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第81話 お互いを知る時間




露店の女の子からブレスレットを購入して、また街を歩き出す。

相変わらず手は繋いだまま。

しかも自分の目の色に似てるから嬉しいのか、さっきまで私の右手を取ってたのに、今は左手を取っている。


「城下にはもう雪はないね」

「うん。過ごしやすい気温になって、民にも笑顔が戻ってきてるからね。あの状態の国に寒さで心まで凍り付いてたから」


嬉しそうに街を眺めるラファエルに、私も嬉しくなる。

私のアイデアでラファエルの助けになった、民の助けになったことがなにより嬉しかった。


「そういえば、ラファエルは酒場に行くの? 出入りしたらダメな歳でしょ?」

「ああ、もう今更かな? 小さいときから出入りしてたから。酒も来客があれば付き合いで飲まないといけないし。こういうのは暗黙の了解かな」

「そっか」


日本の法律みたいにきっちりした国法はないから、成人までは大っぴらに飲まないというなんとなくのルールみたいなものだしね。


「あ、でもソフィアは行っちゃダメだよ」

「分かってるよ。王女がそんなところに行けないし」

「そうじゃなくて、酔っ払いに絡まれるでしょ」

「………あ、そういう…」


そっちなんだね…


「他の男に触られるとかムカつくから」

「………私だって、ラファエルが女の人に触れられてたら、……嫌…だよ」


ボソッと呟いた。

普通にいうのは躊躇われた。

だって、嫉妬なんて……私が言ったらなんだかみっともない気がして……

ラファエルがストレートに出してくれてるから、私が出しても咎められることはないだろうけど。

でも……みっともない以前に、恥ずかしい…し…

そんな事を思っていると、ピタッとラファエルが立ち止まった。

私も2・3歩歩いて止まった。

不思議に思ってラファエルを見ると、目を見開いて凝視されていた。


「………ぇ、何…?」

「………ソフィアが…」

「………私?」

「ソフィアが嫉妬してくれた!?」

「へ!?」


訳が分からなくて固まっていると、思いっきり抱きしめられた。

ちょ、ここ公共の場だから!!

人目あるから!!

いきなり何!?


「やべっ! 超嬉しいんだけど!!」

「な、何が!?」

「ソフィアが嫉妬してくれたのって初めてだろ!?」

「!!」


ラファエルの言葉に、顔が熱くなる。

き、聞こえてたのね!?


「もっと聞かせてよ。何をされたら嫌だとか、もっと我が儘も! 俺、何でも聞くよ?」

「そ、そんな事言えないっ!」


恥ずかしくて言えないし!

我が儘も悪い気がするし!


「なんで? 俺はいっぱい言ってるでしょ。ソフィアも俺に要求すれば良いんだよ。だって、恋人でしょ」

「っ…!」


………ホント、ズルい…

そんな事言われたら、断れないじゃない…


「ソフィアが言った我が儘って、俺に時間が出来たら会いに来て欲しいってだけでしょ。もっと何か要求して欲しいな」

「………要求して欲しいんだ…」

「うん。それが愛されてるって感じする」

「うっ……」


綺麗な笑顔で微笑まれました…

眩しいっ!


「さぁ、ソフィア。俺に会いに来て欲しいのと、他の女に触られないようにする事。他には?」

「………」


そんなにハッキリ言わないでくれるかな!?

恥ずかしいんですけど!!

嫉妬なんて口に出すんじゃなかった!


「あ、因みに買って欲しいは我が儘に入らないからね。ソフィア拒否するから最小限の贈り物で我慢してるけど、解禁になったらいっぱい“俺が”贈りたいから」

「………それ、拒否権は?」

「あるわけないでしょ」

「………ですよね…」


俺が、を強調するラファエルに苦笑する。


「………じゃあ……新しい甘味は私が一番最初に試食する、って事で…」

「それ、前に約束したでしょ。我が儘に入らないよ」

「ぅぅ……」


以前の記憶から出してきた事は、拒否されました……

必死で思い出したのに……


「温泉出来たら一番に入る、手芸店を作る、リメイク店を作るも入りませーん」

「先越された!!」


次に言おうとしたことをラファエルに先に言われてしまった。

………もう、私をどうしたいのだろうか……

こうなったら……


「………じゃあ、オーダーメイドの装飾品を作って欲しい。ラファエルの手で」

「俺が作った装飾品? 別に構わないけど、何?」

「何か書く物ある?」

「あるよ」


ラファエルに解放される。

………はぁ、心臓に悪い…

はい、と渡された紙とペン。

私は紙に円を描く。

そしてもう一つ円に重なるように小さな円を描く。

大きな円の内側に、RtoSの文字を書いてラファエルに手渡した。


「これは?」

「私(前世)には当たり前の装飾品。婚約した男女、結婚した男女はそれぞれ同じリングを左指の薬指に付けるの。婚約指輪、結婚指輪と言って2人の仲を証明する物なの」


この世界にはお揃い、という概念がない。

だからお揃いの物を買うということもないし、勿論指輪なんて物もない。

私の前世での憧れでもあった。


「小さい円は宝石。同じ宝石でも良いし、互いを表すような色の宝石でも良い。文字は……ラファエルからソフィアへ……っていう意味……」


文字の説明をする時、俯いてしまった。

顔が真っ赤になっている自覚があるから。


「………」

「………ラファエル……?」


無言のラファエルに私は不安になって、ソッと見上げてみる。

と…


「………ぁ…」


ラファエルが顔を真っ赤にして口を手で覆っていた。


「~~~ほんと、ソフィアって不意打ちだよね」

「な、なんで……」

「これ絶対に、早急に作る! 勿論、俺のユビワにはStoRって掘っていいんでしょ?」

「っ!」


ハッキリ言われて私はまた顔を俯かせた。


「ソフィア? 良いんだよね?」


繰り返し聞かないで!!

恥ずかしいから!!

私は迷ったけれど、コクンと頷くことで了承した。

そうしないといつまでも続きそうだったから。

普通は男性から女性へでtoなんだけど…

女性から男性へもtoで良いのかな…?

…まぁ指輪がない世界だからいっか。


「そういう物があるなら早く言ってよ。これでソフィアは俺のモノだって分からせられるって事でしょ」

「で、でも、そういう風習はないし……」

「揃いを付けてたら俺とソフィアの仲が目に見えるって事でしょ?」

「ぅぅっ……」


だからハッキリ言わないでってば!!


「宝石は何が良いかな?」

「………ら、ラファエルが好きなので良いよ……」

「ホントに良いの?」

「………ぇ?」

「ワインレッドの物にするよ?」

「………ぁっ!!」


ラファエルの瞳の色と同じにすると暗に言われ、私は心臓の音を必死で抑える。

けど……ラファエルがいないときにラファエルと同じ色を見られるって事だよね……?


「ブラックより、ワインレッドの方がソフィアに似合うしね」


スッと髪を掻き上げられる。

私の耳にはラファエルに貰ったピアスが揺れている。

………付けてたの気づいてたのね…

ピアスも赤だしね…

段々ラファエルの色に染められている気がする。

でも…


「………いい、よ……ワインレッドで…」

「分かった。じゃあルビーとか――」


ラファエルは嬉しそうに微笑みながら私の手を取り、また歩き出した。

ちょっとした無理だろうと思っていた我が儘は、ラファエルにはなんて事なかったようで。

でも、ラファエルと指輪を付けられると思ったら、私も自然と微笑んでいた。


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