両親
結が泣き止み、元居た会議室に戻り三分程経った頃、結の両親が到着したという知らせが二人の元へ来た。
そして、ノックも無しにいきなりドアが勢いよく開いた。
「結っ!」
飛び込んで来たのは結の母―香織。結を見つけるや否や、飛び掛かるように強く強く、彼女を抱きしめた。
「馬鹿!馬鹿娘!なんで戦ったりなんてしたのっ?」
「えっ、え、待って。お母さん、何?」
混乱する結。
「香織さんは、結が電話でろくに説明も無しに魔法局まで来て欲しい、なんて言うから何があったのかって心配していたんだよ」
香織に遅れて部屋に入って来たのは結の父―昌継。
彼は抱きしめられている娘に言い聞かせるように言う。
「それで、心配しっぱなしの中、話を聞いたら、娘が命のやり取りをしたって分かった。これで何とも思わない親はいないさ」
昌継の言葉には叱責の念が込められている。
「あ……、ごめんなさい」
結にもそれははっきりと伝わった。
だから、謝罪は意図せずとも自然に出て来た。
「うん。じゃあ、説明は後でゆっくりとね」
昌継は穏やかな笑みを浮かべ、視線を結からずらした。
困ったような、それでいて安心したような不思議な表情をしているグラジオラスへと。
結は昌継の視線を追って、それに気が付いた。
意識し出すと自分の現状が恥ずかしくなって来る。
「お、お母さん。お願いだから、離れてっ」
母に離れるように懇願する。
しかし、香織は抱擁を強め、話そうとはしなかった。
それから、五分彼女らは動かなかった。
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「お恥ずかしい姿をお見せしました……」
香織は恥ずかしげにグラジオラスに言う。
「いえ、恥ずかしくなど無いと思います。
……結、良い御両親ね」
結は応えず、視線を伏せる。ただ、顔の赤みは隠せていないが。
「さて、私は堅守の魔法少女 グラジオラス。本名、小岩 守美子です。どちらでも、お好きな様に呼んでください。これから、魔法局についての御説明をさせていただきます」
グラジオラス改め、守美子の話が再び始まった。
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