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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
追憶の母

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不穏な影 Ⅰ

「――では、また」


 守美子の声が、夕焼けの街に消え去る。

 4人で、ファミレスに籠もって早数時間が経ち、今回の集まりはお開きとなった。

「姉らしさ」の会話に始まり、守美子の悩みと続いた会話内容は、いつしかただの雑談に変わり(端から雑談だったかもしれないが)、結局全員が全員昔から良く知っている者がいた事で、幼い頃の行動の暴露で羞恥に悶えるはめになった。


「楽しかったねぇ」

「守美子の話、かなり意外なことが多かったわね」

「……えと、えと、楽しかった、です…………」


 流れで、感想を述べていく面々。

 夕日に照らされた皆の頬は僅かに上気している。

 少女(・・)らしい休日を満喫した少女たちが、並んで帰路につく。


 けれど、魔法少女(・・・・)としての戦いはこれからだ。


 アラート。

 不快な機械音が魔法少女の意識を(つんざ)く。


 送られてくる情報の確認。

 街中、街一広い公園にて、魔物の出現を確認。

 ランクは、A。事実上の最高ランク。


 奔る緊張。

 すぐさま飛び出す。


「すみません、凪沙! 急用があるので!」


 代表して、守美子が断りを入れて、3人揃って、駆ける。


「頑張って! グラジオラス、セージゲイズ(・・・・・・)エレク(・・・)!!」


 凪沙からの激励。

 お願いだから、公衆の面前では止めて欲しい。

 激励を貰った3人は揃って、苦笑を漏らす。


「彼女、どうして知っているのかしら?」

「……身バレ怖い、身バレ怖い、身バレ怖い――――」

「彼女、多分結の正体にも気がついているでしょうね」


 まあ、今は気にする必要のないことだ。


 体内で魔力を回す。

 紡ぐは言霊。彼女らの最強の具現化。


「『その背を追え』」

「『見据えて包め』」

「『彼方まで轟け』」


 純白が、透明が、紫電が、迸る。

 少女らの身を包み込んで、弾け飛ぶ。


 純白の装束を纏い、腰元の帯には左右一組の小太刀『唐菖蒲』を下げた魔法少女――グラジオラス。

 紫のインナーに白衣を纏い、『セファー・ラジエール』を背負う魔法少女――セージゲイズ。

 黒地のローブと三角帽を纏い、身長に迫る大杖『ケラウノス』を手にする魔法少女――エレクトロキュート・イグジステント。


 そこに在るのは、人類の守護者――魔法少女。


 沈みゆく火輪、誰そ彼(たそがれ)刻に正体不明の戦士が街を駆け抜ける。



 ________________




「――あぶなっ……!」


 振るわれた広葉樹そのもの(・・・・)を大きくバックジャンプすることで避ける。


 先程まで生えていた木を振るう手元を狙って、紅は奔る。

 粉砕。

 幹の中程から吹き飛んだ。


 紅を纏う少女――ガルライディアが相対するは、大柄の猿型の魔物。

 魔物は公園に植えられた広葉樹を根元から無理やり引き抜いて、即席の武器にした。

 ガルライディアは避けているものの、魔法少女は常に対物結界を纏っているため、幾ら魔物が巨木を振るおうと、大して痛痒を覚えないだろう。


 木に風穴を開けて、そのまま体勢の崩れた魔物に向けた『フライクーゲル』に魔力を収束する。

 撃ち放つは、周囲を巻き込む一撃だ。


「『爆裂(ブラスト)』!!」


 胴を狙って放たれた魔弾はしかし、狙いから大きく反れることとなった。

 以前ガルライディアが遭遇した猿型の魔物と同様に、今回の魔物も木を使った立体機動を行う。


 木々を蹴って、飛び回る魔物を狙うのは困難ではある。

 実際以前は出来なかった。

 けれども、ガルライディアは短い期間ではあるが、研鑽を積み重ねてきた。


「……ふう…………」


 態とらしく息を吐き出して、集中力を一気に跳ね上げる。

 認識の中に在るのは、魔物と愛銃。音や匂いを置き去りにした世界で一人獲物に向けて、殺意を込める。

 一つの『フライクーゲル』を両手で構えて、僅かに射線を調節する。


「『貫通(ペネトレート)』」


 無音の世界に撃発の音が響いた。

 パッと、彼岸の緋華が一輪散った。



お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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