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第66話 やり過ぎと止めなければ




ランドルフ国に帰国して数日後の朝。

いつもの訓練しようと外に出たときだった。


「………」

「どうしたの? ソフィア」


一緒に外に出たラファエルが首を傾げる。

………うん、私の頭が可笑しくなったのだろうか。

ラファエルが普通なのだから。

………いや、ラファエル基準は当てにならない!


「ラファエル…」

「何?」

「………昨日の夜まで一面の雪景色だったよね?」

「そうだよ」

「………私の胸元くらいまであったよね?」

「あったね」

「………一面草原なんですけど…」


そう。

昨日の夜、寝るときまで1mくらい雪が積もっていた。

それが翌日の早朝までに雪が全て溶けて、芝が綺麗に生い茂っているなんてあり得ないんだけど!!

万年冬のランドルフ国に植物、つまり草自体生えることは稀。

それが王宮の庭一面に、しかも綺麗に手入れされている芝があるなんてあり得ない!!

いつもは私たちの行動範囲だけ雪掻きしてくれているのだけれどね。


「熱湯の湖から引っ張ってきたんだよ? ソフィアのアイデアじゃないか」

「………は?」

「周辺の街を経由しながら、王宮の下までパイプ繋げることが出来て、一度そこまでで工事を止めたんだ。試しに流してみて上手くいかなかったらやり直しだし。現地まで俺が行くわけにはいかないからここまで繋いでもらったんだ。結果が即分かるとまでは思ってなかったが」

「ちょっと待ってよ!? 地下を掘るなんてこんな短時間で出来ないでしょ!? それにパイプを設置することも人1人余裕で入れるぐらいの大きさなんだから時間がかかるでしょ!? 源泉からここまでどれだけ距離があると思ってるの!?」


私はラファエルに詰め寄った。

そんな私を見ながらラファエルは笑顔だった。

たぶん、私が必死だから嬉しいんだろうな。

自分だけを今見ている、と。

ほんとに変なところ嬉しがるんだから!


「前面に穴掘りが出来る突起と、後面にパイプ設置出来る機械を開発して後は自動操作」

「じ……」


………自動操作の機械って…

日本で自動操作できる機械が開発されたのって、何年越しの研究だったっけ…?

………考えても無駄だ…

私も知らない…


「………で、それが成功してこれなのね」

「そう。熱湯湖には人は近づけないから、同じく温度を機械操作して測ったけど、温度は殆ど変わっていない。定期的に測る必要があるけど数年はもつんじゃないかな?」

「………因みに熱湯を流す作業も?」

「勿論機械で遠隔操作」

「………ですよね…」


ラファエルは本当に……

もう、本当に…


「働き過ぎだから!!」

「え、なんで怒るの!?」

「本当にこれはあり得ないから!! 早すぎるから!! 何年もかかってやる政策を、なんで月単位でやってしまうの!? 本当に働き過ぎだから!! 寝てるの!? 休んでるの!? 体調は大丈夫なの!?」


この際、月単位で完成させてしまうラファエルの手腕は別にして!!

私はラファエルの体調の変化を見逃してはいけない。

私の仕事はラファエルの体調管理なのだから。

協力者が大勢いるのは知っている。

でも、これはやり過ぎだ。

優秀なのは分かったから!

早く立て直したいのは分かってるから!

借金を早くなくしたいのも分かってるから!!


「寝てるよ? ソフィアの隣で寝ているの知ってるでしょ」

「知ってるけど! いつ潜り込んできてるかは知らないわよ!!」


私が夜中に目を覚ますことは滅多にない。

テイラー国では珍しく目が覚めたのだ。

人の気配に気づかないくらいに爆睡してしまうのが私だ。

ラファエルが私の就寝後すぐに潜り込んできてようが、夜中に潜り込んできてようが、朝方潜り込んできてようが、分からない。


「よく見るとまたクマできてきてるじゃないの!!」

「………よく気づくね……隠してたのに」


男が化粧品で隠すな!!

ってか、イケメンがそんな事したら私の立場がますます危うくなるじゃないの!!

私は化粧しても普通なのに!!

ズルくない!?


「でも、本当に体に支障はないよ。ちょっとでも崩したらソフィアと一緒にいられないからね」

「………はぁ。今日はそれで納得してあげるけど、明日もクマ見つけたら休ませるからね!」

「はぁい」


くっ…

可愛く返事しないで!!

なんで私がこんなに惨めな気持ちにならなきゃならないのよ!!

可愛い私カモン!!

………願ってもむなしいだけだった。


「さ、始めようか」

「はぁい」


……対抗して同じように返事したけど、なんとも可愛くなかった…

悲しいからもう対抗しないでおこう…

私とラファエルは日課の運動にはいった。


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