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第55話 贈り物の回避をしましょう




「ソフィアに贈り物を持ってきたんだ」


熱で魘されていた私は、ライトにベッドに運ばれる前から今までの事を知らない。

ランニングしてて倒れて、気づけば一番始めに目に入ったのは、私をニッコリ笑って見下ろすラファエル。

そして言われた言葉が冒頭の言葉。

起き抜けに何…? と思ったけれど、ラファエルの手に持っていた物を見て真っ青になってしまった。


「首輪とかリール。お転婆王女には必要だと思って」


………成る程。

私が寝ていた時間は、長かったようだ。

ラファエルのいない時間を使って体力作りをしたのに。

ラファエルが仕事を終え、更に首輪などを用意出来る時間を余裕で与えるほどに寝ていたらしい。

そして、私もラファエルの影に見張られていたということ。

ライトとカゲロウが私のことをラファエルに話すわけないから。

何故ラファエルに影を付けられていないと思っていたのだろうか。

前に言っていたのに。

女性の影を付けると。

ライトもカゲロウも知ってて私に教えなかったな…


「………街におりてはないよ」

「知ってるよ。何故急に走ってたの? そんな事、令嬢が、ましてや王女がしていいことじゃないでしょ」


………影は私の言葉は伝えてないようだった。


「そんな事するから倒れるんでしょ。5日も寝たきりで。心臓が止まるかと思った」

「………い、つか……?」


そんなに私は寝ていたの?

………ぁ~、これはマズい。

本当に鎖で繋がれる。


「そうだよ。もう熱は下がってるね」


ラファエルが額を合わせてくる。


「おかげで王太子の休暇は伸びましたが」


ルイスもいたんだ……


「ソフィア様、余り勝手をされると困ります。見張りの騎士が王太子に監督不行き届きで処分されようとしてました。止めるのに骨が折れましたよ」

「え!? 騎士は関係ないでしょ!? 窓から出たんだし!!」

「ソフィア様の気配がないのに気づかなかった騎士は見張り役失格と言って」

「気配って読めなきゃ騎士じゃないわけ!?」

「俺はソフィアの気配に敏感だよ?」

「「ラファエル(王太子)基準にしちゃダメだよ(です)!」」


得意げな顔して言わないでくれる!?


「とにかく、処分はしないでよ! 私は体力付けるために運動しようとしただけだし、これからは倒れないようにするから!」

「体力? 令嬢以上にはあるでしょ」

「ラファエルに追いつけない私が情けな――ぁ」


勢い余って言ってしまった。

バッと口を手で押さえたけど、もう遅い。

ハッとしたラファエルにガン見される。

そして申し訳なさそうな顔――いや、あの顔は悔しそうな顔だ…


「………あの時、可愛いソフィアを見逃した……」


………もういい加減忘れてくれないかな!!

ってか、諦めて記憶抹消してくれないかな!?


「と、とにかく! 私は体力付けて、ラファエルと一緒に歩きたいの!!」


言ってしまったのは仕方ない。

それに私のことを話すと約束もした。

隠しているままでは、ラファエルとの距離も縮められないし、恥ずかしがってもいられないし。

本当は、ちゃんと体力付いてから話したかったけど。

こうなった以上は堂々と許可をもぎ取らなければ!


「ソフィア……なんて可愛いんだ!!」


ラファエルに抱きしめられる。

ルイスの前で止めてくれる!?


「だ、だから、ちゃんと気をつけるから、走るの続けて良いでしょ?」

「………」


あ、無言に……

や、やっぱりバレたからダメ…?


「なら、俺が素振りしている時間に一緒にする? それならいいよ」

「………ぇ…」

「そしたら俺もソフィアといられるし、何かあったらすぐ対応できるでしょ」


ラファエルの言葉が信じられなかった。


「い、いいの!?」


半ば諦めていた。

なのにあのラファエルが許可を出したのだ。

条件付きだけど、そんなものあってないものだった。

むしろ堂々と運動できる!


「いいよ。ただし、また倒れたら禁止するよ」

「分かった」


ここは素直に頷いておこう。

体力作りできないことの方が嫌だ。


「それにしても、ソフィアは俺に内緒で何かをすることが、当たり前にならないようにしてよね」

「え…」

「話してくれたらちゃんと考えるし。ソフィアは俺やランドルフ国に色々してくれている。感謝しかない。だからソフィアの望むことは極力叶えてあげたい。………だけど唯一、俺がソフィアにして欲しくないことがある。それは隠されて無理して倒れられて、ソフィアがいなくなること」

「………ぁ」


ラファエルが私を離し、置いていた拘束具を手に取った。


「言っておくよ。ソフィアに何かあれば俺は何をするか分からない。だから、ちゃんと言って欲しい」

「分かった」


守らなければ、今度こそその手の物を私ははめられてしまうだろう。


「うん。分かれば良いよ」


ラファエルはルイスに拘束具を回収させ、出て行かせた。


「ソフィアが着てる服、不思議だね」

「え……」


私は自分を見下ろすと、ジャージもどきが目に入った。

着替えさせられてないんだ。


「あ、作ったの。動きやすいように」

「いいね。俺のも作ってよ」

「え……」


言ってはなんだけど、ラファエルには絶対に似合わないと思う!

ジャージなんて庶民が着てこそだ!

普通の顔の人間のみが着て、何とも思われない物!

美形が着たら非難殺到だよ!!

私にそれをさせないで!!


「ら、ラファエルは、いつもの服が一番だよ! こんなの着たらダメだよ!」

「じゃあソフィアもダメでしょ。王女なんだから“こんなの”って言う服は着たらダメ」

「ドレスで走れるわけないでしょ!!」


そんなやり取りをしながら、結局ラファエルのジャージ作っておねだりは回避できました。

良かった…

というわけで、私は翌日からラファエルと共に体力作りを開始したのだった。


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