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第557話 諦めの悪い人




「ラファエル殿!」


夕食を終え、ルイスも帰ってきて事情を説明し、精霊の力が出せる建物へと移動しているところだった。

後ろからラファエルを呼ぶ声がして、一同が後方を見る。


「………まだ何か?」


走ってきていたのはガイアス・マジュで、王宮内の行動を制限はしてなかったけれど、堂々と他国王宮を歩き回るのは如何なものかと…

追いついて息を整え終えたガイアス・マジュは、バッと頭を下げた。


「先程はアイも私も失礼した! もう1度話をしていただけないだろうか!」

「………申し訳ないですが、貴方達と連携が取れるとは思えないのです」

「私達の態度でそう判断されたのは仕方がない。けれど、もう1度だけでも! 魔物は楽観視できる相手ではないのだ!」

「それは私の婚約者の騎士達が怪我を負っていたことで分かっています」

「え………」


ラファエルが私の腰を抱き、引き寄せる。

………え……ここ通路ですが…

しかも他国王太子の前ですよ!?


「ソフィア王女の騎士は私の騎士より腕が立つ」


………それもどうなの!?


「そういう者を配しているから。私よりソフィア王女の方が大事なので」


ランドルフ国にはラファエルが必要なんだって!!


「少数精鋭。私の騎士は質より量で同一の力配分にしていますけれども」


あ、そうなの……?

………それでいいの!?


「そんなソフィア王女の騎士達が血が滴るほどの怪我を負っていた。一筋縄ではいかないことは分かっています」

「だったら…!!」

「それでも、協力し合えない――相手の神経を逆なでするような相手を連れて歩くわけにはいかないんですよ。連携が取れないでしょう」

「アイはちゃんと説得して失礼な口を聞かないようにする! お願いする! 私達を共に連れて行って欲しい! 自国の不始末に対してケジメをつけずに帰るわけにはいかないんだ!!」


ガイアス・マジュは胸に手を当てて懇願する。

………ラファエルより年上だから?

ずっとラファエルに対してタメ口なのは。

お願いする立場でありながら、それは許されるのだろうか?

………ぁぁ、でも、お兄様もラファエルにはタメ口だったっけ…


「………貴方が必死になるのは分かりますよ。私も自国が他国に対して失礼をしたときに、責任を取らなければと必死になりますから」

「ラファエル殿!」


ガイアス・マジュの表情が明るくなる。

………けれど、ラファエルが許可を出した、っていうのとは違うと思うけど…


「謹んでお断り致します」


にっこり笑ってラファエルはそうキッパリと言った。

ガイアス・マジュは口角を上げようとして、それが失敗した状態で固まった。


「………な……何故っ」

「私の判断は変わりません。私も私の婚約者も侮辱されて、貴方方を受け入れるわけにはいかないんですよ」

「だがっ!」

「貴方の最初の過ちは、魔物を自国から逃がしたことではない。他国王族に対しての礼儀がなってなかった所ですよ」


ラファエルは笑みを浮かべたまま、冷ややかな瞳でガイアス・マジュを見下ろした。


「交渉で大事なのは最初の顔合わせで。――王太子なら最初にそう習うはずなんですがね? ご自分もですが、お連れ様にも大事なことを伝えていない、貴方の責任です」

「ぁ……」

「では、我々は急いでおりますので。失礼します」


ガイアス・マジュを残したまま、ラファエルは私の腰を抱いたまま歩き出す。

ルイスと騎士達もそれに続く。


「………よろしかったのですか?」

「敬語」

「ぁ……よかったの?」

「うん」


ラファエルはチラッと背後を伺い、ガイアス・マジュとの距離を確認して私を見る。


「マジュ国の人の前で、マモノを捕らえているところや、精霊での実験や、ソフィアと俺の契約精霊でのマジュ国で言うマホウを使うわけにはいかないでしょ」

「………ぁ……」

「一緒に行動したら嫌でもマジュ国の連中に処理してもらわないといけない。でも、共に行動すればソフィアや、まだ調べてないけど精霊契約者である俺やルイスにマモノが群がってきたら、絶対に俺達は咄嗟に精霊に対応してもらおうとしてしまうだろうね」

「なるほど…」


ラファエルが頑なに拒む理由はコレか…


「他国王族が行動するのに、俺達が放置しておくわけにもいかなくなる。特に民が住む地で戦闘になって、ランドルフ国王族が知らない顔出来ないからね」


そう説明を受けてこくんと頷く。

私にだけ群がってくるなら、私は王宮に置いておかれるだろう。

けれどラファエルとルイスにも群がってくるなら、他国王族に対して自国の王族案内人がいなくなる。

騎士だけに任せるには、相手の立場が上すぎる。

王族には王族の案内人がいなければ失礼に当たる。


「………つくづく階級制度ってやんなっちゃう……」

「それには同感だけれども、ね。コレばっかりは共通規約だから」

「そうね――ラファエル」


私はふと気付いてラファエルに視線を向ける。


「………しつこい」


ボソッとラファエルがこぼした。


「ラファエル殿!!」


ガイアス・マジュがまた追ってきた。

………まぁ、失態をそのままにしておけない、国の矜持ってものもあるしね…


「ランドルフ国王に会わせてくれ!!」


ピクッとラファエルの眉が不快そうに反応した。

ラファエルは王太子である立場故、王に面会希望を出されては勝手に拒否など出来ない。

つまりこの場で断ることなど出来ないというわけだ。

拒否できるのは王だけ。

………つまり…

私は自然と、ガイアス・マジュに気付かれないようにルイスの方へ視線を向けた。

ルイスはガイアス・マジュに背を向けており、表情は見られないだろう。

だからか、心底不愉快だという顔を隠そうともしてなかった。

ルイスの時はラファエルの言葉が正論ならば無条件に従う。

間違っていると思えば咎めるが。

けれど、マテウス・ランドルフの影武者として国王に扮する際は、ラファエルの意見を尊重できない。

国王、なのだから。


「………分かりました。ルイス、国王の時間が空けば面会出来るかどうか確認を取って、ガイアス殿に知らせてくれ」

「畏まりました」


白々しいやり取りをし、今度こそガイアス・マジュから離れたのだった。

その時の2人の表情は、怖くて見られませんでした。

…というか、なんで最初から王に謁見願わなかったんだろう…

内心首を傾げたのだった。

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