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第09話 彼に想いを打ち明けられました




ラファエルにキスされ、さらに私はラファエルが好きなんだろうという事が明らかになった。

………何故こうなった!?

わ、私、国庫の件をラファエルに知らせようとしてここに来たのに!

なんでこんな事に…

ってか何がどうなってラファエルは私に口づけようって思考になったの!?

私彼がそんなことするような事してないのに!


「ソフィア?」


ラファエルに呼ばれ、私はハッと彼を見上げた。

未だ私は彼に抱きしめられたまま。

ど、どうしたら離してくれるんだろうか…

恥ずかしいんですけど…

真っ赤な顔のままであろう私は、またラファエルから視線を反らした。


「どうしたんだ?」

「………ら、ラファエル様は、意地悪ですわ…」

「距離を取らないように言ったのは、ソフィアだろ?」

「そ、そうですけど……で、でも……く、口づけ……なん…て」

「嫌じゃなかったんだろ?」

「で、でも、こんな所で……」

「じゃあ、帰ったらタップリして良い?」

「……っ」


ラファエルの言葉にさらにカァッと顔が赤くなるのが分かる。

私は選択を誤ったのだろうか?

彼がキス魔だなんて、何処にも設定なかったんですけど!


「ソフィアがいけないんだよ? こんな危ないところに来て俺を心配させて。なのに無防備に俺と距離があるのが気になるなんて言うから。しかも相応しくないだなんて。俺は君が好きだから一緒にいるのに」


………

………あれが!?

あの言葉のせいで彼のスイッチを押したというの!?

嘘でしょ!?

そして何度も好きって言わないで!!

恥ずかしい!!

そんな私をラファエルがそっと解放して、床に自分の上着を脱いで置き、その上に座るように手で促された。

彼の上着を汚してしまう罪悪感があれど、淑女として地べたに座るなどあり得ない。

そっと座った。

そしてその横にラファエルが座る。


「ソフィアには言っておく。俺、育ちが良くないんだ。母は平民で、ずっと俺は下町で育ったから。王宮に…父親に引き取られるまで汚い仕事もした」

「………お母様は…」

「死んだ。過労で。貧乏だったから。母が死んで汚い仕事で日銭を稼いでたけど、そんな生活長くは続かず、俺は死にかけた。そんな時王宮から使いが来た。散々遊ぶだけ遊んで俺が出来たら母を捨てて、今までずっと放っておいて、今更ふざけんなって思った。けど、王宮で父に復讐してやろうと思ったから王子として教養を受けた」

「………」


遠くを見ているラファエルは、当時の光景を思い出しているようだった。


「教育を受けて一人前になった時、父は俺の兄二人が使い物にならなくなった時の為に俺を引き取ったって知った」

「え……」

「兄二人は、周りには優秀だと言われているが、本当は遊びに夢中なろくでなしだったんだ」


私はカゲロウに聞いた話を思い出した。

国庫が空になったのは王族の豪遊のせいだと。

………これか。

物語とは違う評価。

時系列が狂っている理由は分からないけど。


「兄たちは俺に自分たちの行いを押しつけ、必死に自分たちの行いを隠している。ま、それは王宮内だけで、民達は王家全員を憎んでいるけど。俺はあんな王家認めない。民を民だと思っていない王家など、要らない。俺の育った街が、人が、死ぬのは見たくない。母との思い出の場所が失われるなど許せない」

「………そう、だったんですか…」


私は顎に手を付け考える。

ラファエルが王族を助けたいなら、それ相応に立ち回る必要があった。

けど、王も兄も憎んでいるなら、潰してしまってもいい。

母親を愛していたのだろう。

自分を女手一つで育ててくれた母を。

彼には、温かい時間があったのか。

羨ましい。

私は家族に…王と王妃に愛されていなかったから。

純粋に、いいな、と思った。


「ね、俺がソフィアを好きになった所、知りたい?」

「………え…」


突然甘い顔で見つめられた。

立てた足に頬を乗せて。

………くっ。

美形がそんな風な体勢にならないで欲しい!

モデルみたい。

か、格好いいんですけど!!

顔がまた赤くなるから止めて!!

私の意思に反して顔が赤くなっているのだろう。

ラファエルが凄く嬉しそうな笑顔になっている。

く、悔しい…


「前に話した理由もそうだけどね。王女としての立ち振る舞い、自分の立場を分かっている行動、他者を諫める資格を持ってるところ。全部ランドルフ国王家が持っていないものだった」

「そ、それで婚約者にって思ってくれたんですよね?」

「勿論それもあるけど、それだけで俺は婚約者を選ばないよ」

「………ぇ……」

「だって、位の高い者ほど気位が高く、本性を隠す傾向があるから。自分の身内がそうだから慎重になってたし」

「では……なぜ……」


私が首を傾げると、ラファエルは目を細めて微笑んだ。


「授業で城下へ行った事があるだろ?」

「………確か、何日かに分けて1クラス単位で各学年が行く課外授業でしたよね?」

「そう。たまたま俺のクラスとソフィアのクラスが一緒の日になった。で、各自行動って時に、俺は君の後を気づかれないようについて行ってたんだ」

「………ぇ……ま、まさか……」

「そ。君が街に溶け込んで城下を視察していた姿を見たんだ。立ち寄ったのは全て食品を扱っている店。楽しそうに店の人間と話している姿をずっと見てた。…本当に楽しそうだった」


