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先輩は女騎士で俺は剣で  作者: 枯木真田呂
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終わりと始まり

 1年前の夏休み。私立(しりつ)剣銅(けんどう)高校の学校説明会で、俺は会場が分からず校内で迷っていた。


 「そこの君、会場が分からないの?」


 そんな時1人の女性が話しかけてきた。

その女性は(つや)のある綺麗な長い黒髪、人形のように大きく開いた目を持っている美少女だった。全てが俺の好みでどストライクだ。


 「実はそうなんです」


 「この学校は広いから迷うのも仕方ない。私が案内してあげよう」


 「ありがとうございます!」


 優しい先輩もいるんだな。その先輩のことが頭から離れなくなりまた会いたくなってしまった。

そしてまた会いたくて剣銅高校を受験することを決めたのだ。


 季節はめぐり今日は入学式の日。俺は総土(そうど)海影(みかげ)、今日から私立剣銅高校に通う高校1年生だ。あの『憧れの先輩』に会うために頑張ったんだ。絶対に見つけるぞ。


 学校に着くと自分のクラスを確認した。俺はC組らしい。同じ中学からこの高校に来たのは俺だけなので少し不安を感じている。

俺は教室に向かい自分の席についた。すると


 「よ!俺は多部(たべ)隼也(はやなり)、お前は?」


 急に後ろの席の男子に話しかけられた。急に話しかけられたので俺は慌てて答えた。


 「お、俺は総土海影、これからよろしく多部君」


 「君なんて付けないで隼也って呼んでくれよ」


 「じゃあ俺のことは海影って呼んでくれ!」


 こうして俺と隼也は友達になった。知り合いが誰もいない俺にとってはとてもいいスタートだ。友達ができなかったらぼっち飯だからな。


 「今から入学式だ。体育館に移動しなさい」


 校長の長くて退屈な話やPTA会長の話が終わり、次は生徒会長の話だ。


 そういえばこの学校の生徒会長を知らないな。

そんな事を考えていると舞台脇から生徒会長が歩いてきた。俺は目を見開いた。

なんとあの『憧れの先輩』だったのだ。


 「新入生のみなさん。ようこそ剣銅高校へ。私は生徒会長の岸上(きしがみ)束音(つかね)です。みなさんのご入学を心から嬉しく思います。これから我が校で共に歩んでいきましょう。分からないことは私たち生徒会や先輩に聞いてくださいね」


 体育館内に拍手の音が鳴り響いた。

さすが俺の『憧れの先輩』だ。岸上先輩っていうのか。やっぱり先輩は美少女だな。俺の好みどストライクだよ。もっと知りたい。お近づきになりたい。そんな事を考えている内に入学式は終わってしまった。


 そして俺は岸上先輩とお近づきになるための方法を考え出した。

生徒会に入るのだ。

この学校は7月に生徒会選挙があるらしい。そこで何らかの役職につくのだ。岸上先輩は圧倒的支持により2年生にして生徒会長をしているらしい。ならば1年生の俺にもチャンスはある。『憧れの先輩』は超絶美少女なので正直俺みたいなやつが相手にされるかは分からない。だかそんなことは関係ない!

 

 「何でニヤニヤしてるんだ?」


 「な、何でもないよ」


 隼也が不思議そうな顔で覗き込んできたのでとっさに答えた。やべっ。どうやら考えていたことが顔に出ていたようだ。気をつけるようにしないとな。急にニヤニヤする変なやつと思われたら生徒会選挙に響くかもしれないからな。


 「明日から生徒会に入るために好感度を上げないとな」


 家のベットで明日からのことや岸上先輩のことを考えていたら眠ってしまっていた。


 目を覚ますと外は真っ暗だった。何時間ぐらい寝ていたのだろう。そう思い時計を見ると21時30分だった。やばい。夜ご飯を食べないと。俺の両親は出張で外国に行っている。俺はこの家に1人なのだ。1人なのはどれだけゲームをしても怒られないから嬉しいのだが、ご飯を作るのだけが面倒だ。


「こんな時間だしコンビニでカップ麺でも買うか」


そんな独り言をいいながら準備をし、コンビニに向かった。


 カップ麺とお茶を買い、俺はコンビニを出た。もう22時なので道は真っ暗だ。足元も見えないし、街灯もそれほどない。


 家までもう少しというところで俺は『とんでもないもの』を見た。その『とんでもないもの』ははっきりとは見えないが、街灯のおかげでうっすら把握することができた。『とんでもないもの』は一目で人間ではないと分かった。化け物だ。人間が3メートル近くあるはずがない。そもそも四足歩行だ。野良犬の類でもないだろう。『とんでもないもの』は口から覗いている大きな牙、緑色に光っている細長い目、手にある大きな爪など、文字通りの化け物だった。


 「くそっ、なんでこんな化け物がいるんだよ……! ここは夢の中なのか? そうだ! 夢に決まってる!」


そう思って自分の頬を殴った。


 「くそっ、痛いじゃないか。こんなことが現実で起こるっていうのか?」


化け物はこっちに向かってくる。死の恐怖を感じたのだろう。俺の本能が「逃げろ」と言っている。だが足が動かない。当たり前だ……こんな化け物に会うなんてありえない……二次元じゃあるまいし。あの化け物がゆっくりと近づいてくる。やばいやばいやばい……俺は動かない自分の足を叩いて怯えながらも必死に逃げた。

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