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第581話 魔物ホイホイ




水精霊イズミに全て魔物を倒してもらった後、戻ってもらい水のドームも消した。

兵士達がハッと周りを見渡すと、荒れていた田畑の土は元通りになっており、木々も元気になっていた。

木精霊ジュリは木になる果物をも復活させることが出来ていた。

木さえ生えればその木になる果物は自然と実るのだろう。

土精霊ジンは土を元に戻すことだけしか出来ないから、食い荒らされて商品にならない食物は全て回収してくれたらしい。

後はお父様の精霊に種を精製してもらって植えれば……どれぐらいで甦るのかな…

年単位でかかるとなると、かなりの痛手をサンチェス国も、サンチェス国から輸入している国も負う。

ランドルフ国も例外では無い。

損害賠償をマジュ国に求める国が相当出るだろうし、食がないのも困る。

そして万が一にもサンチェス国との同盟に亀裂が入ったら、マジュ国は背負えるのかしらね…


『主』

火精霊ホムラ。どう?』


サンチェス国中を回って被害を見てくれている火精霊ホムラから声をかけられ、私は心の中で会話する。


『被害は今のところ主のいる区間だけだ。我が回っている間にどんどん魔物が集まってきているが…』

『え……? 姿は見えないようにしてるよね?』


ここから空を見るも、目立つ火精霊ホムラの火の鳥は見えない。

私にも見えないようにしているようだ。


『ああ。だが、主から離れると我らの力は魔物にとっては感知しやすく、ダダ漏れになっているらしい。我が行く場所行く場所、次々と魔物が湧いて数が増えてくる』

『………ついて回っているだけ? 周りの食物や民家などには?』

『今のところは見向きもしていない』


それは好都合だ。

究極精霊みんなに姿を見られないようにしたまま国を巡回してもらっていたら、魔物ホイホイになる。


『そう。今どの辺り?』

『主が捕らえられていたランドルフ国の南西国境付近、サンチェス国北西の森だ』


………捕らえられ…ぁぁ、ロードの時の…


『そっちの方がやりやすそうね』

『そうだな。食物には影響ないだろう。森林被害はあるだろうが』

『それは木精霊ジュリに後で何とかしてもらえる。分かった。そっちに向かうから適当に翻弄してて』

『ああ』


火精霊ホムラとの会話が切れ、私は兵士達の方を見た。


「わたくしは一旦離れます。王太子殿下が国王を呼びに行っておりますので、貴方達はこの場で田畑がまた荒らされるぬように警備しておいて下さい」

「お待ち下さいソフィア様!」


御意、と声が揃う中で、1人の兵士が私に近づいてくる。

体格がよく、けれど片目が眼帯で覆われている。

何かの任務で負傷したのかしら。

茶色のストレートの髪を首の後ろで1つ結び。

身長は……アルバートと同じくらいかしら?


「何かしら?」

「まさかその少人数で向かうつもりでしょうか」


兵士がチラリと私の騎士4人を見る。


「何か問題でも?」

「先程の不思議な力をお持ちとはいえ、不安が残ります! 我々も共に行かせて下さい!」


目力強く見つめられても…

こんな兵士いたっけ……?

記憶と辿るも見覚えはなかった。

新入りかしら?

魔物に対しては、私と精霊が力を出せなきゃ意味がない。

よって、着いてこられた方が迷惑だし、不安だ。


「お断りだ」


考えていると、オーフェスがスッと私の前に立った。


「あの生き物に対して対応できるのが我々だけ。お前達はソフィア様の命令どおりにするんだ」

「ですがっ!」

「むしろ来られると、逆にやりにくく、そのせいでこれ以上国と民を危ぶませるのが目的か?」

「そのようなことっ!!」


オーフェスに食って掛かってくる兵士に向かって、私は手の平を向けた。

これ以上発言を許さない、という指示だ。

それを見て兵士が口を噤んだ。


「わたくしの騎士らとわたくしで連携が取れなければなりません。急に人数が増えると指揮に影響があります。わかりますね」

「っ………はい……失礼しました」


悔しそうに唇を噛みながら頭を下げた兵士を尻目に、私達はオーフェス先導の元にその場を後にする。

兵士達が遠くなったところで私はオーフェスを見上げる。


「………見覚えは?」

「ありません。ですが仕草や足運びでは間違いなくサンチェス国兵士の者です。――変装なら大した者です。平民から上がったばかりの新人なら、よくあそこまで短期間で成長できたものです」


言葉だけでやり取りする。

今現在オーフェスだけがサンチェス国出身だ。

オーフェスの記憶にもないのなら、オーフェスがランドルフ国に来るまでにいた兵士ではなく、新人かはたまた密偵か。

心の中で精霊に監視を頼みながら、私達は足早に火精霊ホムラの元へと向かった。


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