憎しみの果て
ここまで話してスアロは迷っていた。
現時点、この世界にはスキルという概念はない
剣術流派の秘伝やポーションや薬丸などの機密レシピなどといった特異技能はあるが、それらは全て口伝や長い研鑽の末に少しずつ体得していくものである。
スアロのように突然会得するものではない。
スキルを獲得したとき、スアロは得体のしれない違和感に襲われた。
魔王という存在。勇者という存在。
神託という人生をねじ曲げる強制力。
過酷な行程。絶対的に足らない食糧。
魔素中毒。エリクサー依存。
そして――――スキル。
まるでそれまでの全てがスキルを獲得する為だったかのように感じた。
その違和感は魔王城・玉座の間に辿り着いたとき、確信に変わる。
この扉の先に魔王がいる。
全ての元凶がいる。
コイツのせいでライアンは狂った。
コイツのせいでシャルルは死んだ。
コイツのせいで苦しんだ。
コイツのせいでコイツのせいで――――――
――――――殺してやる。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す――――――
『――――――殺す。』
そこにもはや勇者はいなかった。
どす黒い殺意にまみれた復讐者が玉座の間に足を踏み入れた。
――――――そして
――――――復讐は成されなかった。
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