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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
黒か花か

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制御訓練 Ⅱ

 明が作り出した魔力塊の隙間に魔力を通そうとした結の試みは、失敗に終わった。


 魔力塊に空いている穴自体が直径1mm程で、まずそこから魔力を通すこと自体が手間だ。

 そこは、現状の結のレベルでもなんとかなるが、その次が問題なのだ。


「明さん、魔力塊の中に迷路作るとか、魔力制御本当にどうなってるんですか……?」

「慣れと勘よ」


 明は魔力塊に開けた隙間を、一つの迷路状にしていた。

 要は、結の課題は、長時間の維持が困難な程の細さで魔力を展開しながら、明が用意した迷路を攻略することだったのだ。


 そして、返答が酷い。

 天才という者は、いつの時代も理解されないものなのだ。

 実際に、明は才能を圧倒的試行回数で強化した結果なので、何一つ間違っていないのが、なお酷い。


「これの攻略には、放出する魔力量を常に一定に保つ必要があるわ。私の魔力で弾かれるから、あんまり魔力を込めすぎると、破綻するわよ」


 他者の魔力に、己の魔力を混ぜようとするとある程度の抵抗が生じる。

 その抵抗力の強さは、両者の魔力特性や魔力を出した本人の次第。


 今回の場合、結も明も魔力特性的に抵抗が強い訳では無いのだが、明が魔力塊を形成する際に、他の魔力を微弱ながら弾くようにしたために、適量の魔力を流せば、強固な水路のように辿っていけるようになっている。

 逆に多く流せば、抵抗力の影響で魔力塊は崩壊する。


「むぅ…………」


 唸り声を上げながら、結はゆっくりと迷路を進めていく。

 最初は直線だ。

 ほんの少し進んだら、左右に分かれる。

 まずは右側に流して、行き止まり。


 進めれば進めるほどに、魔力を流しづらくなるために、行き止まりかどうかが分かりづらい。


 左に流そうとして、右から流すことは出来なかった。

 それどころか、魔力の流入まで停まってしまった。


 最初から、やり直し。


 真っ直ぐ進めて、次は左折。

 今度は、交差点ではなく、カーブ。


 魔力を沿わせて進めていく。


 四苦八苦しながら課題に取り組む結の姿を見て、明は人知れず、ほっと息を吐く。


(悩みは多少はマシになったようね。……ただ、話を聞きはしたけれど、如何ともしがたいわね)


 結が、ツヴァイの襲撃後に報告した内容――魔人ヒュアツィンテが今は亡き友人らしき者であること――それが悩ましい。結の悩み方とは全くの別ベクトルの悩みだ。


 その仮説と言うには稚拙であるが、完全に否定出来る訳でもないものが、事実だった場合、大変な事になる。


 人間が魔物と化した。

 今まであり得ないとされてきた学説がひっくり返ってしまう。


 魔力を保有する生物が、絶対に魔物化しないかと言われれば、それは否だ。

 魔力回路の性能を圧倒的に上回る程の保有量で無い限り、不可能に等しい。


 圧倒的とは具体的には、許容限界値の5倍以上。


 魔力回路が確認されている中で、地球上の生物で最高クラスの性能を誇り、魔法少女と言う一般人とは雲泥の差の魔力保有量の存在ですら、魔物化した前例が無い。

 それが、人間だ。


 それが意味する事はすなわち、何かしら外部からの影響で人を魔物化し得る存在が在ると言う事。

 それが、魔物か、土地か、はたまた人かは分からないが。


 人間でさえ魔物化させるのなら、それは、魔物の強化(魔力を大量に得られる)や、大量発生、もしかしたら自然災害すら起こり得る。


(…………ただ、まあ、土地と言う線は無いわね)


 明は、己が考えたものの一つを否定する。


 土地でないと言える理由は簡単だ。

 ツヴァイの落とした杖、それは人、ないし生物の手が加わっていると考えるのが、自然だからだ。


(魔法関連に、()()と言うのは可笑しい気もするけれど)


 魔法とは、超自然的な現象なのだから、自然も何も無いし、何が起こっても不思議では無い。


 とは言え、杖にはグリップ部分染みた物が存在した時点で、ある程度の知的生命体が絡んでいる事は、半ば確定的だが。


 杖や魔石の解析作業を急がねばならない。

 明は人知れず、決意した。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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