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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
追憶の母

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不穏な影 Ⅱ

「――――!」


 ピクリとグラジオラスの眉が跳ねる。

 未だ遠い目的地――件の公園で魔力が弾けたのを感じた。


「これは、ガルライディアのかしら?」

「ええ、おそらくですが。ただ、ガルライディアと良く似て強大な魔力を持っている方を知っているので、確証はありませんが」


 一步遅れて気がついたセージゲイズは、ガルライディアのものと当たりを付けた。


 グラジオラスも95%はそうだろうと考えているが、過去に一度、否、二度、ガルライディアの魔力に似た暴力的で研ぎ澄まされた力を肌で感じたことがある。

 あれ程までに、圧倒的な力はそう感じるものではない。

 だからこそ、一度で印象に残るのかもしれないが。


 閑話休題。


「それにしても、随分感知能力上がったわね? 一月前のグラジオラスとは明らかに別人の域よ」


 魔力感知の範囲は、

 今まではセージゲイズ>グラジオラス>エレクの順であったが、現在ではセージゲイズとグラジオラスが逆転した。

 少なくとも、彼女らはそう感じている。


「――まあ、いいわ。急ぐわよ、魔物の魔力が一気に上がったから、ガルライディアだと保たないわ」


 魔力が上がると言っても、戦闘中に保有量が急増するのではなく、表層に漏れ出ている(活発化している)魔力量が増したことを意味する。


 基本的に魔物は魔力を生命維持や身体強化に用いる。

 魔力の活発化は一般に魔物の身体能力が上がる為、戦闘能力が一段上がるのだ。


 Aランクの魔物は、それ以下の魔物とは戦闘力が数段異なる。

 ガルライディアは、Bランクの魔物を単独討伐する程度の実力を持ってはいるが、逆に言えば、その程度だ。

 本気になったAランクに勝つ確率ははっきり言って1割も無い。


 セージゲイズは急ぐと言ってはいるものの、そもそもがかなりの速度で目的地へ向かっている為、ほとんど気持ち的な問題である。


 仲間が、自身が、駆け抜ける音を耳にしながら、グラジオラスは一人思考を巡らせる。


 どうして、魔物の魔力はガルライディア(仮)の魔力のように感知出来なかったのだろうか、と。



 _______________




「――ハァッ……ハァッ…………」


 荒い息を少しずつ整えつつ、ガルライディアは状況の確認に努める。


 敵は変わらず猿型の大型魔物一体のみ。

 敵の得物も変わらず木。


 けれども、魔物の周囲に元々在った黒い靄――魔物の魔力は大きく広がっている。

 また、魔力は木も包み込んでいて、武器としての性能は以前よりも格段に増している。


(要は私達がいつもやっているように、魔力で身体と武器を強化しているって事のはず。……やっていることは凄く単純、なのに――)


 思考の邪魔をするが如く、先程よりも4割近く速く接近してくる魔物。

 豪、と勢い良く魔力が吹き荒れて、ただの樹木が何人をも毀し得る最凶の鈍器と成る。

 ミシリ、と全身が軋むほどに全力で魔力放出をも加えたバックジャンプ。

 それでも、死の運命を回避するにはまだ足りない。


「『爆裂(ブラスト)』ォッ!!」


 撃発と爆風を以て、更に加速する。


 暴風が吹き抜けた。

 ガルライディアの前方30cm先を凶器が駆け抜けて、衝撃が全身を打ち付ける。


「――ぐうぅぅ…………!」


 発生した風で更に数m後退。

 一拍、両者の動きが停止する。


(私の勝利条件は、皆んなが来るまで魔物を押し止めること。皆んなのところにも連絡は届いているはずだから、到着までそんなに時間はかからない。私一人が何とか足止めできる相手なら、3人が来れば負けない。……なら――)


 瞬間、紅が吹き上がる。

 少女の身体を、愛銃を、その周囲を、赤々と染め上げる。

 それだけでは足りず、揺らめく炎のように少女の輪郭を狂わせる。


(短期決戦でも、大丈夫!)


 確実にしなければならないのは、魔物の足止め。それだけ。

 ならば、先程までの状況が続くべきでは無い。


「――行くよ」


 誰に聞かせるわけでもなく、少女は愛銃を構える。

 それに合わせるように、重心を傾ける魔物。


 突撃。

 魔物の一步目が地を放射状に抉る。

 時速にして、200km/hを優に超える踏み込みは溢れ出す魔力で更に速くなる。


 けれど、その道行はそうそうに止まることとなる。


 魔物の足元に突き刺さる閃光。

 ほんの一瞬、意識を(少女)から逸した魔物。

 それに襲い来る数多の魔弾。


「………………」


 吹き荒れる紅に反して、ガルライディアの目は冷めきっている。

 強引に魔力を『フライクーゲル』に込めることで発生する副次効果、それは本来魔弾の発射に必要な若干の溜めを大量の魔力を以て強引に限りなくゼロにする。

 その結果、理論上連射速度がガルライディアの引き金を引く速度次第ということになった。


「――――!!」


 声なき咆哮とともに魔物は再度突撃を開始する。

 ガルライディアが魔弾を放つ。

 その瞬間、魔物は先程進んだ分を含めて、後退させられる。


 畳み掛けるように放たれる魔弾。

 その連射速度はマシンガンのそれに近しい。


 保って、後5分。

 ガルライディアの短い耐久戦が始まった。


お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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