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第554話 聖女サマはダメでした①




私はベッドに横たわりゆっくりと目を閉じた。

そして精霊に頼んで、ラファエルの元へ行ってもらった。

さらにその内容を私に映して欲しい、と。

暫くして瞼の裏に映像が流れ始めた。


「――へぇ。マジュ国のマモノと呼ばれる脅威が我が国に放たれた、と?」


既に自己紹介は済ませたのか、本題と言えることの説明をラファエルは聞いたようだ。

腕を組み、足を組み、ソファーにもたれ掛かっている。

他国王太子の前でその態度はいいのだろうか?

………っていうか、その体勢は格好よすぎるんですけれども!!


「申し訳ない。我が国の落ち度だ。けれど、我が国はそれを解決するために、聖女召喚に成功している!」

「ぁ、ぁの……」

「――君に発言権はまだ与えてない」


ラファエルが冷ややかな目で対面に座っている女の子を見た。

マジュ国の王太子は、夕日みたいな橙色の髪色に金の瞳、そしてやはり攻略対象なのか顔は整っている。

王太子の正装なのだろう、これまた夕日みたいな暖かな色の綺麗な格好をしている。

女の子は召喚されたままの格好なのか、馴染みのあるセーラー服だった。

黒のストレートの髪に黒い瞳。

………あれ……黒髪に黒い瞳って……私と被ってるんですけど……

でも顔は可愛い系で、如何にも日本人って分かってしまう東洋人の顔だ。

おさな可愛い、とでも言えばいいのだろうか?


「他国に連れてくる前に、礼儀は一通り教え込んで欲しいものだな」

「申し訳ない。アイ、身分の低い者は、身分の高い者から問われたことだけに答える。それ以外は不敬に当たり、罰せられることがある」


………あの子、アイって言うんだ……

愛、かな?

それとも亜衣…哀…?


「あ、ごめんなさい…」


アイは戸惑ったように謝罪した。

ラファエルとガイアス・マジュがまた話し始めたとき、私は彼女の顔を見た。

眉を潜めて何かを一瞬考える――いや、気のせいかもしれない。

先入観で判断してはいけない。


「………それで、マモノとやらを倒す手段をその令嬢がもっている、と?」

「異世界から召喚された聖女は、境界線を越えるときに魔物を消滅させることが出来る力を授かるという。その力を実際我が国で見せてくれた。我が国は魔物に対する対抗手段はある程度持っているから持ちこたえられるが、我が国の結界から出た魔物達が他の国へ入られては、我が国以外に対処する方法はないだろうから、私と私の部下何人かと、彼女を連れてこちらへ来たんだ。他に魔物が逃げた方向の国へもそれなりに対応できる者を派遣している」

「………」


ガイアス・マジュの説明に、ラファエルは組んでいた右手を顎に持って行き、考え込む。

………一々格好いいのは何だろう。

私を萌え死にさせたいのだろうか。

………って違うわ!!

他の女の前でそんな格好見せないでよ!!

ぁぁ…アイがポーっとしているじゃないか!!

顔を赤くしてラファエルを見つめている。

止めて!!

ラファエルが減る!!


『………主、そういう問題でもないのでは…』


………ぁ、精霊に呆れられたぞ…

ごめんなさい…


『それに王太子は減る物ではないかと』


いや、何かが減る気がするよ!!


「そのマモノとやら、特定の人物を襲うことはあるのか?」

「え……いや……そんな話は聞いたことがないが…」

「………」


ラファエルの眉間にシワが寄る。

なんかラファエルの背後から黒いものが見え……いやいや、気のせいだろう!!


「では何故今回、我が国の1人の令嬢が集中して襲われたのだろうな」


ラファエルの言葉にガタンとガイアス・マジュがソファーから立ち上がった。


「なっ!? もう被害が!? 申し訳ないっ!! し、しかし、令嬢1人に魔物が群がってきたのか!?」

「………」

「そんな……何故……」


真っ青な顔をして考え込むガイアス・マジュに、私はつっと眉を潜めてしまった。

それはラファエルも同じだったようで、余計に人相が形容しがたいぐらいに怖くなった。


「………申し訳ないが、お引き取りを」

「え……!? な、何故!? 我々は魔物を1匹残らず消滅させようとここまで来たのだ!! 対処法を持っていないこの国を放っておくことは――!!」


ギロリとラファエルに睨まれ、ガイアス・マジュが言葉を止めた。

ゆっくりと立ち上がったラファエルは、ガイアス・マジュを見下ろした。

彼の身長はラファエルより頭1つ分低かった。

ラファエルは精霊の力で魔物を滅せると報告を受けているから、助力は必要ないと判断したのだろう。


「………今回襲われたのは、私の一番大切な宝物である、私の婚約者だ」

「「っ!!」」


サッとガイアス・マジュと、何故かアイまで真っ青になった。


「その安否も気にしない貴方方に、協力頂こうとは到底思えないのでね」

「ぁ……!! も、申し訳ないっ!! それ――」


「ラファエルの婚約者って、ユーリア・カイヨウよね。何故そんなに怒るの? 政略結婚前提の婚約者が傷ついてもラファエルが怒ることないわよね。一番大切ってどういう……」


部屋の中の温度が下がった気がする。

………ぁ、これダメだわ。

最初からプレイヤーだと分かってしまった…


「ア、アイっ!!」


そして、王太子に対してタメ口呼び捨て。

はい、アウトー……

………この世界に来る転生者は迂闊なのばっかりなの…!?

そういう事は隠してよ!!

まともなヒロインを寄越せ!!

あ、いや……それはそれでラファエルに言い寄られたら困るけれども…


「………ユーリア・カイヨウ、だと……?」

「………ぇ……」


キョトンとラファエルを見るアイ。

………あれ……これはアレか?

天然……天然なの!?

事の重大さを分かってなさ過ぎなのはタチ悪いでしょ!!

ラファエルの周りがゆらりと揺れた。

………まずいっ!!

私はバッとベッドから飛び降りて、寝室、そして部屋から走り出た。

慌てた騎士達が追いかけてくる。

応接室まで距離があるのが頂けない!!

必死で足を動かし、息が絶え絶えになってきたときやっと応接室が見え、その扉は開け放たれており、護衛騎士と見覚えない格好の――多分ガイアス・マジュの仲間が青ざめて応接室の中を見ていた。

そして床が……凍ってる!?

応接室の中は、精霊の力だろう同じく床が凍っていた。

ラファエルがマジギレしているという事だろう。

周りを気遣えないほどに。

………え……コレどうするの……!?

遠慮なく精霊の力を発揮しているラファエルに、私は固まってしまったのだった。


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