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第552話 仲直り、からの




脱衣所で風精霊フウに髪を乾かしてもらい、ソフィーに髪を結ってもらう。

服を着せてもらって部屋に戻ったときには、全員手当も着替えも終えて待機していた。

私が一番最後のようだった。


「ぁ……ごめんなさい」

「謝らなくていいよソフィア。慌てなくていいから座って」


ラファエルは書類から目を離さず、したがって私を見ることなくそう言った。


「は、はい……」


壁際に立っていては話しにくいとの判断か、騎士達はラファエルの正面のソファーに座らされていた。

全員が居心地悪そうだ。

………っていうか、ラファエルの隣に座るしか選択肢がない…

お、怒ってるのに、私が隣に座って大丈夫なのかな…

ちょっと躊躇していると、ラファエルが書類から視線だけを私に向けてくる。

その視線にビクッとしてしまった。


「………早く」

「ぁ……は、い…」


感情のない声で言われ、恐る恐るソファーに近づいて座った。

真横に座る勇気はなかったので間を空けて。

するとグイッとラファエルに腰を引かれ、私はラファエルの片腕に抱かれる形で座り直された。

ち、近いっ!!

なんで!?


「………ソフィー」

「はい」

「本当にソフィアの身体に怪我はなかったのか」

「ありませんでした」

「そう」


………ぇ…

ラファエルは私の言葉を疑ってたの!?

思わずラファエルを見上げると、ホッとしたラファエルの横顔が見えた。

………ぁ……

心配かけたから、あんなに硬い表情と声だったんだ…

ごめんなさい…


「じゃあ、報告を聞こうか」


ラファエルが私の騎士達に視線を向けた。

………このまま話すの!?

話しにくいと思うから離してくれていいよ!?

………とは言える雰囲気ではないので、私は大人しくしていた。

騎士達が説明していくうちに、ラファエルの眉間のシワが深くなっていく。

魔物を1匹捕らえて帰還したことまで説明が終わった。

私が入る間はありませんでした。

チラッとアマリリスに視線を向けると、こちらも眉を潜めて私を見ていた。

アマリリスも気付いたのだろう。


「………ラファエル様、少し席を外しても――」

「ダメ」


なんで!!


「………何を知ってる?」


ピクッと私の頬が反応したのを、見逃してくれるラファエルではない。

ジッと見つめられる。

冷や汗が出てくる。

いや、だって…

ラファエルは私に前世の記憶があるのは知ってるけど、私は今までこの世界ゲームのことなど話してはいない。

未来に起こりえることを。

口にして、矯正力みたいなものが発生しても嫌だし、悪化しても嫌だ。


「アマリリス」


口を開かない私に焦れたのか、今度はアマリリスを標的にするラファエル。

さっき私がアマリリスに視線を向け、アイコンタクトしていたのに気付かれていたらしい。

ビクッと震えるアマリリスだけれども、それもダメだ。

何かを知っているって反応になっていると思われる。

ラファエルに睨まれて怯えた、って形に持って行かないと!


「ラファエル様、アマリリスが怯え――」

「いつまでソフィアは俺に敬語なんだ!!」


今度は私が震える番だった。


「ぁっ……」


しまった。

喧嘩した名残もあったし、なによりラファエルが怒ってるから、つい…


「俺がソフィアに怒られる原因今ある!?」

「な、ないですっ……ぁ…な、ない」

「だったらいい加減普通に話せ!」

「は、はいっ! じゃ、じゃないっ! わ、分かった…」


完全に怒らせてしまっている。

ラファエルの姿が歪む。

な、泣いちゃダメだよ私!

私が原因じゃない!


「っ……ぁ……ご、ごめんソフィア……怒鳴って…」


私の涙目のせいなのか、ラファエルが焦って慌てて私を抱きしめて背を擦ってくれる。


「だ、大丈夫……ごめんなさいラファエル……わたしのせい、だから謝らないで…」

「………もう、怒ってない?」

「さ、最初から怒ってない、から……あの時悪ノリしちゃって、ごめんなさい…」

「………本当に?」

「うん……私こそラファエル怒らせてしまって…」

「ううん。大丈夫」


私が落ち着くまでラファエルは抱きしめてくれ、私はホッと安堵の息を吐いた。

………っていうか、周りに従者いるんですが…

今更ながらに恥ずかしくなり、ラファエルの胸元から顔が上げられなくなってしまった…

どうしよう…

ぎゅうっとラファエルに抱きつく腕に力を込めれば、ラファエルは私の頭を撫でた。


「………さて、仲直りできたところで」


グイッとラファエルに顎を持ち上げられた。

至近距離で満面の笑みのラファエルと見つめ合うことになり……


「………洗いざらい吐こうかソフィア、アマリリス」


サァッと血の気が引いたのは、きっと私だけではなかったはずだ。

ラファエルの視線は私から離れなかったのに、背後でアマリリスが震えているような気がした。

顔はラファエルに顎を固定されていて動かせない。

助けて欲しいと思いながら騎士らが座っているソファーの方へ、視線を向ける。

………そこには誰もいなかった。

音もなく騎士達は安全地帯の壁際に、いつもの位置に待機していた。

………薄情者!!

助けなさいよ!!

思わず睨みつけるも、全員が視線を反らして、一切関係ない感を出している。

どうするのよこの状況!!

私は必死で頭をフル回転させながら、ラファエルの真っ黒な笑みに耐えていた。


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