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第87話 本当の目的は




パクパクモグモグ

ラファエルの昔の仲間と思わしき男、ナルサスとそのお仲間に地下に閉じ込められて早3日。

私は衰弱していた――

ということは一切無く。

ライトが食べ物を調達してくれ、手は縛られているので食べさせて貰いながら、割と呑気に過ごしていた。

誰かが近づいてくるとかの気配読みはライトに任せっきり。

私が探るより上手いしね。

本当に彼らは私に食事を運んでこなかった。

そろそろ様子見に来るかしら。

食事だけではなく、今まで誰も見に来なかった。

人質は生きていてこそなのに。

ラファエルが条件を万が一全て叶えたとき、私がいなかったら命無いだろうに。

………まぁ、私より付き合い長い人達だし、ラファエルが条件を呑むとは思ってないのかもしれない。

だから、私が死んでも良いと思っているんだろうな。

美女なら蹂躙するだろうけれど。

あらためて、美女じゃなくて良かったと思う。

ラファエルに対しての人質としては効力があっても、彼らにとっての私には何の価値もないものね。

せいぜい私を売って一時的な金品を得ることは出来るだろうけれど。

焼け石に水だろうし。

ライトに探ってもらったけど、ここには計20人ほどいるらしい。

結構多いのね。

で、主な収入源は、兄王子達がいたときに食べ物を横流しさせるために、王宮事情で脅していた。

そして自分たちが女で遊んで、死んだときに後始末をさせ、国境からは審査もなく出入り自由にしてもらっていたとか。

典型的だな…

人身売買もしてたそうだし…

ラファエルの過去には興味は無かったけど、こういう組織との縁があったって知ってしまうと、ラファエルはどうしてたんだろうって気になってしまうな…

彼らに過去をバラされて、民達へ影響なかったら良いんだけど…

………まぁ、あること無いことは拡散される可能性がある。

ラファエルのしてきた事が、民達の心に届いていたら疑心暗鬼にはならないだろうけど…


「………姫、誰か来ます」

「分かった」


ライトが食べ物持ち込みの痕跡を消し、天井に消えた。

その数秒後、部屋の鍵を開ける音がし、ゆっくりと開いていった。

立っていたのは、ナルサス。

1人のようだ。


「………可笑しいな」


私を見た瞬間に言われたのはそれだった。


「………何か?」

「一切食してない者が、3日前とまったく同じ様な様子が可笑しいっつってんだよ。なんで倒れていない。餓死しそうじゃないんだ」

「私はラファエルが来るまで、見た目が変わるわけにはいかないのよ」

「………気持ちでどうにかなるものじゃないだろう。何をした」

「何も」

「嘘をつくな」

「いっ…!?」


ナルサスに首を鷲掴みされ、壁に押しつけられた。

苦しいより、背中が痛い。


「………けほっ……危害を、加えない…んじゃ、なかった、の」

「お前、何者だ」

「お、あいにく、さま……わ、たしは……ラン、ドルフ…国……民……じゃ、ない、のよ……」


後ろ手に縛られているから、壁に擦りつけられている背は勿論、腕も痛い。

それに腕の感覚が麻痺していく。


「体、の……作り、が……違う、のよ」


ライトに持ってきてもらってることは言えない。

ハッタリでも何でも、時間を稼がなきゃ。

ラファエルは絶対に来てくれるもの。

私が屈することなど、あってはならないもの!


「クソが!」

「うわっ!?」


ナルサスに投げ飛ばされた。

固い床に体が叩きつけられる。

体中が痛い。

なにより、舌噛んだ……

ヌルリとしたものが口から顎に伝う感覚がする。

………もう!!

せっかく少しでも穏便に済まそうとして、傷付けないようにしてたのに!!

台無しじゃない!!


「痛っ……」


少しでも体を動かすと痛い。


「ホントに生意気な女だ! 何故お前なんかがラファエルに溺愛されている? ラファエルは優秀で男前なんだ。お前なんかが相手にされている自体が可笑しいんだ!」

「………」

「………死ねばいいのに」


………ぁぁ、そういう事か。

彼は条件がどうのこうの言ってたけど、仲間はともかく、ナルサスの本当の目的は別にあったんだ。

ラファエルと私を離して、私を消そうとしていたんだ。

………勘弁してよ…

どうしてラファエルは男にもモテるわけ…?

男女共に私は嫌われる運命なのかしら。

ラファエル人気、程々にして欲しい。

私にとってのラファエルは、嫉妬深くて、心配性で、私に嫌われることを恐れている、ただの男の子って感じなんだけれど…

他の人には、優秀で、頼りがいがあって、なによりイケメンで、完璧な男って感じに映ってるんだろうな…


「………じゃあ殺さないのは何故」

「………!」


これを聞いてしまえば、私の命が危ないかもしれない。

………でも、彼の本当の気持ちを引き出さなければ。

ラファエルが好きなら、このやり方はダメ。

それに…ラファエルが友人を失う事になる。

私のせいで。

私を優先し、彼らの友情が壊れたのなら、私が修復しないと。

私がラファエルから大切なものを奪うわけにはいかない。

ラファエルが、大切だから。


「………餓死なんかより、よっぽど確実でしょ。それをしないのは何故。死ねばいいと思っているなら、さっさとその腰のものを私に刺せばいいじゃない」

「黙れ!」

「ぐっ!」


またナルサスに首を絞められる。

軽くだけれど。

多分、死ぬ恐怖を与えたかったんだろう。

馬乗りになられて身動きが取れない。

元々痛みで動けないけど。


「本当は、羨ましかったんでしょ。ラファエルだけが贅沢な暮らしをし、この場所に寄りつかなくなった。仲が良かったはずなのに彼が自分に見向きもしなくなったから」

「黙れと言っている!」

「いいえ、黙らない。こんな事をしてもラファエルが貴方に目を向けるなんてあり得ないわ! 彼に会いたかったなら、また話したかったのなら、王宮に堂々と面会を申し出たら良かったじゃない! 酒場に行ったとき話せば良かったじゃない! 話すことを諦め、こんな事したら嫌われるに――うぁっ!」


本格的に首を絞められ始めた。

ヤバイ…

苦しい…


「黙れ!! ラファエルの寵愛を受けているからといって調子に乗りやがって! お前のせいでラファエルは変わった! 俺といた時はバカ騒ぎして楽しかったのに、王宮に引き取られて成長し、サンチェス国でお前に恋したときから、息抜きに来ていた外出も頻繁ではなくなった! 婚約してからは俺と話すことなくさっさと王宮に帰る! 俺の友を奪いやがって!」

「――っ!」


首を動かして手を外させようとするけれど、彼の大きな手と私の細首では違いすぎる。


「美女なら、俺が納得する女なら許せた! でもお前は醜い上に口が悪い!」


悪かったわねっ!!

大きなお世話よ!!


「ラファエルが溺愛する要素は何処にも見当たらない! 俺がラファエルの目を覚まさせてやる! お前は用済みなんだ!!」


あ…もう、無理…

ギリギリとナルサスの指が、首に食い込み苦しさに加えて痛みが…

そしてその痛みさえ感じなくなっていく…

すぅっと意識が遠のくのを、何処か他人事のように思っていた。




「………そうか。ならば、俺がお前のことを亡き者にしてやるよ。ソフィアから手を離せ」




幻聴だろうか…

ラファエルの声が――

だ、め……

友を……殺め…ない、で……

私の意識はそこまでだった。


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