通して、手早く紅茶を淹れる。


 カップを美勇の手元に置いた時に、美勇がこれ見よがしに手を出した。

 その手は、ある形を示している。


「明姉の用事って、()()?」


 その手の形は、俗に彼氏を示すものだった。

 それを認識した途端、明の口から大きな溜息が出てきた。


「無いわよ。バイト先でちょっと調整しなきゃな事があるのよ」

「へぇぇ、バイトかぁ。――んじゃあ、ガンバ」

「はいはい…………」


 調子の良い奴。

 そんなことを言いたげな明は、家を後にする。



「……みゆ姉、早い…………」


 明と入れ替わるかの様に、鳴音がリビングに訪れた。

 ボサボサの髪のまま、眠そうに目元を擦りながら。


「やっほ、鳴音。早いって言うけど、約束通りではあるんだよ?」


 そうだけど、そうじゃ無いだろう。

 明にそっくりのジト目が、美勇を刺す。


 鳴音と美勇の約束では、午前中に眺野家に、となっているので、美勇の行動は完全には非難できない。

 幾ら馴染みの家であろうと、些か非常識だが。


 彼女達は、早々に()()()()()に引っ込んで、存分に休日を満喫した。

 二人は、昔から特撮ドラマのファンであり、今回の約束もそれ関連の話をする為だった。


 元々は、美勇の趣味で、鳴音に対する布教活動が成功した結果なのだが、今となっては鳴音の方が詳しくなっていた。



 ところで、鳴音の部屋は、()()()()眺野家にある。

 それは、昔からなので、疑問を挟むものはその場には居なかった。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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