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第567話 気にするところはそこではない




「ソフィア!!」


バタンと大きな音を立てて寝室の扉を開いたのは当然ラファエル。

走り込んできた勢いそのまま、私を抱きしめる。


「………ラファエル…」


ホッと息を吐いた。

ラファエルの顔さえ見れれば私の気分が上昇するのだから、我ながら単純すぎる。


「俺がいない時に可愛い悲鳴上げたんだって!?」

「「「「いやそこかよ!!」」」」


思わず私、アルバート、オーフェス、ジェラルドが突っ込んでしまった。

ヒューバートは一体何を報告したのかな!?

扉の所に立っているヒューバートを見ると、フイッと視線を背けられた。

………それはどういう意味だ。


「だってヒューバートがソフィアの悲鳴を聞いて寝室に入ったら、窓が真っ赤に染まってたって。だから慌てて帰ってきたんだよ」

「………それがどうして私の“可愛い悲鳴”に繋がるの…?」


もぞもぞと動いて顔をラファエルの胸元から上げ、見る。


「騎士が慌てて入るぐらいだから、どんな悲鳴だったか聞いたんだよ」

「………どんな悲鳴かだったなんて聞く必要ないでしょう……? 聞いて欲しいのは窓が真っ赤になっていたことであって…」

「まったくソフィアは酷いんだから。俺に可愛い悲鳴をもう1度聞かせて?」

「いや、聞いて?」


話がかみ合わない…

ワクワクしているラファエルを無下には出来ないし…

早く窓を見てもらいたいし…

ぅぅ…

わ、私、可愛い悲鳴なんて上げてないのにぃ!!

し、仕方ない…

背に腹はかえられない…!!


「………こほんっ………きゃぁ!?」


カァッと顔が真っ赤になっていくのが分かる。

ラファエルと顔を合わせられなくなり、俯き加減で悲鳴を上げた。

さっきの自分を思い出して…


「………」

「………」

「………」

「………ら、ラファエル?」


反応がないラファエルに不安になる。

やっぱり可愛くないよね!?

ごめんなさいっ!!


「や、やっぱり――」

「なんだこれ。俺のソフィア天使かよ」

「………は?」


ぼそりと呟かれた言葉は私に届いていて、パッと顔を上げると、真っ赤なラファエルの顔を目にした。

………ぇ……


「はぁ……可愛い……」

「え!? ちょ、ラファエル!?」


ラファエルがスリッと頬を私の頬にピタッと引っ付け、スリッと頬ですり寄ってくる。

………いや、ラファエルの方が可愛いんですけれども…

小動物の行動かよ。

固まっていると、耳にちゅっとリップ音が………リップ音……?


「!?」


私は慌てて頬に手を当てる。

ラファエルは満足そうな顔で、鼻歌を歌いながら私を離して窓の方へと向かっていく。

私はそのままへたり込んでしまった。

………なんだこれ。

普通に唇にされるより恥ずかしいのはなんでだ。

こ、腰が抜けた……

昨日も北で頬に口づけられたけれども、あの時は気を張ってた(はず)だから、腰砕けにはならなかったけれども…


「………ふぅん」


ラファエルが改めてガラス扉を開き、付いている真っ赤な液体を指で掬う。


「いい度胸だね。王太子と王太子妃の寝室にこんな悪戯するなんて。よほど命が惜しくないらしい」


ハッと顔を上げてラファエルを見、私は勢いよく顔を反らした。

何故私はラファエルを見た。

後悔するとは知らずに何故不用意に見たんだ。


「………って! わ、私まだラファエルの妃になってないよ!?」

「そこではないですソフィア様」

「だ、だって…」

「何? ソフィアは俺の妃にならないの?」

「なるよ!? 絶対なるよ!? でも、まだ結婚してないから!」

「もういいじゃん王太子妃で」

「よくないよ!?」


ちゃんと周囲に式でお披露目してからじゃないとその敬称は名乗れないからね!?


「ソフィアの影も俺の影も何も気付かなかったのか?」


ラファエルが私の言葉をスルーして天井を見る。

あ、あの……せめて相づちを……


「申し訳ございません。そういう気配は感じられませんでした」


いつもの如く、天井板を外して目だけを見せるライト。

………その登場の仕方は止めて欲しいわ。


「そうか。精霊は?」


ラファエルは精霊にも聞くが、目撃情報は今のところはないらしい。


「………姿を消す道具や魔法が使えるのかしら…?」


今のところ頭に浮かぶ犯人は、あのヒロインだけ。

………いや、マジュ国組の中の誰かかもしれない。

けれど彼らがこの場所を知っているわけではない。

むやみに疑うのはよくないわね。

私はラファエルと騎士らが話しているのを傍観していたのだった。


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