「『ぬう坊』がイジメられている!」 〜 (3)
「『ぬう坊』をイジメるな!」
私が怒鳴り飛ばすと、
クラスのほぼ全員が、
座席に座って下を向いた。
後ろめたい事でも有るのだろうか?
皆、黙ってしまった。
そんな中、
黒板の前では、
『ぬう坊』と一緒に、二人の男子生徒が立っていた。
その二人の内の一人は、
底辺不良中学アルアルの不良だった。
本人はマトモなんだけど、
実家に出入りしている人達がロクデナシで。
そんな、
家に帰れば、ヤバい連中と付き合わざるを得無い不良が、
口を開いた。
「イヤイヤ、
イジメてるんじゃなくて、
『ぬう坊』に仕事をやらせてるだけで」
そう言って、黒板を指差した。
私は、
『釣り堀の孫』から、
「『ぬう坊』がイジメられている!」
とだけ聞いて飛び出して来ているので、
何も知らない。
この不良の態度から、
『ぬう坊』が、
日直か何か? の当番で、
黒板を消すとか? なんらかの仕事をする責務が有る事が、
推察される。
実は、現在でも、
何故? 『ぬう坊』が黒板の前で立ち尽くしていたのか?
何も知らない。
何も知らないのに、
これを書いている。
(たぶん、この不良が言っている事は、正しいんだろうな)
とは思ったが、
正確に書くと、
反論出来ないので、
「じゃあ、俺が、『ぬう坊』の代わりに、相手になってやるよ」
傍若無人をしてしまった。
ただの自己満足で、やっているから。
私は、
『ぬう坊』の一大事に、『ぬう坊』の許へ馳せ参じたかった。
ただ、それだけで、
誰が正しいのか? なんて関係ない。
でも、
そう言って、直ぐに後悔した。
ガリ勉君に転向していたから。
『朝鮮人と私 〜 中学生の時、朝鮮人8人にボコられそうになりました。もちろん、日本で、です』の第八話で書いた『結婚詐欺師』に、
中二のバレンタインの日に呼び止められた事で、
人生が変わってしまった。
最強を目指さなくなり、体を全く鍛え無かった。
『結婚詐欺師』にフラれた後は、
勉強ばかりしていた。
『釣り堀の孫』が、
「『ぬう坊』がイジメられている!」
と、
召喚しに来てくれた時も、
勉強していた。
そんなナマッた体で、
二人を相手にして、勝てるだろうか?
そう。
黒板の前に立っていた、もう一人の男が問題だった。