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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
黒か花か

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回路と不条理

「こんにちは」


 暫定:取り調べを結が受けてから数日、件の少女は放課後に魔法局の訓練室を訪れていた。

 訓練室にはまだ誰もいない。


 当然といえば当然だ。

 結の通う小学校が最も魔法局から離れているとは言え、中学以上の方が放課が遅くなるのは極一般的なことだ。

 特に、守美子、明の二名は通う学校は違えど、同様に高校生なのだから、鳴音よりも遅くなる。


 兎も角、結一人では模擬戦は出来ない。

 逆に言えば、外的要因が訓練に絡んでくることも無い。

 なので、一人で出来ることの内、集中力が必要なことをすることにした。


「――――」


 変身せずに、床に座り込んで、大きく息を吸い込む。

 そして、息を止める。


 体内の、心臓の魔力を一気に吹かす。

 紅の色彩を一切外界に漏らさないように留めながらも、体内で限界まで加速させる。

 魔力制御の基本にして、最難関とまで言われる行為だ。


 魔法少女の魔法の力量は、殆どの場合、この魔力制御を見れば分かるとさえ言われている。

 より速く、より漏洩が少ない程魔力制御に優れているとされ、それは魔法の効率化と発動速度に直結する。


 結は、その辺りは、まだまだひよっこ。

 魔法少女になって、まだ3ヶ月である事を加味すると、制御は出来ている方だが、命のやり取りにおいて、新米だのベテランだの関係ない。

 だからこそ、徹底的に鍛えなければならず、当然結も魔力制御の訓練に励んでいた。


 そこまでは良かった。

 結は、同じ街の魔法少女の中で、最も魔力制御に優れるセージゲイズ(あかり)にコツを聞いたりなど、積極的に習った。


 否、習おうとした。

 だが、あれ(・・)は駄目だった。


 当初、訓練の仕方を聞いた結に対する明の回答は、こうだった。


「ガー、と力掛けて、グルグル回す」


 これが、全魔法少女中でも上位5%に入るほどの魔力制御を誇る人間の発言である。


 結は、この時、世の中の、天才の不条理を味わった。気がした。


 とは言え、この程度の衝撃なら、人生においては些事だろう。

 世の中には不条理など飽和するほどに存在するのだから。


 回す。

 廻す。

 心臓から右上半身を経由して、脚の方へと魔力を移動させる。

 そこからも体の各部を通して、また心臓へと戻す。


(まだ、遅い)


 幾度となくこの動作を繰り返したからこそ、未だ頂きは遠いと実感する。


 明の魔力制御は、速く、強く、ブレない。

 魔力制御の限界に挑むかのような、そんな動き。


 ここで大事になるのは、魔力回路の性質(・・・・・・・)にある。


 魔力を伝導させる血管やリンパ管に近いもの。

 これにも個人差が存在する。(生物の身体なのだから、個体差があるのは当然だが)


 魔力回路の性質は、大まかに、4パターンに分けられる。


 まず一つ目、大魔力に耐えうる強靭な回路。大魔力の放出による回路への負荷に強い。その代わり、細やかな制御を不得手とする。結がこのパターンだ。


 二つ目、魔力を速く伝導できる加速力に勝る回路。魔力を制御し始めて、魔法発動までの速度に優れる回路だ。ただし、大魔力を扱うことを比較的苦手とする。(勿論やり方次第ではある)これには、鳴音が当てはまる。


 三つ目、魔力の安定伝導に優れる回路。これは、一定量の魔力を長時間制御し続けることに長けている。その代わり、大魔力の行使や急加速は苦手としている。件の明はこのパターンだ。


 四つ目は、一から三までの平均的な性能をしたバランス型の回路。なんでも出来る代わりに、何かが特別出来るわけでもない。とは言え、単独での戦闘において、打てる手は増えやすい。守美子はこの回路のパターンだ。


 前述した通り、明は回路的には、強くも、速くも無い。だが、本人のセンスと努力で回路的な不得手など一切無視したかのような魔力制御を可能としている。


 その為、結含めた街の魔法少女の魔力制御の目標でもある。

 説明能力だけは真似たくないが。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。


天才型の人、明さん。

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