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第96話 彼と影




ラファエルと久しぶりに会った私。

嬉しさと恥ずかしさでいっぱいいっぱいだったのだけれど…

イヴとダークを見て、ラファエルが不機嫌になってしまった。

取りあえず、私の部屋へ移動した。

周りの目があるところでは、影だと言えないからね。


「お初にお目にかかります。私は、レオポルド様の影No.6を務めさせて頂いておりましたが、この度姫様からレオポルド様への要請がございまして、近辺警護のお役目を頂きましたイヴと申します」

「………ダーク……です…」


ムスッとしてソファーに座っているラファエルに対し、ニッコリと微笑んでいるイヴ。

………胡散臭い笑顔だなぁ…

ダークは無表情なので、ちょっとは愛想笑いの一つでもしたらいいのにと思う。


「………影を増やしたの? ソフィア」

「あ、えっと…ライトとカゲロウは私の影だから、ずっとは姿を表せないでしょ? だから、お兄様に頼んで腕の良い影を兵士として寄越して欲しいってお願いしたの」

「………」


グッとラファエルの眉間にシワが出来ていく…

う~……やっぱり、ダメ…?


「………まぁ、うちの騎士は役に立たないって思われても仕方ないからな…実際そうだし」

「………」


………あれ?

ラファエルが、寛容に…?


「ランドルフ国の騎士が育つまで、時間がかかるし。………ごめんねソフィア。俺だけじゃソフィアを危険に晒すから、ソフィアが用意するしか無かったんだよね」

「ぁ……」


事実でも、ラファエルに相談してからの方が良かったかも…

ラファエルを――ランドルフ国の騎士を役立たずだと遠回しに言ってしまったようなものだ。


「あのね、ラファエルに心配かけないようにって、負担にならないようにって思って、勝手にしちゃってごめんなさい」

「分かってるよ。ソフィアは何も悪くないんだから、謝らないで」


裏の無い笑顔で微笑まれ、私はホッとして微笑み返した。


「「………」」


その様子を、何か言いたそうな顔で見つめてくるイヴとダーク。

………え、私何かしたの…?


「………何?」

「いえ、姫様が令嬢だな、と」

「………は!?」

「言葉遣いは感心いたしませんが、サンチェス国にいた姫様より、こちらでラファエル様とお話しておられる姿の方が令嬢ですね。王女としては本当に感心いたしませんが、令嬢としては好ましいです」


イヴの言葉に、カックンとダークも首を上下に動かした。

………ダークは機械式なのだろうか……

頷きがカクカクしている…

………って…


「失礼ね!? なに気に感心しないって批判の言葉を2回も入れるんじゃないわよ!!」


思わず立ち上がってイヴに抗議する。


「本当に残念です。姫様がそんな言葉遣いを影以外に対してするとは…」

「ラファエルに繕ってどうするのよ!? 私はラファエルが――す……好き……だし……本当の私を受け入れてもらわないと、仮面夫婦になっちゃうじゃない!」


………はっ!!

ふ、夫婦って言っちゃった…

カァッと顔がまた赤くなっていくのを感じた。


「ソフィア」

「ひやぁ!?」


クイッと腕を引っ張られ、私はラファエルの膝の上に乗ることとなってしまった。


「そうだよ。俺達は夫婦だ。だからソフィアの本当の口調でと俺が彼女に頼んだ。お前は王族同士が納得し決めたことに口を挟む権利があるのか?」

「………! 失礼いたしました」


ラファエルに睨みつけられ、イヴは頭を下げた。

これでイヴが私の口調に関して、咎めてくることは無いだろうけど…

何かにつけての小言は、止まらないんだろうな…


「君達が護衛に付くのに、俺が文句を言える筋合いはない。ソフィアを危険に晒したのは事実で、騎士は素人しかいないからね。ただ、俺とソフィアの事に口を出すことは許さないから。今みたいにね」

「畏まりました」

「………」


2人が改めて頭を下げる。

それを横目で見て、ラファエルを見上げた。


「ソフィア」

「何?」

「あえて不満があるとすれば、女の影で探してくれなかった事だね……」

「正確には、お兄様のNo.1~5までの影を寄越して、と要求したの。3と5は女性だったし」

「そうなの?」

「うん。でも――」


私はラファエルの耳元に唇を寄せる。


「お兄様が持て余してる、腕は立つけど問題児な2人が来ちゃったの……」

「………」


耳元で囁いた私の言葉に、ラファエルが微妙な顔をした。

………ですよね…


「この部屋にいる間は扉の前の見張り役として、交互に立たせるわ。出掛ける時は2人揃って護衛役として付いてきてもらう」

「分かった。その辺はソフィアに任せるよ。俺の影は逆にソフィアの為にはならないからね」

「え…?」

「テイラー国でソフィアの正体をバラすような間抜けだからね」

「ぁぁ…でも、あれは止めなかった私も同罪だと思うよ…?」

「それでも、外で呼び分けるという基本も出来てなかったんだ。俺も気づかなかった。護衛も影も、サンチェス国の方が明らかに上だろうからね」


苦笑するラファエルに、私は困る。

けれど事実なだけに、私は上辺だけの慰め的発言はしないよう口を噤んだ。

誤魔化しなども意味はない。


「じゃ、そろそろ2人きりにしてくれる? 久しぶりに会ったんだから、イチャつきたいんだ」

「イチャ…!?」


ラファエルの言葉に、カァッとまた顔が赤くなる。

宣言されると恥ずかしいんですけど!!


「では、最初は私が外で立っておきます」


イヴとダークは一礼して、イヴが出て行きダークが天井へと姿を消した。

2人きりになり、ラファエルが笑顔で私を見てくる。

直視できずに私は視線を反らしたのだった。


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