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第576話 怒りは当然です




究極精霊みんなに頼んでも、扉の再生は無理だった。

ランドルフ国の技術で作られた扉は、精霊の力で作るよりきちんと作り直した方が強度や防犯面でもいいらしい。

そんなに違うものなのか…

私は比較的小さい破片を拾い上げ、断面をジッと眺める。

でもこういうのって確かに魔法でパパッとするより、人間の手で地道に作った方が強く感じるものね。


「………いつからソフィアの部屋の扉は透明になったのかな?」

「………ぁ……」


私は入り口に背を向けていた。

だから気付かなかった。

背後にラファエルが来たことに。

恐る恐る振り返ると、それはそれは良い笑顔のラファエル様がいらっしゃいました。

………しまった。

報告に行ってもらうのを忘れていた…!!

すぐさまラファエルが表情を消して、入り口の騎士を見た。


「これは、防犯も何もあったものじゃないんだけど!? いくらここが指紋認証式の限られた者しか来られないとしても、ソフィアの貞操とか守れないでしょ!!」

「例を出すのに貞操という言葉を使わないでよ!!」


思わず顔が赤くなるでしょう!?

………っていうか、その問題もあったっ!!

なんでマジュ国組はここまで来られたの!?

指紋認証というセキュリティを突破できる魔法なんてあるわけ!?

姿を消せるのは魔法を使えば出来るのは分かるけど、壁をも通り抜けられるものではないわよね…?

どうして…


「申し訳ございませんっ!!」

「とにかく急いで技術班に言って、ソフィアの部屋の扉の用意と設置を!」

「はい!!」


ラファエルの騎士が走って行く。


「ソフィア怪我は!?」

「ないよ」


腕を引っ張られ私は立ち上がり、ラファエルの腕の中に抱き込まれた。


「犯人は?」

「聖女とその取り巻き魔導士。私は隠れてたから出かけたと思ったみたい。風精霊フウの風で追い出してもらった」

「………そう。怪我がなくてよかった…」


安堵の息を吐くラファエルに申し訳なくなる。

聖女の身勝手な勘に障ったせいだけれども、ラファエルを心配させるのは本意ではない。


「ガイアス殿以外には帰国願おう。もう我慢できない」

「けれど、実際に扉を壊したのは魔導士で、聖女は何もしていないわよ?」

「この区間に足を踏み入れた時点でそれに値するよ。この区間は王族と俺の許可無き者は立ち入った瞬間に不法侵入だよ」


………ぁ、そうでした。

そっか。

じゃあもうあの聖女と関わることはないのか。

こんな終わりで少々肩すかしだけれども、追い出せるのなら何でもよかった。


「………ぁ、でもガイアス様には誰か付いていなければならないのでは…?」

「………………………チッ」


だから本気の舌打ちしないで下さい。


「なら仕方ない。ガイアス殿にもお引き取り願おう」

「………ぇ」

「臣下の責任は取ってもらわないとね。それが上に立つ者だし」


ラファエルの言っていることは分かる。

それが正しいことも。

けれどもそんなあっさり言って…決めていいのだろうか?

ポカンとしていると誰かが走ってくる音がし、扉はないけれど、扉を――入り口を見る。


「ソフィア様ご無事ですか!?」


顔を出したのはルイスだった。

おそらくラファエルの騎士から、技術者に伝える過程で耳に入ったのだろう。


「うん。大丈夫。みんなが守ってくれたから被害は扉と――」


私は扉の前で対応してくれようとしていたブレイクを見る。

小さな擦り傷だらけのブレイク。

治療は必要ないと拒まれたために、そのままだった。


「ブレイク隊長だけよ」

「そうですか。ソフィア様にお怪我がなくてよかったです」


私に怪我がなくてホッとされるのは嬉しいけれど、臣下が怪我してよかったとは思えないから、曖昧な頷きになってしまった。


「ソフィア様、私達は今ソフィア様の臣下です。隊長というのは付けないで頂けますか」

「………それもそうね。分かったわ」

「とにかくソフィアは俺の部屋に移動。必要な物は運び込んで。ルイス、マジュ国の人達を全員応接室に呼んで」


ラファエルの言葉にみんながそれぞれ動いていく。

私は手ぶらのまま、早々にラファエルの部屋へと連れ込まれたのだった。


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