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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
黒か花か

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黄色の輝き

 秋特有の寒々しさを微かに帯び始めた、月夜。

 その暗闇を引き裂くように、輝きが奔る。


 細く束ねられたそれを一閃。目の前の黒き怪物――魔物を、魔力をも貫いて、空に光を残す。

 地を抉る魔物の攻撃、腕を振り切った少女はしゃがみ込むことでそれを回避する。


 瞬間、少女の片足に黄色の光が集う。

 それは彼女の魔力の輝き。そこに存在する量よりも大きく膨れ上がる。


『――――――――――』


 電子音が響いた。

 それを魔物が認識した時には、もう遅かった(・・・・)

 放たれる輝きを纏った脚撃。

 魔物の心臓部、そこに在る魔石を揺るがす一撃。

 魔石自体の強度は地球上のあらゆる物質を上回っているために、特に傷は無いが、そこから身体に繋がっている回路(・・)を潰された。

 最早魔物に息は無い。

 元々人間がするような呼吸は行ってはいないのだが。


「……ふぅ…………、一丁上がりってね」


 少女は己が破壊した亡骸の直ぐ側に佇んで、少しの間、夜空を眺める。

 直径20kmの円形の街に多くの人口が集中している関係上、夜でも明りが絶えることは無いに等しい。

 けれども、一仕事終えた後の星空は格別に綺麗に映る。

 それは時間を忘れる程だ。


 そう、彼女は重要な事を忘れていた。

 己は魔法少女であっても、非公式(・・・)であることを。


 先程まで魔物と対峙していたのだから、公式(・・)もすぐそこにいることを。


「――すみません、少しお話伺ってもよろしいでしょうか?」


 そう、少女に遅れて現場に着いた政府所属の魔法少女と鉢合わせることになると、彼女はすっかり失念していたのだった。



 ________________




 家が最も近かったという理由で、最初に着いたガルライディア。

 否、着く予定だった。

 マギホンに表示された魔物の座標に来てみても、そこにあるのは亡骸だった。

 代わり(と言っては何だが)に、魔法少女らしき人物が一人ぽつんと佇んでいた。


「すみません、少しお話伺ってもよろしいですか?」


 声を掛けながら、相手方を観察する。


 服装は、大きなベルトをしている以外は、至って普通の魔法少女らしい服。所謂ゴスロリチックなフリル過多の衣類に、前腕を覆うイブニンググローブに、対象的に膝のすぐ下まで覆う無骨なブーツ。

 ベルトにむき出しの剣が吊るされている。

 ベルトもベルトで、全面がやたらと大きく、一つボタンのようなものが上面に付いているように見える。

 少し気になる点があるとすれば――


(剣の鍔と右足のブーツに、何かしらのソケットみたいなのがある……。あれは……?)


 明らかに何かを入れる用のスペースがある。剣とブーツのどちらも同様の形状のそれは、一体なんだろうか。


「あはは、ごめんなさい。お仕事取っちゃって」

「いえいえ、迅速に対応してもらって、助かりました」


 一応彼女は、魔法少女が歩合制(仕事をこなした数で給料が変わる)であることは知っているようで、少しは(・・・・)申し訳無さそうにしている。とは言え、軽いが。


「――えっと、政府所属でないと思っても大丈夫ですか?」

「あ、はいっ。それは勿論。……私は、黄煌(おうこう)の魔法少女 ファルフジウムって名乗ってます。政府所属でない、所謂非公式の魔法少女です」


 黃煌の魔法少女。それはおそらく魔力光から来ていると思われる。

 まあ、そんなことよりも非常に聞きにくいことがこの後待っているため、ガルライディアはそれどころではないのだが。


「……その、非公式ということでしたが、『所属外魔法少女協力制度』の方はご存知ですか?」


 所属外魔法少女協力制度。

 それは、ある魔法局支部が始めたことで日本中に広まった制度で、

 簡単に言えば、魔法局に所属していない魔法少女でも、この制度に入っていれば、魔物の討伐報酬の一部を受け取れるというものだ。


 この制度を利用する利点は、いつくかある。

 一つは、魔法局に入る――すなわち魔物討伐が義務化することがない点。魔法局に所属した時点で魔物討伐は義務になる。勿論能力的に可不可はあるが、それでも責任が付き纏うようになる。それを避けられるのは、非常に便利だ。自分の都合を優先できる。


 2つ目は、全額ではないにしろ、金銭的報酬がある点。この制度を利用した場合、自身の戦闘行為での街へのダメージによって報酬が減額せれていくのだ。そもそもが公式魔法少女の7割スタートなのだが。ちょっと危険なアルバイトの完成だ。


 制度を導入した際の魔法局側の利点としては、単純に人手を得られることと、金銭的負担が多少減ることだけなので、どちらかと言えば、善意によるものである。

 そもそも所属しないと決めるのは、魔法少女側なのだから。(勿論家庭的事情の場合もあるが)


 兎も角、この制度を知らずに非公式の魔法少女をやっているかの確認は大事だ。


 ちなみに、初めての戦闘か否かは、今回は質問する意味がない。今回の魔物のランクはC。正直な話、新米魔法少女が立ち向かっても、ただのエサである。そうなっていない時点で、ファルフジウムは一定の実力は持っていると判断できる。

 魔法少女の中には、初変身時に、Cランクの魔物を討伐したものがいるにはいるが、彼女らは特殊であって、参考にならない。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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