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第95話 久しぶりの温もり




「………姫」

「何」


吹き出したお茶で汚れた机を綺麗にして、新しいお茶を飲んでいるところだった。

ダークから話しかけられたのは。

でも、顔を向けても…


「………」


………ダークは黙ったまま。

だから、言葉にしてよ!!

分からないから!!

察する事なんて出来ないんだってば!!

表情一つ変えずにジッと見てくるダークはホントに表情読めないから!!


「………ああ、ラファエル様が走ってきていますね」

「え…」


イヴの言葉にイヴに顔を向ければ、彼は庭に出てくる王宮の入り口に顔を向けていた。

私も顔を向けると、必死の形相で走ってきているラファエルが見えた。

ああ、ダークはこれを伝えたかったのか……

………って!!

バッと顔を反対方向へ向けてしまった。


「な、なんで顔を背けるのソフィア!?」


ラファエルの声がするけど、見られない。

だ、だって!!

ひ、久しぶりすぎてどういう顔をしていいのか分からないんだもん!!

ドキドキする心臓。

会ったら文句の1つでも言ってやろうと思ってたのに。

寂しかったことも、何故会いに来てくれなかったのかとも、顔見る前まで思っていたのに。

全部一気に吹き飛んでしまった。

取りあえず、動いてるラファエルを見てホッとした。

根を詰めすぎて倒れてはいないか心配だったし…


「ソフィア!」

「ちょ、ちょっと……待って…」

「なんで!? ごめん、会いに来れなくて! 怒らないで!!」


お、怒ってはいないけど…


「ひゃぁ!? ちょ、触らないで!!」


ラファエルに触れられそうなのが視界の端に見えて思わず叫んでしまった。

それによってピタッと止まった手。

………ぁ……

ハッとして顔を向けると、絶望したような、顔を真っ青にしたラファエルがいた。


「………そ、ソフィアが……拒絶……」

「ご、ごめんなさいっ……そ、その、心の準備が……」

「お、おれ……きら、われて……」


か、片言になってしまっている!

何もあんな事叫ばなくて良かったでしょ私!!


「き、嫌いじゃないよ!! ちょっと待って欲しかっただけ! も、もういいよ?」


おずおずと両手をラファエルに伸ばせば、パッとラファエルの表情が華やいだ。

嬉しそうに私を抱きしめてくる。

更に頬ずりまで。


「ぁぁ……ソフィアだ……」


幸せそうに呟くから、私の頬が熱くなっていく。

………って、喜んでいる場合じゃ無いでしょ!


「ら、ラファエル…? 大丈夫?」

「え? 何が?」

「だって……会いに来てくれなかったから……仕事忙しいんでしょ…?」

「………ぁ」


何かに気づいたようで、バッと距離を取るラファエル。

え……もう終わり……?

………はっ!!

わ、私、なに残念だって思ってるんだろ!

人前で抱きつかれるの本当に嫌だったのに。

………ら、ラファエル不足恐るべし……

こ、恋ってこういう事思ってしまうの普通なのかな…?

………恥ずかしい…


「ごめん。ソフィアに危害を加えた奴らの制裁と説得を先に終わらせないと、ソフィアが安心して暮らせないと思って……」

「………ぁ……」

「ソフィアを後回しにしてごめん……」


地面に片膝をついて申し訳なさそうな顔をして見上げてくるラファエルに、私はキュンとしてしまった。

………ラファエルってなんでこんなに可愛い顔するんだろう……

ホント悔しいやら悲しいやら……

顔遺伝子分けて欲しい…


「あ、ありがとう」

「え?」

「私を思っての行動だったんでしょ? だったら私はラファエルに感謝しなきゃ。私がここでのんびりお茶を飲めるのはラファエルのおかげだもの」


そっか…

だから、ラファエルは私に会いに来る時間がなかったんだ。

だったら、私はラファエルを責められない。

私のために自分の時間全て使って対応してくれてたんだもの。


「ソフィア……愛してるよ」

「ひぇ!? ら、ラファエル!! きゅ、急に言うのやめてよ!!」

「急にって、いつも言葉は急でしょ」

「そ、そうじゃなくて、その……ふ、雰囲気とか……その場の空気とか……」

「………じゃあ、今日のベッドの中でいっぱい言う」

「それもダメ!!」


そんな事されたら眠れない!!

………って…


「………今日、一緒に寝られるの……?」

「うん。漸く彼らとの対話が終わったし、後の処罰はルイスの仕事。俺は休みもらったから、一緒に過ごそう」

「………ホント?」

「ホント」

「そっか…」


今日のベッドは冷たくないんだ…

………良かった…

………良かった?

私は自分の考えを繰り返し、カァッと赤くなったのが分かった。


「ソフィア?」

「な、なんでもないっ」

「………寂しかった?」

「さ…!!」


ラファエルに聞かれて、更に体温が上がったのが分かる。

私、もう真っ赤だろうな……とどこか頭の隅で思った。


「可愛いソフィア」


ギュウッと抱きしめられる。


「ごめんね。俺も寂しかったよ。これから穴埋めするから」

「ほ、程々…で…」

「だぁめ。ソフィアを愛でさせて」

「っ…」


もう!!

久々に会ったらこれなんだから!!

私の心臓がもつかなぁ…?

ラファエルに慣れてきたと思ったら、会えなくなって、久しぶりに会ったらドキドキして、ラファエルを好きだと自覚した頃のような初心に戻った感じがした。


「………で」


急にヒヤリとした、空気が重くなったような感じがした。

冷たいラファエルの声が耳元でする。


「………この男2人はソフィアの何」


………ぁ、私終わったかも。

2人の男の影でさえ、ラファエルが嫉妬したことを思い出した。

どう説明しようかと考えたけれど、誤魔化してはいけないだろう。

ラファエルの拘束がキツくならないようにと、祈った。


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