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第82話 旧友との語らいにご注意を




「土台となる輪の素材は?」

「普通は金とかプラチナとか」

「………プラチナ?」

「あ……金で良いと思うよ。でも高いだろうし、銀でも…」


指輪の具体的な内容を話ながら歩く。

のんびりした足取りは、自分の事ながら微笑ましく思える。

こんなに楽しい時間を過ごしてて良いのかしら……?


「銀は嫌だな。ソフィアに似合わないし」

「………ぁ、そぅ…」


我が儘言ってと言われて、ラファエルの作った指輪がいいと言った手前、材料も何もかも口出しするのははばかられた。

全てお任せしよう…


「他に何か欲しいものないの?」

「この腕輪も買ってくれたし、今のところは指輪以外ないかな…?」

「相変わらずソフィアは物欲ないなぁ…」

「指輪は私の前の世界でも高価な物だったんだよ…? 貴族の買い物、って感じで」

「へぇ。でも俺が作るし、高くなる物でもないよ」

「………宝石次第、でしょ?」

「それはどうとでもなるよ。大きさにもよるし。ソフィアの手の細さに合う輪を作るとなると、小さい物になるし」


ラファエルはそう言うけど、こういう物に関して私の想像している大きさより大きくなる場合がある。

気にしておかないと……

まぁ、ラファエルの懐も潤っていると思うし。

大丈夫、かな…


「作ったらずっと付けててくれる?」

「え? うん…そのつもりだけど…?」

「ちゃんと付けててね? 付けてないところ見ると俺、泣くから」

「………」


これは、うっかり指輪が抜けたりしてもそうなりそう…

外す予定もないけど、指輪が大きければスポッと取れてしまう。

ラファエルの事だから、どうせピッタリの物を作れるだろうけど。


「………泣くの?」

「泣くよ」

「………なんで?」

「俺を嫌いになったのか、って。何でもするから行かないでくれ、って縋りつくと思うよ」

「………逆にラファエルが外してたら、それを私が言って良いの?」

「それは無いよ。俺が外すことないから」


自信満々に言われ、私は困った顔で微笑むしかなかった。


「別人が後ろで言葉を発していたのかと思ったぞ」

「……? あ、ナルサスじゃないか」


ラファエルの横から話しかけてきた男がいた。

長身で、ラファエルとそんなに背は変わらない。

この人もラファエルに負けず劣らずイケメンだった。

金よりかはオレンジに近い髪。

長髪で後ろで一つに纏め、右肩にかけている。

服装は貴族のようだけれど、立ち姿を見る限り平民だろう。

贅沢な暮らしを出来る平民は滅多にいない。

いるとしたら、裏の仕事をしている人間。

ラファエルとの知り合いなら、昔の仲間、といったところだろうか。

後方の騎士達が走り寄ってこようとするのを、ラファエルが手で止める。


「よぉラファエル。随分と貧相な女連れてるな」


ラファエルの知り合いらしいと判断した私は、笑顔を作ったがヒクッと頬が引きつった。

悪かったわね!!

自覚しているわよ!!

そんなハッキリ言わないでくれる!?

女に言われるならともかく、男に言われたらヘコむんだって!!


「何を言っている。この世の誰よりも可愛いだろうが」

「え…」


………ラファエル、流石にそれは無い。

あり得ないから…

卑屈になっているんじゃなくて、事実だから…

見た目は普通だから。

下ではないけど、上でもないから。

中なんだって…

相手固まってるじゃない…


「お前趣味わりぃな。お前の女の好みこれだったのか。だからあんなにイイ女達に目もくれなかったのか?」

「ホントお前失礼だな。あいつらより断然ソフィアだろ。香水の匂がキツい女や厚化粧している女のどこがイイ女なんだよ」

「顔がイイなら連れて歩くときも恥ずかしくないだろ。お前、そんな女連れてて恥ずかしくねぇのか?」


………うん、男にストレートに言われたらホントにヘコむ…

気にしないようにしてたけど、やっぱりラファエルは私の歩くのは恥ずかしいのかもしれない。

男を真っ直ぐに見られず、私は微笑みを浮かべていたけれど、視線を下へ落としてしまう。

でも、笑顔だけは絶やさずにいないと…


「………ナルサス。黙れ」


突然ラファエルが男の胸ぐらを掴み、低い声で言った。


「ラファ――」

「俺の女を侮辱するなら、たとえお前でも許さない」


止めようとしたけれど、ラファエルの言葉に私は固まってしまう。

嬉しさで。

でも、これはダメだ。

人目がある。

王子が民に手を出したなんて広まったら、ラファエルの不利になる。


「ラファエル! ダメよ!」


私はラファエルに握られていない右手で、ラファエルの左手を掴む。


「ソフィア、離せ」

「ダメ! ラファエルが離して! 暴力はダメ!」

「ソフィアを侮辱したんだぞ!?」

「気にしてないから! 離しなさい!!」

「嫌だ!」

「嫌だじゃない!」


ラファエルと言い合っている間にも、男の首を絞めているらしく、苦しげな顔をしている男。

大事になる前になんとか手を離させないと!


「離さないなら、嫌いになるよ!」

「はい」


私が言うと、ラファエルがパッと手を離した。

………ぇ…

そ、そんなあっさり…


「………まだ嫌いになってない…?」

「ぇ……ぁ、うん……大丈夫、だよ……」

「良かった……」


本当に安心したように息をはくラファエル。

………そ、そんなに嫌なんだ……

これはそれだけ私を好いてくれているって…自惚れて良いんだよね…?

ぅわ……顔が熱くなっていくのが分かって、顔を俯かせる。

絶対に顔赤くなっている。

こんな顔、民に見せられないっ!


「………ぇ、ソフィア!? ほ、本当に嫌いになってない!?」

「な、なってない、からっ」

「じゃあなんで顔反らすの!? ごめん、もうしないから!! 嫌いになってないなら俺を見てよ。不安になる」

「ちょっ…」


ラファエルに顎を取られ、顔を上げられる。

真っ赤になっているだろう私を見ないでっ!


「ソフィア……可愛い!」


そうなるよね!?

往来の場所で抱きしめないで!!

焦っている私にお構いなしで抱きしめてくるラファエルに、私は困ってしまった。


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