ふわりとラファエルが笑う。

そんな柔らかな笑顔を見せないで欲しい。

無防備な姿を見られていたのを知り、私は恥ずかしくなる。

結構大胆な事をしていた記憶がある。

課外授業は城下の事を知ること。

王女の私は学生視点より、王女視点で街を堂々と視察できる格好の授業だった。

当然街に行くからにはそれ相応の格好で、街に馴染める城下で民が着ている服だった。

だから開放感があった。

私は羽目を外し、王女としてはあり得ない食べ歩きや、喫茶店でデザートを食べられるだけ食べた。

普通に城下娘みたいなマナーもなにもあったものではない行動をしていた。

それを見られていたというのか。

………穴があったら入りたい……

あの時の私のバカ…


「ソフィアは一人で行動してたからな。自分を知る者がいない場所で取る行動こそ、人の本心を見ることが出来る。………君は可愛かった」

「………ぇ」


あ、あれが、可愛かった、の?

ラファエル、目、大丈夫??

この世界に、眼科ない、よね…?

何処に行かせたら良いんだろ…

そんな風に思わず思ってしまった。


「言っただろ? 俺は下町で育った。だから上品な令嬢より、下町の娘みたいな顔が素顔のソフィアに好意を持った。それからずっと見てた。ソフィアだけを」


真っ直ぐに見つめられ、私は見返すことしか出来なかった。


「時間が経つにつれ、俺はソフィアから目が離せなくなった。そして好きなのだと気づいた。君の目に、俺を映したかった」


ならば何故ラファエルは私に声をかけなかったのだろう。

そうすれば私はラファエルと学生の――学園の中でもっと早くに知り合えたのに……


「ソフィアが婚約していない事も調べたから知ってた。でも、俺はあの時ソフィアに声をかけられなかった。食材の宝庫の国で育ったソフィアに、貧困して食に困っている国に来て欲しいなど、言えなかった。だからダンスの時、本当は留学中に伝えたかったって言ったのは嘘なんだ」

「………ぁ……」

「………でも、あのパーティでソフィアを見て……半年も経っていたのに、俺の気持ちは変わっていなかった。………いや、もっと好きになっていた。離れている時間がこれからも続くなど、俺は耐えられないと思った。パーティに行く前までは好きだった君に会えるだけでいいと思っていたのに」

「ラファエル様……」

「ソフィアを苦しめることは分かっていた。こんな国で君は自由に生活できない。でも、俺と一緒にいて欲しいと思ったんだ。それだけだった。それ以外求めてなかった。ソフィアがいてくれるだけで俺はソフィアを守るために走れると思ったんだ」


彼の想いに、私の心臓が押しつぶされるように苦しくなった。

思わず胸元を掴む。


「………ごめん。ソフィアをランドルフ国の問題に巻き込んで。こんな自分勝手な俺でも……傍にいてくれるか?」


あんなに積極的だったラファエルが、不安そうに聞いてくる。

おそらく私の顔色が悪いんだろう。

彼の目には不安そうに見えるのだろうか?

苦しいのは彼の気持ちを聞いて胸が押しつぶされそうな程、彼と共にいたいという私の気持ちが大きくて、その大きさに息苦しくなったから。

こんな売れ残りの私のことを、誰にも愛されないと思っていた私を、こんな風に思ってくれていた彼が……


――愛おしい。


私は今、自覚した。

彼の優しさは、彼の想いは、私を惹きつけていた。

ラファエルは私をまんまと恋に落としたのだ。

結婚はラファエルを愛してからしたい。

そう言っていたあの時の私に、言ってあげたい。

貴女が恋に落ちるのは、すぐだよ、と。


私は安心させようと、微笑んだ。


「むしろ良かったです」

「………ぇ」

「本心を話してくださった。私に隠し通すことだって出来たはず。でも、ラファエル様はきちんと話してくださった」

「ソフィア……」

「でも、私籠の中の鳥は嫌ですわ」

「籠…?」

「一人であの豪華な庭が見える部屋に取り残されて、ラファエル様だけが危険なところにいるなど、心配で死んでしまいます」


私の言葉にラファエルが目を見開く。


「心配………?」

「しますわ。この二週間、心配で眠れませんでしたわ。便りもありませんでしたし」

「それは……」


私を心配させないようにしていたのだろう。

でなければ、状況が分かっても知らせない理由がない。

でも、それが逆に私は不安だった。

便りがないのは元気な証拠っていう日本での言葉は、この世界にない。

何かあったのではと、ヒヤヒヤしていた。


「私を深窓の令嬢にしないでくださいませ。私はこれでも、サンチェス王宮ではお転婆と言われていたのです」

「ソフィアが?」

「はい。よく王宮や国で逃亡劇をしておりました。情報収集は得意なのです!」


胸を張って言えば、ラファエルが唖然とした後、吹き出した。


「ま、失礼ですわ!」

「ご、ごめん…くくっ」


顔を背けて笑うラファエルに頬を膨らませる。


「さ、集めた情報をお話しくださいませ! 二人で一緒にランドルフ国を立て直しますわよ!」

「ああ。ソフィア、愛している」

「ふぁっ!? ちょ、ラファエル様! そ、そんな事今言わないで下さいませ!」


これから国を立て直そうと真面目な話をしようとしているところに、ラファエルは私の耳に唇を近づけ愛を囁く。

顔が赤くなるから止めてってば~!

むくれるとラファエルがキスしてくる。

だ、だから!

シリアスな雰囲気を作らせてよー!


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