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第573話 新しい騎士




ラファエルがルイスに伝え、私は食事を終えた後にラファエルの執務室へとお邪魔していた。

仕事をしているラファエルとルイスの視界に入り、けれども小声でやり取りされる話は聞こえないような位置にソファーを移動させ、そこで私は刺繍をしていた。

本を読んでいても良いのだけれど、さすがにそれはのめり込んでしまって周りが見えなくなるから避けた。

暫くそれぞれのことをしていると、執務室の扉がノックされる音がした。


「入れ」


ラファエルが顔を上げずに許可すると、扉が音もなく開く。


「「失礼致します」」

「ああ。すまないね。急に」

「いえ! 光栄なことですから!」

「大役を任されましたので、期待を裏切らないようにします!」


入ってきたのは2人の騎士。

見覚えがある。

確か隊長だったはずだ。


「ブレイク騎士隊長、ドミニク騎士隊長。改めて、2人には一時的にソフィアの騎士になって貰うよ。アルバートとジェラルドの代わりにね」

「「はい!」」


ああ、確か第一騎士隊長と第三騎士隊長、だったわね。

………ん?


「ラファエル様、わたくしの守りといえども、隊長の位にいる方をお付け下さらなくても……」

「ダメだよ。アルバートはこの2人と同時にやり合っても勝っちゃうでしょ」


あの時アルバートと対峙した隊長はこの2人。

ジェラルドは第二と第四隊長だったはず。


「実力が足りずに不満かと思いますが、使って頂けないでしょうか?」

「あ、そういう意味で言ったのではないわ。一隊を預かる騎士隊長が抜けると、騎士隊が不安になるでしょう?」

「問題ございません。副隊長でもこなせる役割でございます」


………それもどうなんだろうか…

問題ないのならいいけれど…


「分かりました。宜しくお願い致しますね?」

「「はい!」」


………うん。

アルバートとジェラルドと比べてしまって涙出そうだわ。

素直に敬われている感じがして。

そしてふと気付く。

………この2人がいる場合、私、気が抜けないのでは…

ラファエルの提案を受けておきながら、早速憂鬱になってしまいそうになる。

顔には出せないけれど。


「じゃあ早速付いてね。オーフェスとヒューバートは交代していいよ」


私の後ろで置物みたいになっていた2人が頭を下げて去って行く。

代わりに騎士隊長2人が彼らのいた位置に立った。

………中々にやりにくい。

2人の視線が後頭部に刺さっているような気がして落ち着かない。


「俺も休憩入れるよルイス」

「………はい」


………ルイスの返事が低い…

まだ休憩を入れるのは早いと思われているのだろうけれど、渋々受け入れたようだった。


「ソフィア、こっちにおいで」

「はい」


私は立ち上がって刺繍をソファーに置いて、ラファエルに近づく。

そして促されるままそちらにあったソファーに座り、ラファエルがお茶を煎れに行く。

………本来なら侍女の仕事だし、ラファエルが煎れるぐらいなら私が煎れた方がいいのではないだろうか。

でも、私が煎れると絶対に失敗するのは目に見えているから、大人しくしておこう。

目の前にコトリと置かれたお茶と――


「わぁ……!!」


キラキラと果物が宝石みたいに光る、果物をふんだんに使ったタルトが置かれた。

しかもそれは親指と人差し指で丸を作ったぐらいの大きさで、少し大きめのお皿に所狭しといくつも置かれていた。

果物もあえて小さめな物を使っているのだろう。

日本で言うブルーベリー位の可愛らしい大きさの果物達が、タワーのように積み重なっているのも可愛い。

思わず手を合わせ、見入ってしまう。


「ソフィアが前に強請ってくれた新作甘味。色んな種類の果物を使った物、だったよね?」

「はい! 凄く綺麗です! ラファエル様素敵です! 大好きですわ!」

「………」


満面の笑みで言ってしまい、1拍おいてハッと気付いた。

私はなんて事を人前で……!!

カァッと顔が赤くなるのが分かった。

手で顔を覆ったラファエルの反応が怖い…

マズいことを言ってしまったのだろう。

その場の勢いで言葉を言うものじゃないと、何度やってしまえば私は学習するのだろうか……


「………俺のソフィアが可愛すぎて辛い……」


………あ、はい。

問題ありません。

通常運転でした。

気にしない方向で行こう。

改めて私はタルトを見る。


「食べてしまうのが勿体ないです…!!」

「いや、ソフィアの為に作ったんだから、ちゃんと食べてね?」

「はい! ラファエル様と一緒に全部食べちゃいます!」

「ふふっ」


ラファエルと笑い合っていると、咳払いされ、2人してその人物――ルイスの方を見る。


「全部はダメです。夕飯が食べられなくなるでしょう」

「いや母親か」


ルイスの言葉にラファエルが突っ込んだ。


「叔父ですが」

「そういう意味じゃない」

「分かってます。せめて半分にし、残りは夕食後になさって下さい。子供ではないのですから」

「………ルイス様は意地悪ですわ…」


私の言葉遣いにゾッとしたのか、ルイスが僅かに眉を潜めた。

………失礼な…


「ソフィアごめんね。ルイスのいないところで出せばよかった」

「ラファエル様!!」

「いいえ。ラファエル様の甘味の新作は全てわたくしが最初に食べるとのお約束ですわ! 出来上がったらすぐに頂きませんと!」

「ソフィア様!」


ルイスの言葉には反応せずラファエルが私を見つめるものだから、私もそれに応える。

はぁっとルイスがため息を吐くのが聞こえたけれど、こんな美味しそうなのを見せられてお預けは嫌だ。

仕方ないけれども、半分にしよう。

私は取り上げられないうちに、1つ目を頬張ったのだった。


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