第568話 こんなデジャブいらない
取りあえず窓に付いていたものを一部採取。
その後、綺麗に私の侍女達が窓を拭いていく。
私は何故かラファエルの膝の上に座らされて食事中。
ラファエルと騎士の推測の話の最中、私のお腹が盛大に鳴いたから。
誰の耳にも聞こえるほど。
窓を閉めて窓拭きをしていた侍女達の手も止まるほど。
「………俺のソフィアのお腹の鳴き声も可愛すぎでしょ…」
私は真っ赤になって、ラファエルは両手で顔を覆って悶えてた。
………だから、ラファエルの美的センス……
窓拭きしていたアマリリスが忘れていたという風に、慌てて食事を用意し、私はそれを有り難く頂こうとして現在に至る。
………美味しいはずなのに、味がしない。
「ソフィアが可愛すぎる……」
ギュッと抱きしめて離さないラファエルのせいだと思う。
「あ、そうそう」
急にラファエルが元に戻って私の肩に顎を置く。
「ガイアス殿達の協力を受けることにしたんだって」
「え……」
「まぁ、国王命令じゃ仕方ないけど」
あっけらかんと言ってるけれど、身代王の返答がそれだったって事だよね…?
………いいの?
「俺達の力を見ちゃったから、もう隠す必要性を感じないしね」
「………ラファエルがいいのなら私はそれに従うよ?」
「ありがと。だから、これからはマモノを探す時にはマジュ国の人達も一緒だから、ソフィアも覚えておいてね」
「うん」
こくりと頷いてご飯を頬張る。
あ、やっと味がしてきた。
やっぱりアマリリスの和食は最高だ。
多分コレは私の今日の朝ご飯を起きてすぐ用意するために、下ごしらえされていた。
起きたら和食を所望するのが分かってるから、アマリリスはもう立派な侍女だね。
まだ見習いから上げないけれど。
まだアマリリスは平民だしね。
「でもあの女はいらないなぁ。置いてけないかな」
私の肩に顎を乗せたままジト目になるのは止めて欲しい。
また味がしなくなるじゃないの。
「………確かにいい気分にはならないね」
「なんか訳の分からないことを言ってたけど、聞き覚えがある言葉も飛び交ってたんだよね」
スッと私に視線だけ向けるの止めて下さい。
怖いから。
「………聞き覚えがある言葉?」
「うん。確かこの王宮の敷地内で聞いたと思うんだよね――アマリリスの口から」
今度は待機しているアマリリスの方へと視線が向く。
反射的にアマリリスがビクッと怯えたのは、仕方がないことだと思う。
「わ、私、ですか……?」
「そう。“ヒロイン”だとか、“そうなると決まっている”みたいな台詞」
サッとアマリリスの顔色が変わった。
「で、ソフィアはその時のアマリリスの台詞を違和感なく受け入れていた」
あ、こっちにも飛び火してきた。
「ということは、アレも前世の記憶とやらがある、と推測されるんだけど。どうだろう?」
あっはは……ラファエルの顔が見られない……
多分アマリリスも視線反らしてるんじゃないかなぁ?
ラファエルが顎を乗せている肩の方向にアマリリスが立っているから。
逆方向向くしかないんだよね。
「………アマリリス・エイブラム、ユーリア・カイヨウ、そして聖女サマときた。もう俺この辺で突っ込んでいいと思うんだけどどうかな?」
………そうですね!
1番の被害者はラファエルですね!!
いいですね!!
モテモテで!!
「ユイカはいいんだよ? 俺のだし」
そっと耳元で囁かないで下さい!!
真っ青な顔色が真っ赤になっちゃいますから!!
忙しいから!!
さり気なくその名前も出さないで!!
ラファエルの唯一無二って思っちゃって、顔が更に赤くなっちゃう!!
ら、ラファエルだから、いいんだけれどもっ!!
今じゃない!!
「洗いざらい吐こうかソフィア、アマリリス」
グイッと顔を無理矢理ラファエルに向かされ、にっこりと微笑まれる。
………ぁ、デジャブ……
私はラファエルの腕の中で、固まってしまったのだった。




