第677話 ありました
暫くするとアマリリスが昼食を持ってきた。
ラファエルの休憩と丁度重なると読んでいたのか、2人分。
「ありがと」
「いえ」
並べられた食事にラファエルが礼を言う。
私は微笑み、アマリリスは礼をして控える。
一緒に食べ始め、私は途中でラファエルに視線を向けた。
「ラファエル」
「ん?」
「北への線路、設置し始めたんでしょ?」
「よく知ってるね?」
まだ報告してないのに、と呟くラファエルに苦笑する。
「完成してから驚かそうと思ったのに」
ちょっと拗ねるラファエルが可愛く見える。
「早いね。前……ガイアス王太子を連れて行ったときは、まだ温泉街に届いてなかったでしょ?」
「そうなんだけど、リーリエ王女も少し手伝ってくれるって言うから、センロ設置する場所の石やらを進路上から取り除いて、土を平らにしてもらう作業を魔法でしてもらってるんだよ」
「ぁぁ、成る程……」
「その取り除いた石やらをガイアス殿達に拾ってもらいながら、設置を続けてたら早くなったんだよね」
笑顔で魔法を使うリーリエ王女と、息を乱しながらゴミ拾い(?)をするガイアス・マジュの姿が想像できて笑ってしまう。
「あ、そうだ。北の雪をどうするか決めたの? すぐに線路埋まっちゃうと思うんだけど……」
「それなんだけどね。地面の中に源泉を這わすと北の雪が溶けちゃうから、センロの中を空洞にして、その中に源泉流したら常に熱を持ってる状態だから雪が積もらないんじゃないかって思って」
「………ぁ」
そうか……
その手があったのか…
「でも、実際設置してみて雪が積もらないか確認しなくちゃいけないんだ」
「じゃあ、暫くは開通しても温泉街までになるんだね?」
「そういうこと」
私の言葉に笑顔で頷くラファエル。
「でも、線路の中を空洞にしたら耐久性が心配じゃない……? 源泉に堪えられるかも…」
「その事も考えての様子見だね。出来たら1月は様子を見るつもり。スキー場もまだまだかかるしね」
「そっか」
「テイラー国までの国境まで伸ばせたら、温泉街から西へセンロを設置予定だよ」
ラファエルの言葉に頷く。
「ガイアス王太子は、いつまでいてもらうの?」
「ん~……取りあえずセンロが全部完成するまでは在国してもらわないとね」
………ぁ、もう既に路面電車要員に数えてるんだ…
「あ、そういえばソフィア。話は変わるんだけど」
「何?」
「長期休暇明けたら、すぐに試験だって覚えてるよね?」
ラファエルの言葉に、固まってしまったのは言うまでもない。
カランとフォークが皿に落ちた。
「………マジで?」
「マジで」
私の表情を見て、ラファエルが苦笑した。
「ら、ラファエル! 試験問題作ってーー!!」
「今日の夜にでも作って渡すよ」
焦る私と苦笑するラファエルの、この温度差。
あったよ!
ありましたよ私のすべきこと!!
夫人達相手に会話できたって、試験でボツったら評価がだだ下がりだよ!!
ラファエルが問題を作ってくれるのは夜だから、慌てても仕方がないのだけれど、1度思ってしまったことは簡単に払拭できない。
「はい、ソフィア。まずは食事しよう」
「………あ、うん……」
ラファエルに言われ、反射的に頷いた。
食事が目に入って落ち着いた。
チラッとラファエルを見ると微笑んでいるので、私も微笑み返す。
それで落ち着く私も私だけど…
取りあえずラファエルとの食事をしようと、再び食事を口に含んだ。




