突撃&再会 Ⅰ
夏休みが惜しまれつつも終わりを迎え、始まった二学期。
ある中学校の二年三組には、一人の少女がいる。
腰ほどまでのロングヘアーに、俯きがちで表情の読み取り難いが、整った顔立ち。
彼女の名は、神崎 鳴音。人々を守る魔法少女の一人である。勿論それを知っている者はクラス内にはいないが。
彼女は、一人である。
遺伝子的にも、人間関係的にも。
皆が休み明けテストが終わって、放課後の予定などの話し合いに花を咲かせるなか、その少女はたった一人読書に耽る。
タイトルは、「雷放電現象の仕組みについて」。本ではなく、論文の類だ。
読んでいるものと、その時の人を寄せ付けない雰囲気、更に生来の性格的に、彼女は一人なのだ。
有り体に言えば、小難しいものを読んでいる他者を拒絶する雰囲気のボッチであった。
クラスメイトは尽く、彼女に近寄りがたく思っているし、彼女としても、対人は苦手だから有り難いのだが。
顔立ちは整っているので、密かに男子達の視線を集めているし、本人も見られているのがわかってはいるが、無視だ。
喋ったら事故る。八割近い確率で。
兎も角として、クラス中の喧騒の中にぽつんと一人空間が生まれているのだから、側から見たら非常に件の少女は目立っていた。
だからなのか――
「――あ、鳴音見っけ!」
突然生じた声が周囲の喧騒を突き破って、鳴音の元まで届く。
彼女を名前で呼ぶ者は極少数、具体的には5人程だ。
ということは、声の主はその内の一人である。
だが、現状鳴音がいる場所において、名前で読んでくる者はいないはずである。
明でもいるのかと、一番確率が高い(それでも無いに等しい)ことを考えながら、顔を上げた。
彼女の目に映ったのは、セミロングの黒髪に、快活気な表情の少女。
その声音が、姿が、口調が、少女の全てが懐かしく思う。
けれど、鳴音の口を衝いたのは、また別のことだった。
「み、みゆ姉、…………どうして、いるの………………?」
ここには、この街にはいないはずの幼馴染に対する疑問だった。
なお、それに対する答えはというと、
「来ちゃった」
と態とらしい程のにっこり笑みで、衆人環視の場で無かったら、危うく守美子直伝の右ストレート(殺意ましまし)がかっ飛ぶところだった。
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