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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
追憶の母

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家族の軌跡 Ⅰ

かなり短めですが、2章もラストスパートがかかって参りました。

予定では、2章は、1章の6〜7割位の長さになる。……はず。

 猿型の魔物が出現した日から、二日が経過した。

 結と守美子は、二日とも双葉子供園に入り浸った。


 守美子は夏休み中に実家に帰省するのと同じ感覚だが、結の方は、手伝いと称して子供達と遊んだり、読み聞かせをしたりする時間が楽しくてしょうがないのだ。


 基本的に結は、姉と妹、どちら寄りかと周りに問いた場合、妹と返答される。

 だからなのか、年下がいる賑やかな環境が気に入っている。

 いや、彼女の場合、適度な人の気配がすればそれで良いのかもしれない。(勿論、自身が気を許している者に限るが)


 閑話休題。


 彼女らは、午前11時現在、明、鳴音と共に――ファミレスに居た。


 ファミレスを選んだ理由は、割と単純。

 全員が全員、家族以外とファミレスに行くという経験が乏しく、珍しかったからだ。

 特に、結と鳴音は経験が一才無いと言っても過言では無い。(鳴音は先日来たが)


「――それにしても、どう言う風の吹き回しなのよ? 守美子がファミレスに誘ってくるなんて」


 ドリンクバーの紅茶の入ったカップ片手に守美子に疑問を投げ掛ける。


 実際、守美子は魔法局の食堂を除き、他魔法少女と食事をする事が無い。特にファミレスなど守美子と一番付き合いの長い明ですら、初めての事だ。


「何で、でしょうね……。私も良く分かってはいません。でも、悪くは無い、そう思っています」

「……そう」


 自身の事は自分が一番よく分かっているように見えて、意外に分からない部分は多い。

 今回の守美子は、まさにそれだ。

 明は検討がついているが、本人が分かっていないのなら、言及すべきでは無いと、相槌と共に、紅茶を一口。


「……やっぱり薄いわね…………」


 ドリンクバーに濃さを期待してはならない。

 最初口に含んで薄いのが気になったのか、こっそり魔法で濃縮しよう(火属性魔法で水分を飛ばすことで、濃さを上げよう)とさえしていた。一番しなそうな明が。

 勿論止められた。意外なことに鳴音に。


 明の行動を止めるとしたら、守美子の方が()()()が、明の行動自体を一番良く見ているのは、鳴音なので、意外と言う程のことでも無いのかもしれない。


 暫くして、頼んでいた料理が揃った。

 ドリア、ステーキ、パスタにピザ。

 サイドメニューに、フライドポテトやサラダなど。

 各々の好みのままに頼んだ色とりどりの料理がテーブルを埋め尽くした。


 当人以外の周囲の人々(店員含む)は、女子4人で食べ切れるのかと、疑問を視線に込めている。

 本人らは、余裕としか思っていない。


 全員が全員、魔法少女。身体が基本の職業なので、食事の量も増える。

 魔法少女歴6年に及ぶ守美子やそれに次ぐ5年の明は言うまでもないが、彼女らよりは短いが鳴音もかなりの経験を積んだ魔法少女だ。遠距離担当ではあるけれど、身体はかなり鍛えている。


 結も3ヶ月前から比べて、明らかに食事量が増えた。

 香織は、最近娘が良く食べるので、ご機嫌である。


「――そうだ、凪沙から結の連絡先を教えて欲しいと言われたのだけれど、伝えちゃって大丈夫?」


 ピザのチーズとの若干の格闘の後、守美子は先日凪沙から(メールで)言われていた事を思い出した。

 本人に確認を取らずに渡すのは論外だが、結が凪沙と遭ったのは不審者スタイル時だけなので、承諾されないのではないか、と守美子としては思っている。


 守美子は隠し撮りした写真を見る度に、吹き出しそうになると同時に、友人の将来に不安を覚える。

 あの子は、親元を離れて生きていけるのだろうか、と。


「うん、大丈夫……だよ? 大丈夫…………だよね?」


 言ってから、段々と不安になってきた。


「ええ、まあ、普段は割と(・・)大丈夫だから。割と(・・)

「守美子、それ不安感を煽ってるだけよ?」


 割と、それは割と便利な言葉である。

 守美子にツッコミを入れるのは、既にパスタを完食した明。

 鳴音は、ステーキを頬張ったまま、タイミングを逃したことに、少し肩を落としている。

 本人的には、明のようにツッコミたいらしい。



 ________________




「混んできましたし、そろそろ出ましょうか」


 時刻は、正午(・・)に回るかどうかと言ったところ、守美子はレジの辺りに視線を向けながら、既にドリンクバーの残りを消費するだけになっている他3人にそう言った。


「そうだね。待ってる人いっぱいいるし」

「……おいしかった」

「また来ましょう。今度は訓練の後とかの方がゆっくり出来るかしら?」


 全員が賛同して席を立とうとした瞬間、それ(・・)は起こった。


 前任のマギホンからアラートが鳴り響いた。

 同時に街を覆う結界へと奔る激震。

 ついで、魔法少女らにしか聞こえない硝子の砕けた音。


「――出るわよ!」

「会計をしてから行くので、先に行っていて下さい!」


 明と守美子の年長者組の対応速度は流石の一言。

 周囲の視線など知ったことかと、結、明、鳴音の3人は扉を蹴破るように、店を飛び出した。

 少し遅れて、守美子も駆け出した。


「場所は、街の南側。ランクA、結界が破られたことから、既に街に侵入済みと考えなさい!」

「アラートと結界の破壊のタイムラグが短すぎます。この前の猿型の魔物も、その前のも、最近の魔物は魔法局が構築している警戒網が通じないと考えて良いでしょうね」


 街の中心地から、南端に直行するには、魔法少女になった方が良いのは明らか。

 どこか人気のない路地を探して、視線を彷徨わせた瞬間、爆発音が耳朶を打った。


「――――ッ?!」


 それは、街の北側。

 少し高めの丘の上にひっそりと建つ何処かの近く。

 息を飲んだのは、守美子。


「すみません……」

「謝らないで。――結、守美子と一緒に行って」


 言うが早いか、守美子はすぐに今までとは全くの逆方向に駆け出した。

 判断に迷う結に、明は続けて言う。


「行きなさい。私と鳴音が一緒にいるのよ? 他人は寧ろ足手纏よ。例え魔法少女であっても」

「……はい」


 結も守美子に続いて走る。

 その姿を一瞬、目で追ってから、明と鳴音も再度駆け出した。


「良かった、の? あんなこと言って……」

「当たり前じゃない。私達の連携には邪魔よ。違う?」

「――ふふっ、うん、そうかもね」


 軽口は程々に。

 彼女らへの視線は一切無くなった。


「『彼方まで轟け』」

「『見据えて包め』」


 魔力が奔流として巻き上がった。

 巻き上がる力に任せて、彼女らは地を蹴った。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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