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第547話 これでは逆に ―R side―




コンコンと机を指で叩きながら目の前の書類に視線を向ける。


「………」


………ダメだ。

目の前の書類――仕事に集中できない。

放り出すことも出来ないし、休憩でもするか……

さっきからルイスの視線も煩いし。

席を立つとルイスが口を開く。


「ラファエル様、本日はどうされたのですか。イラついているように見えますし、仕事も捗っていません」

「悪い。茶にする。その後で集中し直すから」


素直に謝って茶葉が置いてある棚へと足を向ける。

前に毒を盛られてから、侍女に持ってこさせることを止め、自分で煎れるようにした。

幸い湯はユーグに水を出してもらって、レッドに暖めてもらうことで手に入れている。

精霊様々だな。


「信用できませんね。朝から何時間……何度そう言って繰り返していると思っておいでですか」

「計5回だな」

「………分かっているのなら、訳を話してください。原因が分からなければ対処も出来ないでしょう」

「………大したことないよ」

「大したことあるのですから仕事に支障が出ているのですよ」


ルイスの言葉は尤もで、俺は苦笑する。

煎れた茶を飲みながら、なんて言おうか迷う。

けれど、遠回しに言ってもルイスは納得しないだろうし…

直球でいくしかないか…


「………ちょっとソフィアが調子乗ってたから無視している最中」

「………は?」


ルイスの目が点になった。

間抜け面のルイスは貴重だ。


「だって酷くない? 俺、無理せず定時でソフィアの所に帰ってるし、休憩中は必ずソフィアの所に行くようにって前のように戻ったのに、ソフィアが敬語で話すし、無理したらサンチェス国に乗り込むって言って、そのまま帰ってこないって言わないでよって言ったら笑って誤魔化して」

「………」

「俺が間違っていたら、ソフィアが怒るのは分かるよ。それは当然だし。でも、俺ちゃんとソフィアの言うことを聞いてその通りにしてるじゃん! 俺が責められる謂われある!?」


俺が説明して同意を求めれば、ルイスが書類に向かっていた。

………って、おい!!


「聞けよ!?」

「………ただの痴話喧嘩だったって分かりましたので。どうでもいいことでした」

「どうでもよくねぇよ!!」


聞き出したのはお前だろ!!

ちゃんと言ったじゃないか!!


「ご自分でソフィア様を無視されると決められたのでしょう」

「うっ……」

「自分で決めたことですのに仕事に身が入らないとは完全にご自分の責任でしょう」

「そ、それは…」


そう、なんだけれども…

でも…


「甘えてないでさっさと仕事を片付けなさい」

「で、でも…な…?」


ソフィアが扉を叩く音が、涙声で謝る声が、耳から、頭から離れないんだ。

共に寝ないと言った以上、扉を開くわけにはいかなかった。

その後は当然眠れなかった。

ソフィアを泣かせてしまったし…

………でも、俺も傷ついたし…ちょっとぐらい意地悪しても…


「無視されているということは、本日もソフィア様に会われないんでしょう?」


ルイスに言われ、ハッとする。

昨日の今日で、何もなかったようにソフィアと会うのは、無理だろうな…


「いや……まぁ……」


やっぱり、今日も1人で寝るしかないよな…

ソフィア、怒ってそうだ。

今日の朝食も一緒に取らなかったし…

昼休憩も行かなかったし。

昨日のことは確かにイラついたけれど、どっちかっていうとソフィアにああいう態度を当然にさせてしまったことや、ああいう言葉を言わせてしまった自分にイラついて……

いや、まぁ……ソフィアに対してもちょっと怒ってたんだけど、ね…

俺を信用してくれてないってことだし…

信用を無くしたのは俺だけれども。

………ぁ……

会いに行かなきゃ無理してるって思われて、ソフィアが帰ってしまうかも!?

それは嫌だ!!

今から――


「なら定時で帰られなくて大丈夫ですよね? 今日の分の仕事は全て終わらせてもらいますよ」

「え……」

「まさかサボった分を私にやらせるとでも? 嫌ですよ。貴方の仕事でしょう」


どさぁっ! と机の上にいつもなら今頃終わらせていただろう書類が積み上げられた。

その量にヒクッと頬が引きつる。


「いや、あの……ルイス……? 俺、ちょっとソフィアの所に……」

「喧嘩中でラファエル様がソフィア様を無視されているのでしょう? 反省させている最中ならば時間はいるでしょう。大丈夫ですよ。喧嘩で死にはしません」

「俺の心が死ぬわ!! ソフィアに嫌われたら俺は死ぬよ!!」

「ご自分でされたことでしょう。自業自得です」

「うぐっ…!!」


ああもぉ!

ソフィアを遠ざけるんじゃなかった!!

ソフィアへのお仕置きどころか、俺へのお仕置きになってないか!?


「とにかく終わるまで執務室から出しませんよ」


容赦ないルイスに、俺は慌てて席に着いた。

と、とにかく早く終わらせてソフィアの所に行かないと!!


「………結局貴方の方が折れるんですか…将来尻に敷かれ……今もでしょうか……」


ルイスが何か言っていたが、俺は急いで終わらすために書類に集中した。


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