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第562話 思いっきり恥ずかしいです




辺りが混乱している。

けれどみんながみんな、バラバラっていうわけではない。

私に向かってくる魔物を騎士が止め、騎士の間をすり抜けて来た魔物をラファエルと私、そしてルイスが精霊の力で攻撃していく。


「ルイスの力も効いてるみたいね」


ルイスの闇の力を受けた魔物が消えていくのを横目で見ながら、ラファエルに言う。


「ちゃんと効いててなによりっ!」


飛びかかってきた魔物をラファエルが剣で押しとどめ、剣を持つ手とは別の手で炎を当てていっている。

………器用だ。

私も一応護身用のナイフを持ってはいるけれども、あんな事は出来ない。

剣と長さも違うしね。

私は重い剣など持てないし。


「ああもう!! 俺のソフィアばっかり狙うな化け物共め!!」


………若干ブラックラファエルさん降臨しそうな感じだ。


「っ!! ソフィア様!!」


ルイスが止めておけなかった魔物が、ルイスを飛び越えて私に向かって牙を向けてくる。

………あ、これ絶対怪我する。

と、どこか他人事に思った。


『っ! 失礼します!!』


突然、木精霊ジュリの声がしたと思えば、身体が勝手に動いた。

トンッと軽く地を蹴ったと思えば、2メートルぐらい後方へと着地する。

………ん!?

私そんな俊敏性も脚力もないですけれども!?


『主が怪我しそうだったので、一時乗っ取らせて頂きました!!』


………私の身体を!?

そんな事出来るの!?

パチパチと瞬きを繰り返していると、ラファエルもルイスも私を唖然と見ていた。

………だよね!!

私もビックリだよ!!

って…!!


「ラファエル! ルイス! よそ見しないで!!」


私の言葉にハッとして2人は前を向く。

私も元の位置へ駆け戻る。

………っていうか木精霊ジュリ!!

そんな事出来るなら、ロードの時に発揮して!?


『………すみません』


あ、ごめん。

助けてくれたのに責めちゃった…

木精霊ジュリが落ち込んでしまって、私は魔物を相手にしながら心の中で木精霊ジュリに謝る。


「………な、なんなのよ……これ……」


ん?

第三者の声がして、私はそちらを見た。

するといつの間にか近くにマジュ国組がいた。

………え、いつからこの炎の中にいたの?

その前からだいぶ近くにいたの?


「お、可笑しいじゃない! なんでラファエルが魔法使ってるのよ!?」


教育。

ジト目で思わずガイアス・マジュを見てしまった。

だから王太子を呼び捨てにするな。

ラファエルから許可ももらってないくせに。

そんなヒロインをよそに…


「こ、この力があるから拒んでいたのか…!? 何故聖魔法や光魔法以外で滅することができているんだ!?」


とガイアス・マジュが唖然としていた。

唖然とする前に隣のヒロイン何とかしろ。


「これじゃあ私が力を使って解決してもラファエルに惚れてもらえないじゃないっ!」


………あ、そういうゲームなの?

ピンチを助けて恋が芽生える、的な?

聖女だから……「君の清い心と力に惹かれてしまった…」とか言われるのだろうか…?

チラッとラファエルを見ると、心底嫌そうな顔をして魔物を燃やしてる。

ヒロインの言葉が聞こえたのかな?

