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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
黒か花か

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少女の推測

「――ご、ごちそう、さまぁ…………」


 これから査問会まがいのことに、巻き込まれるのがほぼ確定している結であったが、既に満身創痍も良いところだ。

 普段の二食分を無理やり詰め込んだら、誰だってそうなる気がするが、今回の問題はそうじゃない。

 必死にカツ丼を嚥下しながら、箸を少しでも止めると、それだけで睨まれる環境下で、精神を擦り減らさない人間など中々いない。


「はい、お粗末様でした」

「……美味しかったけど、容赦が欲しかった…………」

「――ん?」


 焦り気味に、何でも無いと首を振る。

 その動きが激しかったのも相まって、胃の中身が逆流仕掛ける。


「――ううっ…………」

「やりすぎた?」


 入れすぎたようだ、と反省になっていない反省をしながら、謡はお茶の用意に取り掛かる。

 ここからは、話が長くなるのだろうから。


「まあ、流石に、な」

「結ちゃんが話せるようになるまで、ちょっと待とうか……」


 独り言のように呟いた謡の言葉に返答を返しながら、割と気の毒そうに結を見る陽子。

 和泉家に、なんとも微妙な空気が流れた。



 _______________




「――それで、結ちゃんはなんで私達を避けてたのかな?」

「……………………」


 言えない。

 例え何があろうとも。

 特に謡には。


「なぁ、私達がなんかしたのか?」

「………………してない」


 言えない。

 己の中の、希望と絶望がぐちゃぐちゃに入り混じったものなんて、誰にも。


 けれど、謡、陽子の二人のせいでは無い。

 だから、否定はするが、これを続けていては段々と近づいてくる事になる。


「じゃあ、何だよ?」


 声音から、苛立ちがダイレクトに繋がってくる。

 普段からの荒い口調も、より顕著になっている。


「陽子ちゃん、ストップストップ。……結ちゃん、私達は結ちゃんを責めたい訳じゃないよ。ただ、悩んでいるように見えたから、手助けをしたいんだ」


 私達には、言えないのかな……?


 謡の優しく言い聞かせるような声が、結の心に染み渡る。

 だからといって、安々と話せるものではない。


「ごめん…………。まだ、私にも分からないんだ。まだ、確証(・・)が無い。だから、言えない」


 結は、それきりで帰っていった。

 流石に、空気的に居づらかったのだろう。


 少女が帰った後も、陽子は和泉家に留まっていた。


「そういや、魔人関係が結の悩みだろうって言ってたけど、具体的にはどんなだと思ってたんだよ?」

「ええとね、陽子ちゃんは、魔人って何だと思う?」


 陽子の質問に、謡は質問を被せた。

 怪訝な顔をしつつも、律儀に答える陽子。


「人形の魔物。それが人間かどうかは未だ発表は無い……ってとこか?」

「うん、大体そんな感じ。それで、多くの人としては、魔人は魔物化した人だと思ってる」


 はっ、と陽子は何か(・・)に気づいたように細く息を漏らす。


「――じゃあ、あいつ人を殺したかもってことで悩んでいんのか?」

「それはある気がするけど、多分、それだけじゃない」


 謡曰く、結が人を殺したかもと思い悩むのなら、7月の終わり頃だろうと。

 今頃になって、急にそうなるとは考えづらい。


「そりゃあ、確かに」

「それにしても、ただの人って言うのは、ちょっと難しいかも知れないんだ」


 魔物の出現の仕方は、割合と単純だ。

 魔力が結晶化して出来る魔石を核とした魔力の塊、それが魔物だ。


 人を含む多くの生物は、体内に魔力回路と呼ばれる器官を得て、魔力に適応した過去がある。

 それがある限り、体中で魔力を循環でき、一箇所に大量の魔力が留まり続けることが無いために、魔力が魔石になることは無い。

 それは逆に、魔力回路を持たない生物は魔物化するということだが、今はそれは置いておく。


 兎も角、質等を問わなければ、全員が魔力回路を持つ人間が魔物化することはありえない。


 だからこそ――


「人は魔物化するとは思えないから、ね。少なくとも自然に(・・・・・・・・)、ってことは無いと思う」


 謡の表情は、はっきりとした口調には相反して、どこか不安げだった。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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