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第585話 丸投げします




「止まれ!!」


男の声と馬の声が響き、ガクンッと馬車が揺れた。

危ない。

頭を打ちそうになったわ…


「大丈夫ですか!?」


焦ったヒューバートが窓越しに聞いてきて、私は頷く。

窓から見えるのは王宮の城壁。

もうついたんだ。

考え事をしていて気付かなかった。


「平民が王宮に何用だ!!」


確かにこの馬車は街で調達したから平民仕様だよね。

乗合馬車の御者に無理言って王宮まで来てもらったのだ。

勿論その分料金は上乗せしているけれど。


「あ、いや……」

「ご苦労様。ここまで乗せてくれてありがとう」


私は門番にこれ以上御者が責められないように馬車から降りた。

そしてチラリと視線を兵士に向けると、訝しげな顔がハッとし、真っ青になっていく。


「ソ……!?」


うんうん。

王族が乗った馬車を止めて、その馬車が滅茶苦茶乱暴に止まったからね。

そりゃ真っ青になるわよね。

けれどこの場合、民間の馬車に乗っていたのが私だと分からないわけだから、止めるのは当たり前。

むしろ止めなければ問題になるケースだ。


「料金はこれね」

「へ、へぇ! あ、ありがとうございやす…!」


兵士の青ざめた顔と私の顔を交互に見て、疑問に思っているのだろう。

けれどそれ以上何も言わずに御者は立ち去っていく。


「し、失礼致しましたっ!!」


ガバッと頭を下げる兵士に手を振る。


「いいえ。貴方の判断は的確だったわ。これからも王宮の警備よろしくね」

「はっ、はい!!」


………何故顔を赤らめるんだ兵士よ…

何が君をそうしたのだ…

私は内心疑問に思いながら門の中へと入っていく。

勿論歩きではなく、近くにいたヒューバートの馬に相乗りだ。

………ん?


「………ぁれ……?」

「ソフィア様? 如何なさいました?」

「………ラファエルより…授業以外で先にヒューバートと相乗りって、ヤバいよね…? バレない方がいいよね?」


カチンッとヒューバートが固まってしまった。

あ、うん、ごめん……余計なこと言った…


「あ、お帰りソフィア!」

「え……お兄様…?」


王宮の入り口で、お兄様が手を振っていた。


「お父様とご一緒では…」

「親父がいない間は俺が残ってないと、何かあったときに困るからね」

「………それもそうですね…」

「報告は聞いてるよ。お疲れ様。ゆっくり休んで」


………報告とはそれ如何に…

田畑のこと?

それとも魔物ホイホイして倒してきたこと?

影の報告だとしてもホイホイはまだ報告されてないだろう。

………だよね?

私達より帰ってくるのが早いのはいないよね…?

私は疑問に思いながらも素直に部屋へと向かおうと足を踏み出した。


「………あれ?」


………ハズだったのだけれど、お兄様の声で足が止まる。


「………君は何処所属の兵士だい?」

「え……」


お兄様に問われたあの巨体の兵士はビクッとした。


「所属名と名を」


命じられた男は挙動不審になった。

………兵士の内情を知らない?

ということは、やはり紛れ込んだマジュ国の者だろうか。


「じ、自分は――だ、第三部隊の、ジョーダンです!」


ブホッと吹き出さなかった私を誰か褒めて欲しい。

何の冗談――ってこれじゃあダジャレみたいになるじゃないの。

決してそんなつもりはないっ。


「………うちの部隊は番号じゃなく、隊長の名の所属名なんだけどなぁ?」


にっこり笑ったお兄様。

いつの間にか男は、お兄様直属の護衛兵士に囲まれている。


「え……」


冷や汗を流しながら視線を彷徨わせる。

………ちゃんと準備しないから、お兄様の言葉に引っかかってそうなる…

きちんと知っていれば、第一部隊・通称○○(隊長名)隊、とどっちでも使用されていることも知っており、動揺などしなかったのにね。


「捕らえろ」


その一言で巨体の男は拘束されたのだった。

連れて行かれる男を見送り、私は自室へと向かった。

あの男はお兄様に任せていればいいだろう。

と、丸投げすることにした。


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