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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
初めての変身

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戦いの行方

 魔物がガルライディアに向けて走る。

 たった数mなど魔物の前では無いに等しい。


 けれど、それは魔法少女にも言える事。

 魔法少女は常に、

 身体強化、対物結界、対魔力結界、偽装の四つの魔法を微弱に纏っている。


 対物、対魔力結界は性質的に壁というよりも威力の軽減に近い。また、偽装魔法は魔法少女の素顔などを周囲の者が正しく認識出来ないようにするためのもの。


 そんな魔法少女達は魔力を扱えない人間からすれば、魔物と等しく、化け物なのだ。

 化け物同士の戦いは佳境を迎える。

 ガルライディアは強化された動体視力を以て魔物の動きを見極める。


(……3,2,1,今!)


 魔力放出。それによる跳躍。ガルライディアの赤い魔力が、吹き荒れる。今までの彼女なら、例え銃に魔力を込めていたとしても魔力放出の際に乱れていただろう。


 けれど、完全では無いにしろ、彼女の両銃には確かな量の魔力が込められている。

 ガルライディアは空中で反転。

 眼下には自身が飛び越えた魔物の姿がある。


「行っけえぇー!!」


 咆哮とともに魔力弾が放たれた。

 炸裂。

 貫通。

 ガルライディアがトンと軽やかな音を立てて地面に降り立つ。

 魔物がドサリと重い音を立てて地面に崩れ落ちる。

 ガルライディア初のシミュレーション戦闘は勝利に終わった。


 __________


 ガルライディアの全身から力が抜けて崩れ落ちる。

 その寸前にグラジオラスがガルライディアを抱き止める。

 その途端、ガルライディアの身体から赤い魔力が散って、元の服装に戻る。


「お疲れ様。頑張ったね」


 今までのグラジオラスらしからぬ柔らかい声音だった。

 隔意を感じる敬語が取り払われた。

 それはすなわちグラジオラスがその人を認めた証拠である。


「……うん」


「魔力が切れるまで自分を出し切って……、本当におめでとう」


「うんっ」


 結は涙ぐんでいた。

 優しくも強く抱きしめられている。

 こうして、誰かに抱きしめられたのは、いつぶりだったろうか。

 涙が一滴こぼれ落ちる。


「ほぅら、泣かないの」


 温かい手のひら。

 共働きで毎日忙しくしている両親からは、長らく感じていなかったその温かさに涙が止めどなく溢れてくる。

 結が泣き止んだのは、それから暫く後だった。


お読みいただきありがとうございます。

誤字等ありましたら、順次修正するつもりなので報告していただけると嬉しいです。

また、投稿した話も順次修正を続けるので機会がありましたら、読み返していただけると幸いです。

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