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第556話 事情説明




ラファエルと共に部屋に戻ってきてソファーに座って一息ついた。

追ってきていた騎士達は何も言わずに定位置に戻る。

………振り回しちゃったなぁ…


「………で、ラファエル」

「ん?」

「………なんで隣に…?」


対面で話をすると思っていたのに、隣に座って、更に私の腰を引き寄せている。


「ソフィアがこれ以上不安にならないように」


何に!?

見上げて後悔した。

にっこり笑うラファエルに逆らうべからず。

私は突っ込むことをせず、大人しく用意されたお茶を飲む。


「あの女、早く帰ってくれないかなぁ…」


おそらく独り言だったのだろう。

けれど私はラファエルに引き寄せられているために、小声で呟かれた言葉をも拾ってしまう。


「ラファエルが助力を断ったのは、精霊で対応できるから、だよね?」

「うん。未知なマモノ相手にマジュ国の助力は大いに効果的だとは思うけれど、ソフィアを侮辱するような者達と共に行動はごめんだから。全てのマモノに精霊の力が効くとは確証がないけれど、連携取れない方が危険だからね」


ラファエルの言葉に、戦いを知っている騎士達が全員頷いていた。


「幸いにもソフィアがマモノを捕まえてくれているって事だから、実験は可能だよ。それに、俺とルイスにも向かってくるかどうかも知りたい。向かってくるようなら、契約精霊に。向かってこないなら究極精霊に向かっていると判断していい。ということは、一番ソフィアが危険だって事になる。守りを強化しないとね」

「うん」


私は頷き、同意する。


「………で?」

「え………?」

「ソフィアは何を隠しているのかな?」


にっこり笑って見下ろされてます!!

ビクッとしてしまったじゃないか!!

凄まないでよぉ!!


「え、えっと……私の知ってることは、全部ガイアス・マジュがラファエルに説明しちゃった……」


私は素直に会談の様子を見ていたことを話す。

そして、緊迫な雰囲気になっていたから乱入したことも。


「へぇ? じゃあ得体の知れない生き物、マモノの存在だけ知ってたって事?」

「うん。でも、対処法は知らなかったし、あの魔物のせいで吹雪が起きるっていうことも、遭遇して初めて知ったの」

「ふぅん」


ラファエルが顎に手を付けて考える。

………誤魔化せた、のかしら…


「騎士達は知らなかったのに、何故サンチェス国から国政で出ることもなかったソフィアが、他国のマジュ国のマモノを知ってるの?」

「………ぇ……」


し、しまった…!?

余計に疑惑を作ってしまった!!


「恐れながらラファエル様! わたくしがご説明させていただいてよろしいでしょうか?」


ピンチの私の助けに入るためか、アマリリスが机の近くに跪いて頭を下げる。


「いいよ」

「姫様がご存じだったのはわたくしがお話したからなのです」

「………へぇ?」

「ロード・ディエルゴからわたくしも姿を消す同様の道具を買ってました。それでマジュ国に行った際に魔物の存在を知り、姫様にお話したことがあります」


アマリリスの言葉に眉を潜めそうになり、思いとどまる。

アマリリスは姿を消す道具なんて持ってなかったし、サンチェス国からも出たことないはずだ。

ゲームの知識を知られないようにと、苦肉の策なのだろう。


「そうなの。眠れないときにアマリリスに話してもらったことがあるの。寝物語みたいに、アマリリスは話を作るのが上手いのよ」


私も援護、ではないかもしれないけれども、便乗する。


「………」


ジッとラファエルに見つめられる。

背中に嫌な汗が流れる。


「………まぁ、いいけどね」


ポツリと呟いたラファエルは、その後普通の笑顔に戻った。


「話は分かったよ。アマリリスはマモノの特徴とか弱点とかは知ってる?」


ラファエルはアマリリスの虚偽に気付いているだろうに、それは追求しなかった。

あの時のアマリリスの所持していた道具を見聞していたラファエルに、アマリリスはあえて持っていなかった道具を口にした。

本来なら王族にそんなことをすれば、偽証罪になってしまうのに…

それにアマリリスが本当にその道具を持っていたのだとしたら、レオナルドの姿を消した件について道具使用の可能性があると進言が無ければ可笑しい。

………全部ひっくるめて、ラファエルの中では疑惑が膨らんでいるはずなのに、飲み込んでくれた。

私は少し目を閉じ、感謝する。

アマリリスのチップが反応してないことから、私に害ある虚偽ではないからと判断してくれたのかもしれない。


「特徴――姿はまちまちですが、それぞれ好む場所があるとは知っております。この国には雪が積もりますから、寒いのを好むものや姫様に襲いかかってきた魔物みたいに雪――氷属性の魔物が逃げてきているのでしょう」

「なるほどね」

「ですから比較的北に魔物は集まっていると思います。魔物の弱点は光魔法や聖女が使う聖魔法、とマジュ国で伺いました」

「じゃあマジュ国はそのマホウ、っていう手段があるから対抗出来るということか」

「はい。精霊の使う力と同じ物と思って頂いて大丈夫だと思います。魔法には魔法陣が必要ですが。しかし、姫様の光の精霊以外の攻撃も効果あるとお聞きしたので、精霊の力と魔法はやはり違うのかとも思います」

「へぇ。そうなんだ」


アマリリスの言葉にラファエルは頷き、それを書類に纏めていく。


「………ぁ、書きにくいでしょ? 離れるよ?」


ラファエルは私の腰に腕を回したまま、机に置いている書類に片手で記入している。

書類を押さえておかないとズレちゃう…


「大丈夫。ここにいて」


視線を反らさぬまま言葉だけで言われ、私は頷いた。

今はラファエルの思うとおりに。


「アマリリス」

「は、はい」

「食事用意してくれる?」

「あ、すぐにっ!」


ラファエルに言われて、アマリリスは頭を下げて早足で出て行く。


「ルイスが戻ってきたら説明して、マモノで実験してみよう。ソフィアも協力してくれる?」

「勿論だよ」

「ありがとう。また怖い思いさせちゃうかもだけど、今度は俺が守るから」


優しく微笑んで見られ、私も笑って頷いた。


「ラファエルと一緒なら怖いものなんてないよ」

「………」


私が言うと、ラファエルが手で顔を覆った。

え……私、変なこと言った!?


「………俺のソフィアが可愛すぎて辛い……」


今の何処に可愛い要素があったのだろうか……?

私は分からずに首を傾げてしまい、ラファエルはそんな私を抱きしめる。


「今日は一緒に寝ようね」


耳元で囁かれ、真っ赤になってしまったけれど、私は笑って頷いた。

やっと眠れそうだと、嬉しくなった。


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