第54話 新たな日課
私が足首を捻挫して歩けなくなってから6日。
無事に完治しました!
………え?
完治するのが遅いだろうって?
ルイスと医者とグルで、ラファエルに休みを取らせるために仮病(?)使いました!
その間の行動予定と言えば、
07時・朝食
08時・お茶
09時・ラファエルの素振り見学
10時・読書
12時・昼食
13時・読書
15時・お茶
16時・読書
18時・夕飯
19時・部屋でくつろぎ、たまに刺繍
21時・就寝
これの繰り返しだった。
この国でこんなに令嬢みたいな生活をするとは思わなかった。
のんびりすぎるよね……
平和というかなんというか……
………って、これが普通だ!!
思って気づいた!!
まぁ、ずっとこれでは私には退屈な人生になっちゃうから、普通は要らないけど。
たまには良いよね。
ということでこの6日間、好きな本に埋もれて生活してました。
絶対読みたい本は全て読破した!!
速読は得意なのです!
王女だから!
いっぱい勉強したり資料読んだりしないといけなかったからね!
読み物に時間かけてられないから、私以外の王族も出来るだろうけどね。
「………姫、ドヤ顔はやめた方が宜しいかと」
「………私はライトの口から“ドヤ顔”って言葉が出てきたことに驚きだよ」
あれか。
また私が過去に無意識に言ってたんだろうな……
………まぁいいか。
「んじゃ気を取り直して、やるわよー!」
「………はぁ」
「はい、ため息付かない!!」
「私は反対しました。この国にいる間は普通の――ふっっっっつうの姫になってくれると信じておりましたのに!!」
………そんなに溜めなくても……
そして力強く言わなくても……
「何言ってるの。サンチェス国ならそれこそこんな事出来ないでしょ。お父様とお母様、ついでに兵士達の目を掻い潜らないといけないし。私の王女としてのイメージ壊れる」
「サンチェス国でお転婆で、ランドルフ国でもお転婆以上になってどうするんですか」
「お転婆以上って何よ!?」
それ以上ってあるの!?
「大体、こっちで既に姫のイメージ壊しましたよね。侍女と騎士に本性晒して。王女の仮面何処に行ったんですか。ランドルフ国なら良いという根拠を知りたいんですが」
「ぐっ……」
どっちもいけないということは分かっている。
私は王女として上に立たなければならないのだから。
………でも!!
本の前では優先順位がイメージより本なのだ!!
大丈夫!
あの時の者達には口止めしたし。
………って、その話はまぁ良いわ…
私は刺繍糸で自作したミサンガもどきで後ろ髪を結い上げた。
ポニーテールってこの世界で初めてしたなぁ。
そして今の私の服装は、同じく自作のジャージもどき。
「さ、しゅっぱーつ!」
ライトの言葉に返答せずにさっさと行きましょう!!
墓穴ばっかり掘ってしまうから!!
「………はぁ。この手の事は私ではなくカゲロウにして頂きたいんですが」
「だってカゲロウがライトばっかりズルいって言って、今日のラファエルの様子見はカゲロウがするって言ったじゃない」
サンチェス国にいた時、カゲロウにテイラー国に行ってもらって情報収集して貰ったけれど、ラファエル自身が説明してくれた事以外の情報は特に得られなかった。
だから豪華な食事ではなく、通常の食事になってしまったのだ。
こういう事は特別に出してしまうと、今後同じようになった時にまた優遇しないといけなくなる。
仕事は仕事できちんと報酬は段階的に、それに見合っていなければならないのだ。
心情的には豪華にしてあげたかったけど、既に得ている情報しか報告されなかったからね……
だから、ラファエルの行動報告で新たな事が分かったら普段より豪華になるから、カゲロウがライトに代われと言ってきたのだ。
「………」
「はい、仏頂面はダメ。いつもの顔に戻して~」
「………いつもの顔です」
「あ、そっか」
ライトはいつも無表情。
私に文句を言っている間だけ表情が変わるんだった。
それもどうかと思うけど。
「よし。準備運動終了! レッツゴー!」
「………はぁ」
いつかライトは幸せがなくなるんじゃないだろうか。
原因は私だろうけどね~。
私は笑いながら走り出した。
そう、私は体力を付けるために走り込みをすることにした。
今日が初日。
短い距離から始めるつもりだ。
あんまり長い距離を設定すると、私が戻ってこられなくなるし。
確実にね。
引きこもりが急に運動始めてもすぐバテるでしょ。
ラファエルが仕事で私の部屋に来ない時間を使って体力作り開始です!
あ、ちなみに私の部屋から王宮の庭に窓から出ました~。
見つかったら確実にラファエルに怒られるコースです。
でも、堂々と王宮から出られるはずもなし。
入り口には騎士が立ってるし。
余り人が来ない場所を探ってもらってたから、その場所でランニングすることにしたのだ。
………またラファエルに追いつけなくて、置いて行かれるのは嫌だし……
べ、別に追いつかなくてラファエルの隣に行けないから寂しいとか、追いつけなかったから軟弱な王女はいらないと言われるかもって不安とかじゃないからね!
ラファエルがそんな事思わないことぐらい、もう分かってるもん!
私が不甲斐ないと思ったからだし!
また捻挫するなんて嫌だし!!
「………」
「………言いたいことがあるなら言いなさい」
「ですから姫。思っていることは口に出さないように」
「………何処から?」
「“またラファエルに”――」
「うわー! 言わなくて良い!!」
「………どっちなんですか」
一番恥ずかしいところ口に出してた!?
違う!!
違うから!!
「寂しいとか不安とかじゃないから!!」
「………説得力ありません」
「………ライトがいじめる!!」
私とライトは言い合いながら走っていた。
だから気づかなかった。
「………ぜー……ぜー……」
「………姫……」
言い合いながら走っていたせいで、始めたばかりの走り込みが許容範囲を大きく超えていたことを。
そのせいで私は全身筋肉痛の上、熱を出して体力を付けるどころか、逆に数日寝込んでしまったのだった……




