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第92話 寒い日々




ラファエルをペチンと叩いてから数日。

その間、私の元にラファエルが来ることはなかった。

彼らの処分とかで忙しいのだろうけど…

毎朝潜り込んでくる事もなくなって――

………1日中顔を見せなかったことなんて無かったのに…


「………私、やっちゃったのかな…」


嫌われたのだろうか…

王女として間違ったことは言ってないと思うけど…

………婚約者としては、間違ってたのだろう…

彼の過去に深く入り込みすぎたのかな…

知られたくなかったことを聞いちゃったのかもしれない…


「………はぁ…」


私は深くため息をついた。

気を紛らわせようとして始めた編みぐるみは、全然進んでいなかった。

アマリリスもまだこの王宮の牢に囚われているのに。

さらなる問題が、私のせいで起こってしまった。


「………ねぇ」

「「はい」」

「………私、ここにいない方が……いい…?」

「「………」」


ソファーに後頭部を預け、天井に顔を向けながらポツリと呟いた。

返ってきたのは沈黙。


「………疫病神じゃん……私って……」


私がここにいるから起こっている騒動の数々。


「少し……ラファエルと離れた方が良いのかもしれない………迷惑ばかり…かけてる……」

「本心でそうお思いなら、そうすべきだと思います。ですが、そういう台詞を泣かずに言えたら、です」

「………ぇ……」


ライトに指摘されて、私は自分が泣いていることに気づいた。

………思考と感情は別物……って事ね…

冷静な思考は離れようとし、ラファエルを好きな感情は離れたくないと思っている。

やっぱり、恋愛って難しいんだね。

私はどうしたらいいのだろう…


「俺はよく分からないけど、姫様は婚約者様といると活き活きしてる。サンチェス国に行くなら婚約者様と行くべき。婚約者様がこっちに居るなら、姫様もいた方がいい」

「ま、サンチェス国なら姫は王女としての行いが多くなるので、私的には安心できますが」

「………悪かったわね」

「ですが、姫らしくいられるのは、婚約者様のおかげかと」

「………」


2人の言葉に私は息を吐いた。


「2人で立ち向かわないから悩むのでしょう」

「………ぇ?」

「姫は姫で、婚約者様は婚約者様で。それぞれ解決しようとしすぎかと思いますが?」

「………」

「現在は婚約者様が1人で問題解決しようとしてますよね。姫の介入はさせずに」

「でも、この国の者を裁く権利は私にはないわ」

「ええ。ですが、それとこれとは話が別です。婚約者様がここに来ることがなくなった。まぁ、姫の言葉を考えているのでしょうが、途中報告もないのは如何なものかと思いますけれどね」


ライトの評価は厳しいな…


「というか、姫様寂しがらせてる婚約者様が悪いと思うけどなぁ。顔見せてたら姫様泣かなくて済んだ」

「それは同意します」


2人の言葉に私は恥ずかしくなって、急いで目元を拭って座り直した。


「………で、姫は例の件をお考えになられましたか」

「考える時間はあったからね。………お兄様に連絡を取ります」

「王子にですか?」

「秘密裏に、接触して。で、お兄様のNo.1~No.5までの影寄越してもらう」

「………王子暗殺が成されてしまいますよ」

「無いわね。お兄様が持っている影は50人以上。全員が手練れ。まぁ、全国に諜報活動させていて、常に傍にいるわけじゃないけど、サンチェス国にいるのは20人はくだらないでしょ。その中の腕の立つ5人を寄越して貰えればライトも安心でしょ」


私の言葉にライトの返答はない。


「お父様の耳に入ったら即帰還命令出されるもの。今回の件は私自身に非がある。自分から危険に飛び込んだのだから」

「………自覚がおありなら少しは自重して下さい」

「努力するわ」

「それは聞く気が無い人間の返答ですよ」

「カゲロウ、秘密裏にお願いできる?」

「わかった~」

「………はぁ……」


天井から気配が1人分消えた。

早々に発ってくれるのは助かる。

ライトにはため息つかれたけど。

返答しなかったせいだろう。


「婚約者様の方は如何なさいますか」

「………顔出してくれるまで待ってる。何か考えがあってのことだろうし」

「………分かりました」


少しの間が、私に教えてくれる。

ライトは現在ラファエルが何をしているかを知っている、と。

でも、私は聞く気にはならなかった。

ラファエルの口から聞きたかった。

先に知ってしまうと、ラファエルが来なくても問題ない、と思ってしまう。

王女の私は仕事優先。

そう思ってしまうと分かったから、あえて聞かない。

私自身は、ラファエルに会いたいのだから……

今日は来てくれるのかな…

今日も来ないのかな…

あんなに嫌だったのに……


「……ラファエルが来ないとこんなに部屋が寒く感じるなんて……」


過ごしやすい環境になったにも関わらず、私の体は冷え切ったように冷たかった。


「…もう、冷たいベッドは……嫌だよ……」


私は一向に進まない編みぐるみを、毛糸箱にそっと入れ、パタンと蓋を閉めた。


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