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第542話 解決策




騎士隊長達に話を聞き、私は王宮へと帰ってきた。

疲れた…とソファーに座るとすぐにお茶が出てくる。

………なんて贅沢な…


「ラファエルが戻ってくるまで――あと30分って所ね。夕飯時に話せるかな」


もういい時間になっていた。

ラファエルが帰ってきてすぐに夕食を取っているから、その時でいいだろう。

食後だと私の睡魔との戦いになってしまう。

訓練場との往復は勿論、隊長達の話を聞いて凄く疲れてしまった。

お腹がいっぱいになったら休息を取れと身体がいうだろうから。


「やはり、問題は深刻ですか?」

「ええ。やり方変えないと…」


ソフィーの声かけに、私は頷いた。


「このままでは計画が台無しよ。時間がかかっていい事じゃないからね。民の安全のために、一刻も早く見習いを街へ派遣しなきゃ…」


現状のままではダメ。

けれど私の頭ではいい案が中々浮かばない。

だって騎士の訓練なんて管轄外だもの…


「――――?」


平民がキツい訓練に耐えられないのなら、訓練を軽くする。

普通に考えればこれよね…?

けれど訓練を軽くして、ハードル下げて、果たして本当に騎士見習いの肩書きを持たせ、街に放てるのだろうか?

訓練についていけないと逃げ出す、ということは窮地に立った時、役目を放り出し、民を見捨てて逃げないだろうか…


「――――」


王宮騎士で巡回騎士として派遣する、その騎士らが行う行為は、派遣した者――ラファエルの代理行動、評価に関わってしまう。

部下の失態は上司の責任。

ドラマとかで学んだ知識が、余計に私の思考を止める。

ラファエルがいい加減な者を派遣した、なんて言われたくないし…


「………」


やっぱり私の頭では無理だ。

早く帰ってきてくれないかなラファエル…


「もぉ……こんな時ぐらい早く帰ってきてくれたらいいのに…」


膝に肘を乗せて頬杖をつく。

そしてため息を1つ。


「………誰を待ってるの?」

「そりゃ勿論ラファエルだよ。話したいことがある日に限って遅いんだよね」

「ごめんね」

「仕事だから仕方ないけれど……問題が上がってるって知らないんだから仕方ないんだけどね…」

「そうだね。聞いてたらもっと早く戻って来れたよ。何故一報くれなかったの?」

「だってラファエル私のせいで忙しいし…」

「気を使ってくれてありがとう。でも、ソフィアが遠慮しなくていいんだよ。俺の心配は嬉しいけど、俺はソフィアの事なら何でも優先的に聞きたいんだから」

「でも…それも悪いし……って言っても私の管轄じゃないんだし、いい案出ないし…私のない頭で何をしろっていうのよ…」


グッタリしながら視線を上げると、待ち望んでいたラファエルの姿が…

………姿、が……?

………っていうか、私今ラファエルと無意識に話してた…?


「あ、あれ……ラファエルいつの間に…」


私はポカンとした状態のまま、ポツリと呟いた。


「ソフィアが考え込む前にもう部屋の扉開けてたんだけど、ソフィアが気付いてなくて、ソフィアはそのまま考え込んだ」

「………え……」

「何回か呼んだんだけど、戻ってこないようだったから様子見してた」

「肩揺らすとかして気付かせようよ!? なんでこんな時だけ遠慮するの!?」


思わず机を叩いて立ち上がり、怒鳴ってしまった。

私のない頭で考え込むより、早くラファエルに話せてたら私は楽になったのに!!


「ごめん。ソフィアの悩む顔が可愛くてつい」


ニッコリ笑ってそう言われ、私は恥ずかしくてカァッと顔が赤くなるのが分かった。

悩む顔が可愛いって、どういう事!?

やっぱりラファエル変!!

美的センス!!


「ソフィアの思考が戻る前に大体ヒューバートから話は聞いて、纏めてくれた資料も見てたんだ」


………それで私とも会話…

ラファエル凄いな…


「騎士の訓練内容は見習い用に緩くしてある」

「………え?」

「訓練内容の一覧表を俺は見せてもらってたからね。緩すぎて現在の騎士達の実力が落ちないか心配してたけど、この短期間で見習いが音を上げた。これ以上は緩く出来ないしね」


そ、そうなんだ…

私から見て厳しいと思った訓練内容は、現在の騎士らには物足りないものなんだ…

チラッと私の騎士達を見る。

あれ以上の訓練をしている、そんな騎士達相手に週1でトップを取り続けるのは、並大抵の訓練では無理だろう。

………一体、私の騎士で有り続けるために、どんな過酷な訓練をしているのか…

それでも止めてくれと言えない私。

彼らにいなくなって欲しくないから。


「………ま、領地に戻ってないということは、止める気は今のところ半々ってところか……」


ラファエルが顎に手を付ける。

………考え込む姿もイケメンだからなぁ…

私は心臓を落ち着かせるために、視線を反らした。


「………ねぇソフィアの騎士達」

「「「「はい」」」」

「褒美を出せば――訓練を毎日、完遂した者だけに高級肉が出たら、サボってる奴ら食いつくと思う?」

「即、食いつく!!」


………アルバートが食いついてどうするの…


「確かに訓練ではある意味空腹との戦いですからね」

「ですから騎士は大食いが多いです。――アルバートは食べ過ぎですが」

「う、うっせえな!!」


そんな騎士らの言葉に1つ頷くラファエル。


「さすがに現役騎士に褒美を出すわけにはいかないけれど、平民の騎士見習い候補達に、普通に生活しているだけでは食べられない食事を出せば、食いつくだろうね」

「………ぁぁ、成る程」

「じゃ、その方向でやるということで。ありがとうソフィア。俺の代わりに訓練場に行ってくれて。お疲れ様。ご飯食べようか?」

「あ、うん!」


安心したらお腹が減った。

お腹の虫が鳴らないように願いながら、アマリリスの配膳を待ったのだった。


 

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