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第69話 お揃いの物




「ソフィアの人形が欲しい」

「不可能だから」


ルイスが報告に来た日の夜。

ベッドに入って横になろうとした時だった。

ぬっと後ろから手が出てきて、私の目の前にあの不細工猫が。

やはりルイスが攫って行っていたのだと確信する。

そしてそのままラファエルに言われた言葉が冒頭の言葉で。


「どうして?」

「その猫見て分からない? 簡単な動物でさえその有様だし。自分の人形なんて作れないわよ物理的に」


動物だから簡単なのであり、人間など以ての外。

その動物でさえその出来なのに。


「ソフィアの人形があれば一日頑張れるのに……」


本当に残念そうな声で言われ、そのままどさくさに紛れて私を後ろから包み込んでベッドに座るラファエル。

背はクッションのような大きい枕で支えてくれているから、ラファエルの負担にはならないだろうけど…


「仕事中に余計な物を周りに置かない」

「はぁい。でもこの猫可愛いね」

「………何処がよ…」

「え? 可愛く思ってないの?」

「失敗作だよ。後に作った猫たちの方が断然上手くいったよ」

「え、見たい」


ラファエルがそう言うので、ベッドから離れようとしたけれど離れられない。


「ちょっ……持って来れないよ?」

「後で良いよ。今はソフィアを堪能する時間だから」


………珍しく起きているときに仕事を終わらせ、ここに来たと思ったら…


「甘えてるの?」

「うん。起きているソフィアに会うのは久しぶりだから」

「………毎朝会ってるんですけど…」

「寝る前の可愛い夜着着ているソフィアが起きていて、俺を相手してくれるのは久しぶりでしょ」


ハッと私は自分を見下ろした。

露出が控えめな夜着は、露出が多いサンチェス国用の夜着より断然着易いんだけど…!

カァッと久しぶりに顔が真っ赤になる感覚がした。

鏡を見なくても分かる。

バッと両腕で隠そうと思ったけど、ラファエルに不意に持ち上げられてクルッといとも簡単に向かい合わせにさせられた。


「ちょっ!?」

「顔真っ赤にするソフィア久しぶり」


上機嫌で私の両頬に手を這わせて、ニッコリ微笑むラファエル。

くそぉ!!

面白がってる!!


「可愛い」


頬に口づけされる。


「ら、ラファエル!! 止めて!」

「やだ。イチャつこう? 最近ソフィアの可愛い反応見れなくて俺不満だよ」

「ぐっ……」


た、確かにラファエルは仕事が忙しくなってたし。

私もラファエルに会うの控えてたし。

で、でも…

この体勢はいただけない!!


「わ、分かったから! とにかく離して!!」

「やだよ。ソフィア段々俺に慣れてきたからかな? 恥ずかしがらない。頬を可愛く染めてくれない。俺は可愛いソフィアが見たい。だから色々考えないといけないんだよ」


………もしもし?

ラファエルさん、ちゃんと仕事してます??

私は不安になったけれども…

今は私の方が大変です!

どうやってラファエルを寝かせようか!?

私の顔は見なくて良いから!

私を恥ずかしがらせようとしなくて良いから!!


「ラファエル疲れてるでしょ! 寝なきゃ!!」

「まだソフィアとイチャつくって言ってるだろ。口塞がれる方が良いのか?」


不意にブラックになるの止めて!!

思わずバッと口を手で塞いでしまった。

な、何がラファエルのスイッチを切り替えたのだろうか…

ドキドキしながらラファエルの次の言葉を待つ。

こういう時は言葉を紡がない方がいい。

何がきっかけで要求が来るか分からないから。


「そう、大人しくしてろ」


ラファエルの顔が近づいてきたと思ったら耳元で囁かれ、ビクッとしてしまう。

手が離されたと思ったら耳たぶに触れられる。

ひやぁ!?

なになになになに!?

混乱していると、チャラッという音が聞こえてきた。

………え?


「………ん~……やっぱり赤が似合うなソフィアは」


髪を掻き上げられ、何かを見られてる…?

………もしかして…


「耳飾り…?」

「そう。ソフィア耳に穴開けてたでしょ。だから好きなのかなって思って」


………私の耳に穴が開いてる事、いつ見たのよ…

人体に穴を開ける行為自体が敬遠されている中、私は前世の記憶を取り戻してランドルフ国に来たときに隙を見て開けた。

いつかピアス作れたら良いなと思いながら。

密かに手芸店でもピアスの材料になりそうな物も買ってある。

でも、常に髪で耳は隠しているし、パーティの時は髪をアップにするけど、耳飾りを付けるしイヤリングみたいな物で穴は隠れる。


「す、きだけど…」


ラファエルは引かないんだ…

王女のクセに傷を自分で付けるなんて非常識すぎる、と言われると思っていた。


「なら良かった」


笑顔のラファエルに軽蔑の感情は一切見えない。

ホッとすると同時に、ラファエルが付けてくれたピアス見たい。

鏡を探すと、ラファエルに手渡される。

………準備良いね…

私は自分の耳を見てみる。


「………ぇ……これ……」

「気づいた?」

「………私があげたカフリンクスと同じ柄…?」


私がラファエルにあげたカフリンクの柄はカスミソウだ。

花言葉は幸福。

ラファエルがずっと幸せでいられるように願って。


「俺はソフィアにも幸せになって欲しいからね。俺だけ幸せでいられればいいだなんて、思ったことないし」

「ラファエル……」

「ソフィアは俺と一緒に幸せになるんだ。だからずっと俺のソフィアでいてくれ」


ラファエルの言葉に私は微笑み、ソッとラファエルの首に腕を回して力を込めた。


「愛してる。ソフィア」


その言葉を最後に、私は眠ってしまったらしく記憶がなかった。

………ごめんね、ラファエル…


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