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第62話 安心する腕




騒動が落ち着いてから数時間後、ライトからラファエルが帰ってくる気配がすると伝えてくれた。

私は自分を抱きしめていた腕を漸く体から離すことが出来た。

ラファエルに会えると思っただけで、恐怖から解放される。

なんて単純なんだろう、と自分で思う。


『――』

『――』


なんか話し声が聞こえて、私はドアを見た。


『なんですぐ報告に来なかった!!』


「………ラファエルが、怒鳴ってる…?」

「そのようですね」


ラファエルの怒鳴っている声が聞こえたと思ったら、ドタドタと近づいてくる足音。

そしてバンッとドアが開いた。


「ソフィア!!」

「………ラファエル…」


ラファエルの姿が見え、私はホッとしたらしい。

生暖かいものが頬を流れた。

けれど、そんな事気にならなかった。

またラファエルと生きて会えたことが大事だった。

そして無意識にラファエルに手を伸ばした。

ラファエルはすぐにその腕の中に私を入れてくれた。


「怪我は?」

「………ない、よ。カゲロウが助けてくれたから…」

「そうか。ごめん。帰ってくるのが遅くなって」


私は首を横に振った。


「ううん。お仕事だもの」

「だが…」

「これは私が警戒してなかったことにも、責任があるもの。この場にいなかったラファエルに責任なんてないよ」

「護衛を増やすと言って、信のおけない者が混じっていても気づけなかった俺にも責任はあるよ」


どうやってもラファエルは責任を感じてしまう。

私が何を言おうとも。

だから私はもう責任という言葉は言わなかった。


「こんな事になっているとは思わなくて、明日も謁見を入れてしまった。すぐに断ってランドルフ国に帰ることにしよう」

「そんなのだめよ。信頼を失うわ。私は大丈夫だから」

「だが…」


躊躇するラファエルに、私は首を横に振る。

ラファエルは私を優先出来るときと出来ないときがある。

今は出来ないとき。

仕事があるときに私を優先させてはいけない。


「でしたら明日は我々と街に行きますか? そうすれば姫に近づく者達を牽制できます。人混みに紛れれば人目につきたくない者達の足を鈍らせることにもなります」


ライトの言葉に、ラファエルの顔が厳しくなる。


「ついでに言っておきますが、迂闊なのは婚約者様の影にもありますからね。姫の事をサンチェス国王女様、と街でも口にしていたのですから」


ハッとしてドア付近で居心地悪そう立っていた影を見るラファエル。

まるで気づいていなかったようだ。

まぁ、ラファエルにとって私の呼び方なんて気にならないよね。


「私やカゲロウのように姫と呼ぶだけなら貴族とも王族とも取れますから誤魔化しはいくつもありますが、国も立場もすぐ分かる呼び方は褒められたことではありませんね」


………ライト…自分の固定呼び方を正当化したね…

いいけどさ…


「………お前達、それは本当か」

「申し訳ございません!」


2人して頭を下げる。

が、ラファエルは怖い顔のまま。


「お前達の任を解く。大人しくしておけ」


ラファエルの言葉に影はスッと姿を消した。

女性でもやっぱり影なんだな…


「済まなかった。テイラー国に居る間は俺の影は控えさせるよ。ライトとカゲロウだけの方が動きやすいだろうし」

「ですね。では、そのようにして頂きます。明日は外出して宜しいですね」

「………仕方あるまい。俺も早く帰るようにする」

「宜しくお願いいたします」


ライトが天井に戻った。

私を置き去りに2人の間で予定が決まってしまった。


「ソフィア、今日は一緒に寝て良いよね? 心配なんだ」


………普段も一緒に寝てますけど…

そんな事今言えなかった。

ラファエルは心配してくれているから。

そして私も不安だから。

コクンと頷くと、ラファエルにすくい取られるように抱き上げられてベッドに運ばれた。

ラファエルの腕と毛布に包まれ、漸く私は安堵のため息をつくことが出来、体の力が抜けた。


「ゆっくりお休み」

「………うん。おやすみなさい…」


私はよほど精神的に参っていたらしい。

目を閉じてすぐに意識が遠のいた。


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