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第83話 彼の時間は




「げほっ…」


私がラファエルに抱きしめられている間、彼の知り合いは解放されて咳き込んでいた。

ラファエル、心配してあげないと!

ラファエルの背をトントンと叩くけど、ラファエルは一向に私を離さない。


「けほっ……話が違うじゃねぇか。お前、婚約して穏やかになったって聞いたんだが?」

「ぁぁ、ソフィアは本当に可愛いなぁ」

「………おい」

「やっぱりデートして良かった。明日もデートしようか?」

「………こら、ラファエル!」

「でも、ソフィアとの約束の物作らないといけないし」

「無視するな!!」


徹底的に無視されるラファエルの友人が哀れに見える…


「あ、の……ラファエル? ご友人の方が……」

「ダメだよソフィア。俺以外の男を見たら」


チラッと視線で指しただけなんですけど…

クイッとまた顎を取られる。

いやだから、無視してるからこの場から余計に離れられないんですけど…

恥ずかしいから早く移動したい!!


「み、見ないから。だからご友人とちゃんとお話を…」

「え? 俺の友人ってここにはいないけど?」

「へ?」

「おいこらラファエル!」

「ソフィアを悪く言う友人なんて俺にはいないから。早く次の場所に行こうか?」

「次……?」

「そう。ソフィアとデートの最後には連れていきたい所があったんだ」

「行くところ決めてなかったんじゃ……」

「最後は決めてたんだ」


楽しそうに笑うラファエルにこちらもつられて笑ってしまう。


「悪かったって! だから俺を無視するな!!」

「さぁ、ソフィア。行こうか」

「ぇ……」

「ラファエル!!」


無視して歩き出そうとするラファエルの肩を、男が掴む。


「………ぁ゛?」


ギロリとラファエルが男を睨みつけた。

………喧嘩上級者のメンチ切り……

初めて見るラファエルの悪い目付き。

こういうのを見ると、ラファエルが昔悪い事してたって言われて納得できるよね。

今までは口調だけだったから。


「お前の女を貶して悪かったよ」

「はっ。ここで口で謝ったとしても陰で馬鹿にするんだろうが。誰がそんなヤツと話すかよ」

「ちょっ、待てよ!」

「待つか。二度と俺に――俺の女に近づくんじゃねぇよ。クズ」


そ、そこまで言うの!?

どれだけラファエルは私を優先するの!?


「ラファエル、私は言われ慣れてるから。だから許してあげて…」

「どうして許すんだ!! もっとソフィアは怒れ! ソフィアは可愛いんだから! ちゃんと他の男に言えよ! お前は俺の宝物なんだよ!」

「はい……すみません……」


何故私が怒られるのだろうか…


「婚約者を溺愛って、本当だったのかよ……」

「悪いのか。俺の全てを受け入れ、包み込んでくれる女なんだよ。ソフィア以外に考えられない。だからソフィアを悪く言うヤツは皆俺の敵だ」


こんなシリアスな場面で思うことじゃないと思うんだけど、包み込んでくれるって……いつ私がラファエルにそういう事をしたのだろうか…

まさかとは思うけど、勝手にベッドに忍び込んでくる事を指してるんじゃないでしょうね…?

それだったら私、穴があったら入りたくなるよ…?


「悪かったよ。俺とバカやってたお前が王子だったり、婚約して幸せそうだって聞いたから、羨ましくなってな」

「存分に羨ましく思ってろ。俺はソフィアを愛でるので忙しいんだよ。お前に怒っている時間も惜しいんだ。とっとと消えろ」


………何言っちゃってんの!?


「はいはい。また時間があったらあの場所に来いよ」

「行かねぇ。そんな時間あるわけないだろ。俺は仕事以外はソフィアとの時間なんだ。生涯の予定なんだからな」


………もう無理!!

顔がもう茹で蛸状態になっていると思う。

私は俯いて二人の話を聞いているしかなかった。


「じゃあ婚約者サマも一緒でいいからよ」

「ソフィアをあんな所に行かせられるわけないだろ。もうお前黙って去れ」

「冷てぇなお前。そういう所変わらないな。………まぁいいや。じゃあな」


諦めたのか、男は去って行った。


「………ラファエル、いいの? 私に気を使わなくても、ご友人に会いたいときは行ってもいいんだよ?」

「ソフィア……」


感謝されると思ったら、絶望的な顔を向けられた。

………ぁ、選択間違ったんだ。


「そんなに俺といるの嫌……?」

「ご、ごめんなさい。ラファエルはずっと私といてくれるから申し訳なくて…自由な時間を過ごしてくれたらいいと思ったの。ラファエルと一緒にいられて、私はとても嬉しいのだけど、ラファエルは違うなら言っておかないとと思って……」

「ソフィア………なんてソフィアは優しいんだ! 大丈夫だよ。俺もソフィアと一緒にいられて嬉しいんだから。だから、もっと俺の時間を欲しがって」

「うん、ありがとう」


ラファエルが笑ってくれ、私はホッとする。

せっかくのデートなんだし、笑って終わりたいしね。


「じゃあ行こうかソフィア。気に入ってくれるといいんだけどね」

「うん。ここから近いの?」

「馬車で行くからそう時間はかからないけど、疲れた?」

「ううん。大丈夫だよ」


私は首を横に振り、ラファエルに手を引かれながら城下街から離れた。


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