少女の意志
連投
「ーーこれで説明を終わります」
守美子の声が会議室に静かに響く。
魔法局についての説明が一通り終わった。
「魔法局に所属するかどうかですが、この場で決めずにゆっくりと決めていただいて構いません」
昌継、香織両名の視線が愛娘である結に向けられる。
昌継は結に委ねるように。香織は不安を押し殺すように。
結も両親をはっきりと意思を込めて見返す。
「私は、魔法局に所属して魔法少女として戦いたいと思います」
その言葉は彼女が今までで発したどの言葉よりも力強く、確かな決意が感じられた。
そこで水を差すように香織が口を開く。
「これは結が決めるべきことだから、止めはしないわ。だけど、せめて理由は教えてちょうだい」
口では止めないといっているが、心情的にはそうでは無いのだろう。
彼女は唇を強く噛み締めている。
結は他二人に視線で問う。
守美子や昌継も理由は聞きたかったのか頷く。
「さっき魔物を倒す前にさ、私魔物に追いかけられてね」
両親をなるべく不安にさせないようにか、ゆっくり優しい声音で結は語り出す。
それでも二人は流石に動揺していたが。
「それでね、アッシュっていう熊のぬいぐるみに助けてもらって、魔法少女になって魔物を倒してって言われてさ。でも、怖くて最初は嫌がったの」
結の決して大きくない声が静かに響きわたる。
「そしたらさ、アッシュが私が戦えるようになれば、私も街の人達も皆助かるからって。そう言われてね、考えちゃったんだ……」
「友達も、お母さんも、お父さんも、大事な人がいなくなっちゃうことを」
結は一度言葉を切る。
「私、自分が死んじゃうことよりも皆がいなくなっちゃうことの方が怖かった。ずっと嫌だった!だから、」
結の顔にはいつの間にか覚悟の念が浮かんでいた。
「だから、私は私が大好きな人のために、戦いたいです」
結は決意を胸にそう締め括った。
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手続きを終えて、加集家に帰宅する。
既に深夜を回っている。
結は手早く明日の学校の用意を済ませてから、ベッドに倒れ込むようにして、寝転がる。
そして、深夜一時頃、結の長い長い一日は終わりを迎えた。
お読みいただきありがとうございます。
物語の中では漸く一日が終わりました。
先は長いですね。