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第545話 どうしようもない人




ガキィーンという音と共に、剣が空に舞う。

グサッと地面に突き刺さり、剣を飛ばしてしまった男の首筋に剣先が突きつけられた。


「ぜーはーぜーはー……こ、これで、また、おれ、げほごほっ! おれ、はっ! ソ、フィア、さっま、の、きし、だ!」


………あ~うん……そうだねぇ……

今にも気絶しそうになっているアルバートの言葉に、私は呆れた。

五分五分だったでしょうに…

危うかったのに、高らかに宣言しようとして、咳き込んでいる格好悪さがなければ、素直に褒められたのに…

隊長2人相手に良く戦ったと言いたいけれど…


「あはは~」


ジェラルドはとっくに終わって、余裕で見学モードになっている。

………この差…


「………ねぇ」

「はい」

「………ジェラルドって、アルバートより強いの?」


顎を両手で支えながら、半目で眺めながら、私は後ろに待機しているオーフェスとヒューバートに聞く。


「強いですよ」

「知りませんでした? サンチェス国でも私、ジェラルド、アルバートの順でしたよ」

「へぇ」


それは意外だ。

なにが、って体格的にジェラルドの腕力とか弱いと思っていたから。

けれどジェラルドは逆に体格差を利用、相手の勢いを利用して反撃するのがスタイルのようだ。

私もまだまだだね。


「………一応これで今回の試合はジェラルドとアルバートの勝利で、私の専属は変わらないって事ね」

「見習いを鍛え直すつもりが、いつもの試合になりましたね」


良かったのか悪かったのか。

見習い達は隊長達の戦いを見て、キラキラした目をする者もいれば、怯えきっている者もいる。

士気を高める目的だったのだろうけれど、逆効果にならないように祈るだけだ。

彼ら並みの力を持った賊もいるだろうから、足がすくんで動けないようではダメだ。

アルバートとジェラルドが私に合流した後、騎士達は訓練に戻っていく。

戸惑っていたようだけれど、きちんと訓練をこなしていく彼らに、私は1つ頷いた。

色々思うところはあるだろうけれど、逃げ出さないだけ上出来。

訓練場に再び揃ったかけ声が響いていく。


「ジェラルド、お疲れ様」

「楽しかった~」

「ソフィア様俺は!?」

「あ、うん。お疲れ」

「雑!!」


ごめん。

つい…


「情けないわねアルバート。息を切らせて今にも事切れそうになってて」

「うっ!?」

「アルバートが誰かと交代する日も近いのかしら?」

「ちょっ!?」


クスクス笑うと、アルバート以外のみんなも笑う。

それにますます焦るアルバートが、訓練場に再び降りていった。

………って、え……?


「おいブレイク!! もう1回だぁ!」

「はぁ!?」

「今度こそぶっちぎり、余裕で勝ってやる!!」

「待てって! さっきまで全力でやってたんだぞ! ちょっとは休ませろよ!!」


ブレイク……確か第一騎士隊の隊長……だったわよね?

最後までアルバートと戦っていた男にアルバートが斬り込んでいった。

………って、あのバカ!!


「アルバート!!」


私はブレイク隊長の剣とアルバートの剣が交わる前に、またアルバートに対して怒鳴った。

ピタッと機械みたいに固まったアルバート。

私の怒気を感じたのか、ギギギッとまるでサビ付いた機械みたいに首をぎこちなく私の方へ向けた。

そしてまたみんなの訓練の手を止めさせてしまった。

申し訳ない…


「何を考えているんです!! 隊長達にはラファエル様より見習い候補達の訓練を任されているんですよ! これ以上の邪魔立ては許しませんことよ!!」

「で、ですが、ソフィア様っ! 俺っ!」

「今日の試合は終わったのですから、また次の手合わせに持ち越しなさい!」

「っ………は、い……」


剣を下げ、すごすごと足取り重く戻ってくるアルバートに、私はため息をついた。

ブレイク隊長に礼をされ、私は1つ頷いて、オーフェスにアルバートを連れてくるように伝えその場を去った。

今度はヒューバートとジェラルドが私を守るように歩く。

………まったく……アルバートはジェラルドのように子供になるのをなんとかしないと……

帰りながらも私はため息をついたのだった。


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