『釣り堀の孫』 (2)
『釣り堀の孫』が、『ぬう坊』と仲良くし始めると、
周りの視線が変わった。
その時は、
皆、中学一年生の子供だったけど、
『釣り堀の孫』が何を考えているのか? 理解出来たから。
泣きながら土下座を続ける『ぬう坊』の母親の姿を見て、
『ぬう坊』を育てて来た苦労が、
伝わって来たから。
愛情を込めて大事に育てた、
そんな大切な『ぬう坊』を、
理由も無く殴ったり蹴ったりしたから。
そして、
本当はイジメていたのに、
イジメは無かった事にしてしまったから。
『釣り堀の孫』の『ぬう坊』を守りたい気持ちは、
日曜日の朝、『ぬう坊』の自宅呼び出された人間達には、
痛い程、解った。
その『釣り堀の孫』は、
『ぬう坊』を守るため、皆と『ぬう坊』の橋渡し役になってくれた。
『釣り堀の孫』は、
『ぬう坊』を私の所へ連れて来て、
「『ぬう坊』は英語が話せるんだぜ!」
と自慢して来る。
「ぬうちゃん! ぬうちゃん!
英語で1から順番に言ってみて!」
と振ると、
『ぬう坊』は嬉しそうに、
「ONE」
「TWO」
「THREE」
と、ゆっくり始める。
「NINE」
「TEN」
「ELEVEN」
「OCTOBER」
(何で? OCTOBERなんて知っているんだ?)
話はズレるが、
私は底辺コースだったので、
中学生になるまで、
一度も英語を勉強した事が無い。
その事が、その後の足枷となった。
『どうやって? 日本を衰退国へ変えたのか? 〜 教育編』の第四話で書いたNも、
底辺コースだったので、
私と全く同じ弱点を持っていた。
彼の息子がT大に合格したと聞いた時、
(当然だよな)
と思った。
T大に入れるか? 否か? は、
どんな家庭で育ったか? にかかっている。
【資本主義社会】だから、当たり前だが。
数学や物理の様な理系科目は、
高校生くらいから勉強を始めても、なんとかなるが、
国語や英語は、
子供の頃から学んでいる人には、
絶対に勝てない。
私が、
文章が下手糞なのも、
読書とか一切せずに、暴れ回っていたから。
文章力から判断すると、
『なろう』の投稿者の中で、
私が最も低辺コースだったのだろう。
話を戻すと。
OCTOBERの意外性に私が笑うと、
「な! 面白えだろ?」
と『釣り堀の孫』が喜ぶ。
そんな風にして、
『釣り堀の孫』が『ぬう坊』を守った。
学校側も、それを把握していた様で、
その後のクラス替えでも、
『釣り堀の孫』と『ぬう坊』は同じクラスになった。
そして、
『釣り堀の孫』は、
中学三年間。『ぬう坊』を守り抜いた。