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第740話 情報収集は大切です ―S side―




ガタゴトと揺れる荷馬車の中。

わたくしは手足を縛られ、荷馬車の中に転がされていました。

こうなる前は……


姫様の花壇を荒らしただろう人物を捕らえようとした。

けれど、捕らえようと集中していたためか、後ろから近づいてきている人物の気配に気付かなかった。

不覚……

最初身体を押さえつけられ、薬のようなものを染み込ませた布に鼻と口を覆われたけれど、わたくしにそんなものは効かない。

精霊ですから。

いつまで経っても昏倒しないわたくしに痺れを切らした者達は、わたくしの首に手刀を当てた。

さすがに抗えなかったわたくしが意識を失い、次に目を覚ませばこの状態だった。


何とか外の気配を伺おうとするも、荷馬車なので窓がない。


……何処へ向かっているのでしょうか。


周りにいるかもしれない精霊達に頭の中で話しかけてみる。

すると意外にも多くの精霊達が周りを囲んでいるようで、すぐに火山のある方向へ向かっているということが分かった。


すぐに姫様に連絡を入れようと思いましたが、また無茶をされても困ります。

ヒューバートからわたくしがいなくなったことが知れるだろうけれど、彼が姫様を引き留めておいてくれることを祈ります。

これ以上姫様が無茶をして、ラファエル様の堪忍袋の緒が切れては、それも困りますから。

わたくしは姫様の侍女でしかない。

侍女のことで姫様が動くことはないのです。


「――っ」


風の力を使って、手足の拘束を解く。

ズキッと痛んだ気がしましたけれど、気にしない方向でいきます。

口を塞いでいた布も解く。

そしてボソボソと聞こえてくる声の方へと向かった。

ピタッと壁に耳を当てる。

よほど厚い壁なのか、わたくしの耳でも聞き取りにくかったから。


『どうすんだよ。余計な荷物を』

『仕方ねぇだろ。あそこで放っておいたらさすがにヤバい』

『まぁ、あの王女の侍女だって言ってたしな』


………わたくしのことを知っている人物……


『あの女の言葉が本当だったらな』


声が4人分。

あの男1人だけじゃなかったようです。

すぐ向こうが御者台なのでしょう

それにしても、あの女、とは……


『侍女なら捨て置かれるんじゃねぇか?』


………いいえ。


『ないだろ。あの王女、自分の侍女大事にしてるらしいぜ』


………そうです。


『へぇ。なら、交渉に使えるな』


悔しいですが、誘拐犯の思惑通りになるでしょう。

勿論、今のままだったら、ですが。


『とっとと殺さなくて良かっただろ。どうせ着くまでは寝てるだろうし、向こうで木にでも縛り付けとくか』


………あいにく起きてますが。


『ってか、味見していいか?』


………なんの味見ですか。


『ああ、結構良い身体してたな』

『お前拘束する前に結構色んなとこ触ってたろ』


………ぇ……気持ち悪い。

背筋に悪寒が走りました。

解決したら、速攻でお風呂に入る!


『へへっ! 胸が手からはみ出してたぜ!』

『くっそ! 羨ましいなおい!』


………絶対シメる!!

はっ!

い、いけません…

姫様の口調がつい…


『そういやあの女どうした?』

『Aに引き渡しておいたぜ。自分は仕事したからヤク寄越せって煩かったからな』


………A?

コードネームみたいなものでしょうか…?


『えっぐ! Aに渡ったら最後、使えなくなるまで壊されるぜ?』

『いいんじゃね? 貧相な身体だったが、Aは雑食だし。使えりゃ何でもいいだろ』


………あの女性……一瞬見ただけですが…

見覚えあるような気がしますが、どこで見たのか…

でもヒントはあの時の会話で……

握った手の中で、思わず人差し指を噛む。

………確か、ヒューバート絡みみたいでしたから――――スティーヴン・クラークの姉、でしょうね。

コツン…と静かに壁に頭を当てた。

………ぁぁ……またヒューバートが自分を責めてしまいますね……

わたくしはそっと目を閉じた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 王族ゆえに生まれながら立場故に歪まざるおえなかった人達がその歪んだ感性で色んな人たちと接して補いトゲが擦れて丸くなっていくような人間関係の話が楽しい あと溺愛っぷりの甘々感も徐々に関係が変…
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