「『ぬう坊』がイジメられている!」 (1)
中二になってクラス替えが行なわれると、
私は、
『ぬう坊』や『釣り堀の孫』と別のクラスになった。
そして、
それ以降、彼等とは一言も言葉を交わさ無かった。
まあね。
私は天下の嫌われ者だったからね。
これが、いつものパターンさ。
なにしろ、
高校へ入ったら、街で私を見掛けると逃げて行ったからね。
底辺不良中学の連中は。
そして、卒業間際となり。
私が通っていた底辺不良中学では、
中三の三学期になると、授業が、ほとんど行なわれ無かった。
その頃までには、
ガリ勉君に転向していたので、
私は、
学校へ行くと、ず〜っと、勉強していた。
朝から座席に座り、勉強し続け、
学活の時間になっても、
担任の教師は、
なかなか来ない。
職員会議が常に開かれていたので、
いつも、遅れて、やって来る。
そして、
自習を告げて去って行く。
そんな感じで勉強していると、
『釣り堀の孫』が、
私を迎えに来てくれた。
教室へ、コッソりと入って来て、
私を見つけると、安心した様に微笑んで、
「『ぬう坊』がイジメられている!」
それを聞いた私は、
『釣り堀の孫』に頷き、
そのまま立ち上がって、
駆け出した。
私は、
『ぬう坊』の一大事に、『ぬう坊』の許へ、馳せ参じたかった。
ただの自己満足で。
つまり、
敵が何人いるのか?
とか、
相手は誰なのか?
とか、
どんな状況なのか?
とか、
何故? 『ぬう坊』はイジメられているのか?
とか、
実際に問題を解決する上では、
最も必要な情報を、一切、聞かずに。
もちろん、
一刻も早く、現場に駆け付ける必要が有ったかも知れないが。
ウルトラパーな私は、
特攻がしたかった。
そして、
そのまま、『ぬう坊』のクラスの教室に突っ込んで行った。
扉を開けると、
黒板の前で『ぬう坊』が立往生していた。
それを見た私は、
教室中に響き渡る様な大声で怒鳴り飛ばした。
「『ぬう坊』をイジメるな!」
ウルトラパーな私は、
何も知らないので、
とりあえずクラス全体を、
武力で鎮圧するつもりでいた。