推測
「――アイスは失敗だったな」
「まだ暑いから、すぐに溶けちゃうね」
陽子としては、謡が買った『月刊魔法少女』を、アイスを食べながら読み込む予定だったが、思いの外アイスの溶ける速度が早い。そのため、先にアイスを食べきる必要性が出たのだった。
手もベタつくので、今度からは飲み物にしようと陽子は固く誓った。
「陽子ちゃん、ウェットティッシュいる?」
「サンキュ。もうちょい頭使えば良かった……」
「あはは……、アイス美味しかったよ。ごちそうさま」
陽子からしてみれば、二人の共通目標のためのものに謡だけが負担を負うのが、微妙に納得がいかなかっただけであって、お礼を言われるようなことでは無い。
「早速探してみていいか?」
「そうだね。まあ、載って無い確率のほうが高そうだけどね……」
「良いんだよ、そこは」
『月刊魔法少女』。
手元にあるそれは、先月――八月――の魔法少女関連の情報だけで埋め尽くされているはずだ。
だが、全国単位のそれに、対して話題にもならない街のことが載っているかは賭けもいいところだ。
それが分かってはいるものの、謡も陽子も気が急くように雑誌のページをめくっていく。
最初の方は、新たにSランク認定を受けた魔法少女へのインタビューが載っていたりと、謡としては、どれもこれも気になる記事だが、一旦自重する。
(こいつ、結のこと大好きだよな)
趣味を割と本気で抑えている謡の様子が手にとるように分かって、陽子は微笑ましいような何とも言えない表情になる。
いや、自分も嫌いなわけじゃない。そう誰にともなく言い訳じみた思考をする。
「陽子ちゃん、これ…………」
「――ん?」
陽子が全く別のことを思考している間に、謡は何かを見つけたようで、呼びかける声が聞こえた。
「……魔人…………?」
「うん。最近この辺りで目撃されてるらしいね」
そのページには、魔人、詳しくはツヴァイとヒュアツィンテの写真が載せられている。勿論、遠方からの撮影であるために、画質は荒く、顔などは正確には伺えない。
しっかりと顔が判別できた場合、大惨事だっただろう。
特に、この二人には爆弾も良いところだ。
「魔人って、7月の奴の仲間か?」
「そうらしいね、魔法局の発表だと。この街での最近の記事になるような大きな事件はこれくらいかな」
魔人に分類される者の確認例は現状三人。
ダイバー(アインス)、シャーロット(ツヴァイ)、そしてヒュアツィンテ。
その内、結の様子が可笑しくなったのは、ツヴァイとヒュアツィンテの出現直後。
それならば、魔人に関する何かが結の悩みであると当たりがつく。
「元々、結ちゃんの悩みの原因は魔人関連かなって、思ってたんだけど…………」
「その核心がわからない、と」
謡は、肯定も否定もしない。
ただ写真を食い入るように、睨むように見つめる。
訝しむ陽子。
「何か気づいたのか?」
「――ううん、分からないね。一回結ちゃんに直接聞こうか」
「おい、それは無理だろ……!」
謡は、陽子の抗議の一切を無視して、結に連絡をし始めた。
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