誰にも知られぬ少女
三章開始!
章題が今までで一番それっぽい感じになりました。
ここの話、(基本的にズレてる)作者の趣味でしか無いので(全体的にそうだけども)、ノリが合わなかったらすみません。
轟く。
霹靂が鳴り響き、雷火が奔る。
昔から、それこそ生まれた時から、その音は彼女の内で鳴り響く。
けれど、人は彼女ただ一人。ある時までは、ずっと一人だった。
暗雲に覆い尽くされ、光のない世界にたった一人。少女はぽつんと存在する。
誰一人として、少女を理解するものはいなかった。
父は、殴った。蹴った。殺意を向けてきた。雷に焼かれて、少女の世界から消えた。
母は、悍ましい怪物を見る目で見ていた。また雷に焼かれて、少女の世界から消えた。
二人の少女がいた。雷の少女とはずっと一緒の少女達。
彼女らは、雷に焼かれなかった。
些細な喧嘩はあった。それでも、消えることは無かった。
二人の内の一人が、遠くへ行ってしまった。
雷とはまた別の理由で消えてしまった。
でも、まだ一人残っている。残り続けている。
少女の手には熱が籠もっている。それも最初から、段々と日を置くにつれて大きく、温かくなっていく。
ついには、その熱は外側へと漏れ出して、雷の少女をも包み込んだ。
包まれたことの幸福感は、今まで少女が味わったことのないものだった。
その時初めて少女に欲が生まれた。
もっとその熱が欲しい。もっと、もっと、もっと、もっと、たくさんの。
だから、彼女の願いは『彼方まで』雷よ、『轟け』。
もっと熱が欲しいから。
もっと世界に人が欲しいから。
消えてなくならない温かい人が。
その人達が分けてくれる熱が。
それがあれば、自分は人であると思えるから。
それさえがあれば、自分も人だと認めて貰えるから。
けれども、後になって少女は思い知るのだ。
消えてなくなるのは、自分であることを。
己は、人などでは、ないのだと。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。