………なんかモヤモヤする…


「ソフィア様!!」


背後からオーフェスの声が聞こえ、咄嗟に振り向いた。

――しまった…

余所事なんか考えているからそうなるんだ、と怒られそうだ。

グイッと腕や足が勝手に動く気配がしたけれど、間に合わなかった。

ドッと鈍い衝撃がして、私の身体が浮いた。

火精霊ホムラの炎によって炎のドームの中の雪はすっかり溶け、地面が見えていた。

その泥濘んだ地面に私は叩きつけられる。

魔物の力によって、数メートル吹き飛ばされた後に。


「ソフィア!!」

「ラファエル様ダメです!! ソフィア様に当たります!!」

「っ!!」


ラファエルが咄嗟に精霊の力を使おうとしたけれど、魔物は私にのし掛かっているために、攻撃できない。

ギリギリと魔物の歯と、私のナイフが押し合いになっている。


「っ………!!」


心の中で木精霊ジュリに感謝する。

指一本動かすことの出来なかった私が、ナイフででも魔物の歯を止められているのは、咄嗟に木精霊ジュリが私の手を操って魔物との間にナイフが入るように腕を動かしてくれたから。

そして別の魔物達が好機とばかりに、倒れ込んでいる私に向かってくる。


「っソフィアに近づけるな!!」


ラファエルが私の所へ走り寄ってきながら、騎士らに命ずる。

その間にも私は魔物の力によって押さえつけられ、手の感覚が無くなってきた。

な、何かっ…!!

この状況を脱する方法はないかと思っていると、火精霊ホムラが作ってくれた炎のドームの1番高いところ、中心部が視界に入った。

………コレ、私が作ったことになってるんだよね…

他人事のようにそれを見、心の中で火精霊ホムラにあることを問いかけた。

そして私の考えに、同意してくれた。

そうと決まれば…!!

と意気込んだところで、あることを火精霊ホムラに願われた。


『………え!? それ私がやるの!? ってか考えるの!?』

『気を散じると押し切られるぞ』

『他人事のように言わないで!?』


心の中で揉めたけれども、そうも言っていられない状況になった。

恨むわよ火精霊ホムラ!!


「っ……な、めるんじゃないわよ! “八が一・炎を司る朱神に請う 深炎を以て 我を阻む怨固を滅せよ! 出でよ朱雀”!」


何処の中二病だよ、と叫びたくなる。

だ、だって、ヒロイン達がいるから、いきなり出たらビックリするからって火精霊ホムラに言われたんだもの!!

きちんと私がび出したっていうことを分からせる決定打が欲しいって!!

魔物に押しつぶされそうになりながら、恥ずかしい詠唱っぽい言葉を唱えた私の心情は、今すぐ穴掘って埋まって一生引きこもりたい、だ。

そんな私を余所に、ボッと私の身体から炎が現れて、私の身体を中心に周りに炎の円が描かれていく。

そしてその中に複雑な文字が浮かび上がってくる。

全てが完了したと思えば、円から光が溢れ、空に伸びたと思えば次の瞬間、上空に炎の鳥が現れた。

………無事に朱雀ホムラさん召喚できました…

なんて事を考えさすんだ……

今の私の顔は真っ赤だろう。

是非皆さん、ホムラが作った炎のドームの中の気温のせいだと思って下さい!!

切実に!!

朱雀ホムラが急降下し、私にのし掛かっていた魔物を咥え、また舞い上がった。

そして上空で、至近距離で大火力の攻撃を受けた魔物は塵一つ残さずに消滅した。

更に火精霊ホムラが姿を現したことで、完全に魔物達の視線は火精霊ホムラに向いて、私達は一息ついたのだった。

………出し惜しみせずに最初から火精霊ホムラ出せばいいじゃん。

なんて突っ込みはいりません…

ヒロイン達が付いてきてたから極力出したくなかったんだよ…

起き上がろうとして、全身に痛みが走り、仰向けから横に向いた状態でふるふると痛みに耐える。


『すみません主っ! 私が操ったせいで、少々身体に負担がかかったようです!!』


少々、という言葉には語弊があるんじゃないかな…!?

息が詰まるぐらいに痛いんですけどっ!!

魔物のせいでもあるとは思うけれども。

私本来の腕力で敵うわけなかった相手だったから仕方ないけれどもっ!!

強化した弊害、という感じかな!?

駆け寄ってくるラファエルをチラ見して、私はソッと息を吐いた。


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